海に ありがとう
このあいだまで
あんなに にぎやかだったのに
今は もう 誰も いない
砂浜に 足跡いっぱいで
楽しかったなあ
それなのに
もらいたくない 忘れ物だらけ
ペットボトル
花火の燃えカス
空き缶……
ゴミ ゴミ ゴミ
あ、
誰か 来た
おかあさんと子どもみたい
「さ、海にお礼しよっか。
夏休みのあいだ、たくさん遊ばせてもらったもんね」
「うん。きれいになってもらうよ」
そう言うと、ふたりは
ペットボトルや砂浜に見え隠れしている
アイスやお菓子の袋を拾い始めた。
「大きな袋にいっぱいになったね」
「こんなにあるとは思わなかったよ」
「来てよかったね」
「海、ありがとうね。
また来るから、元気でいてねー」
ザブーン サラサラサラサラサラ
「ママ、今、波がパチパチ拍手してくれたよ」
「きっと、きれいにしてもらって、
うれしかったんだろうね」
「ママ、ぼく、おにいちゃんに、海の歌を教えてもらったんだよ」
「ふーん。どんなの?歌ってみて」
うみはひろいな おおきいな
つきはのぼるし ひがしずむ
「ママ、見て!
海が キラキラ光ってる」
いつでも 待ってるよー
また おいで
きょうは ほんとうに ありがとう
( 『うみ』作詞 林柳波 作曲 井上武士 )