思い出の喫茶店

発掘してしまった。

次の日訪れる場所を確認しつつ
いつものように 
その付近の喫茶店探しをしていたとき
昔 一度訪れたことのある喫茶店に気づき
埋もれていた思い出を発掘してしまった。

ちょっと。
いや、かなり。
切ない気持ちになりそうな気配が襲ってきて
わたしは身構える。

一生懸命に 他の喫茶店やカフェを調べた。

その思い出に纏わる いろんなことを
穏やかに遠くから眺められるには まだ早い気がして。

その界隈には 地図にカフェマークが山ほどあって
あまりにも多いので 調べ疲れて
通りがかりに惹かれたところに入ろうと決めた。

✴︎

結局
今
わたしは思い出の喫茶店にいる。


本当に お洒落なカフェが いっぱいあった。
ふらりふらりと覗いたけれど。
心は どうしたって 決まっているのだ。
今どきのコーヒーは 新鮮だろうし 楽しいけど
わたしの好みとは違うだろうし
こんなに好みに ぴったりだとわかっている
素敵な喫茶店を避けるなんて
もったいないと思ったんだ。

丁寧な接客。
当店は初めてですか？と聞かれる。
いえ、ずいぶんと前に…
メニューが変わっているかもと説明してくれる。

そうだ。
おそらく もう 10年…前だ。

遠いなぁ。

深煎りのグァテマラ
ネルドリップで頼んだ珈琲が
チーズケーキと共に
時間をかけて やってくる。

思い出を 脇に追いやって
しらんぷりして 読書を楽しんでもよかったんだけど
こうして noteを書きながら
しっかり しっかり 見つめてみる。

漠然と恐れないで。


一番 嬉しかった、そのとき。
そう。昔のこと。
いい思い出だ。


涙が じわりと湧いてきても 流しはしない。
それを包んでくれるような
ひとり 潜んでいられる席だった。

珈琲を おかわりする。
今度はペーパードリップで中煎りのエチオピア
好み まっしぐらではない味も
しっかりとした お店では楽しめる。

そんな贅沢が 今の わたしの喜び。
小さいかもしれないけど 確実にある 幸せ。

心は 落ち着いている。
音楽が身体に染みてくるのは こんな時。



やっぱり１杯目のほうが好みの味ね。

壁の天使が 微笑んでいた。