行く年や百の礫を重ねたり
今年11月、俳句幼稚園が一周年を迎え、~弐~へと引き継がれた。
昨年秋から俳句をはじめた私は、先生方や園児のお仲間に導かれて、冬、春、夏、秋と季節を追いかけ、当初の目標であった四季一巡をどうにか達成することができた。
一覧にして振り返ると、その時々の出来事や想いが甦って、図らずも当時の日記とも、記録ともなり得ている。
今年一年は本当にいろいろなことがあって、私は幾度も負けてしまいそうになった。
けれどもその度に、noteや俳句幼稚園の皆さんの温かい心に触れ、俳句を詠むことによっても救われてきた。
私は相変わらず、同じところで躓いたり、悩んだりしているけれど、それでも確実に、去年よりは強く、逞しくなれたように思う。
二巡目の四季は、もうすでにはじまっている。
もう一度、歩きはじめた私は、助走をつけて、今度は大きくジャンプしてみようか、と密かに考えている。うさぎ年なだけに。……すみません💦
お世話になった皆様に、心から感謝いたします。
どうぞこれからも、仲良くしてやってください。
今年一年の締めくくりとして、夏以降の句を並べてみました。
よろしければ、ご笑覧ください。
(皆様の推敲案を取り入れ初出より変わっている句もあります。中には推敲案をそのまま、いただいた句もあります。ありがとうございました)
寝転びてアインシュタイン夏に入る
『文鳥』の千代々々鳴いて愛鳥日
薔薇一輪真白き部屋の座標軸
小満や快気祝いの円き菓子
故郷の袋小路の夏暖簾
夏暖簾一枚板のカウンター
夏暖簾白身魚と大吟醸
校庭へ選手一礼夏の果
校門の錆の匂ひや梅雨に入る
入梅の体温低き寝覚めかな
薄玻璃に滴る音や蝸牛
遺さるる貴石ひと粒苔の花
桜桃忌鏡に嗤ふ道化あり
帰りたき故郷いずこ不如帰
香水を替へて土曜の午後三時
改札を祭囃子と潮の風
路地裏の手相占い晩夏光
焼け跡に蟷螂生まる関ケ原
八階は緩和病棟夏至の空
炎昼の毘沙門天と嗤ふ邪鬼
短冊に平癒は書かず沙羅の花
蝉時雨ずっとあなたが好きだった
夏の海浮きて真昼の天動説
たちまちに墓石渇く暑さかな
暑き日の罅より乾くアスファルト
初浴衣パールピアスに潮の風
負けられぬ今宵のための藍浴衣
炎天やジェット機仰ぐだけの丘
鬱抜けて今朝の紫初茄子
とりあえず畳寝転ぶ帰省かな
帰省子の愚痴を地酒と潮の風
空蝉や吹かれ虚空を掴みをり
空蝉や荷棄つる棄つる青き空
空蝉や命育む日々ありき
夕立に打たれ撃たれて討たれけり
片蔭に影呑まれたる白昼夢
星柄のジェラピケ柔き今朝の秋
迷いなく入るる鋏や秋立ちぬ
息吸つて吸つて吸いたし原爆忌
終戦日逃ぐる陰なき正午なり
マネキンの目鼻髪なし終戦日
勝ちあらば負ける者あり終戦日
クレーンで窓からピアノ螽斯
娘妻母を生きたり秋日和
秋晴やオープンカフェのオムライス
故郷の信用金庫すて団扇
酔芙蓉SEKAI NO OWARI聴く夕べ
急坂をひとりゆっくり芙蓉咲く
一握の希望のごとし桃香る
白桃や一筆箋の楷書なり
秋日傘ジョン・レノン口ずさみつつ
秋日傘「天城越え」口ずさみつつ
ドラえもん生まれるらしい秋日和
エリザベス女王帰天や月今宵
サイレンの後をサイレン曼珠沙華
過ちは過ちなりき曼珠沙華
ザマミロと芒ふりふり帰り道
鬼門とは知らず芒の左向き
仰臥して見ゆるものあり子規忌かな
子規の忌や線状降水帯の夜
玻璃窓の曇り残さず子規忌かな
遠花火果てて街並みなほ暗し
朝露の置きたるままに無縁墓
木犀の小道を半歩遅れつつ
爽やかにシャツ膨らみし背中かな
身に入むや猫足早やに裏通り
「閉店」の褪せて身に沁む夕間暮
ホチキスの勝てぬ厚さや鰯雲
鰯雲あれから三日猫は来ず
身の丈を越ゆる哀しみ秋の波
秋深し慰霊碑浄めらるる朝
枝豆を鉢いっぱいに武勇伝
負へぬ荷は負はず湖上の月明り
運ばるる棺の軽き秋の暮
昭和歌謡思いつくまま草の花
セルフレジ二百円なり草の花
懐中に金貨一枚星月夜
天高し遠近法の並木道
夢二忌や小夜花街の石畳
不揃いの歯形刻みし林檎かな
流星や優しくたつて嘘は嘘
晋山の錦の袈裟や今朝の冬
熱々の湯豆腐供ふ忌日かな
一茶の忌吟ずるAI一茶くん
書き出しはとうに決めてた冬銀河
寒星や記紀に詳しき老医かな
生真面目に高座の小さん漱石忌
すぐ発つと言うしかなくて冬北斗
短日やトンネルごとに更ける空
積み木積むように近寄る冬温し
鶴舞ふや訪うことのなき果の町
海鼠食む問ひたきことを問はぬまま
納骨の読経短し冬の空
ノーアイロンシャツ息白き朝の駅
ホットドリンクス人通りなき午前二時
頬杖の教室十二月八日
モッツァレラチーズとロゼの霜夜かな
紅葉散る寺に前足あぐる猫
夜咄や順に壊れてゆく家電
街頭に食洗機冱つ収集日
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。もしも気に入っていただけたなら、お気軽に「スキ」してくださると嬉しいです。ものすごく元気が出ます。