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短編小説のようなものたち

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#短編小説

雨の日は おやすみ。

夢の中に かすかに 雨音が 混じりだした。 ぱら ぱら ぱら ぱらぱら ぱら ぱらぱらぱらぱ…

静香のこと  〈消極的な死への願望〉

庭の手入れは あえて していない。 初めてこの家を見たとき 長年放ったらかしだった庭に 自由…

静香のこと 〈しあわせな暮らし〉

結婚するまで 料理なんて ろくにすることもなかった。 正確に言えば 自分で食べるためだけに …

小麦の香りに包まれて。

繭子は パンが好きだ。 大学に入学して すぐに 大学のそばの小さなパン屋さんで アルバイト…

静香のこと 〈結婚を決めたとき〉

夫は焼き魚を食べるのがうまい。 うまいというよりも もう芸術といえるような箸さばきで 静か…

突然 雨が降ってきた。 予想していた雨だったので わたしは 傘を持っていた。 小さな若草色…

ハコオンナ

わたしの仕事場は とある小さな駅の売店である。 ひとりに ぴったりの小さな箱は 慣れると非常に居心地が良い。 一番効率的な美しい商品の並べ方を考え 内部も自分が過ごしやすいように 試行錯誤しながらカスタマイズしてゆく。 わたしは この箱に守られながら 毎日毎日 小さなものを売って過ごしている。 仕事が終わると ひとまわり大きいとはいえ やはり小さな箱のような家へと帰る。 大きな空間は必要ないのだ。 寝心地のいいベッド。 寛げるバスルーム。 これさえあればいい。 ぴったりと自