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匙投げ小説執筆法 16.地名のつけ方(世界篇)

 地名のつけ方・第2弾。前回の日本篇が好評だったので、今回は世界篇。世界で用いられる地名の接尾辞を40集めた。これらに英語・ラテン語・エスペラント語などの接頭辞を組みあわせれば、良さげな地名が完成するだろう。きょうは接尾辞だけで力尽きたので、接頭辞については自力で探してくれ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)ノシ⌒🥄

①ヨーロッパ系

1.-ia
 古代ローマ時代のラテン語系の地名をあらわす接尾辞「-ia」。広範囲な国や地域を表すときに用い、民族名に「-ia」をつけて国名とするケースが多い。

・アジア(Asia)=「東の地」
 ※ローマ時代にトルコ西部をアシアとした。エーゲ海の東を意味する”assu”が語源。

・オセアニア(Oceania)=「大洋の島々」
 ※オセアニア (Oceania):ocean + -iaで、「大洋州」のこと。古代ギリシア語のオケアノスに由来。

・ユーゴスラビア(Yugoslavia)=「南スラブ人の国」
 ※“jugo”(南)と”slavija”(スラブ人の国)に由来。

・ルーマニア(Romania)=「ローマ人の国」
 ※現在まで古代ローマ人の子孫としてラテン語系の言葉を使い続けている。

・ロシア(Russia)=「ルーシ族の国」
 ※“Rus” はスウェーデンバイキングの総称。

・オーストラリア(Australia)=「南の国」
 ※ラテン語の “australis”(南)に由来。古代からインドの南に未知の大陸があると信じられていた。

・サウジアラビア(Saudi Arabia)=「サウド家のアラビア」
 ※なおアラビアは「砂漠の民の国」の意味。

・ナミビア(Namibia)=「ナミブ砂漠の国」
 ※ナミブ(Namib)は主要民族サン人の言葉で「隠れ家」の意味。またナマダマラ族の言葉では「広大な場所」を表す。

・リベリア(Liberia)=「自由の国」
 ※ラテン語の”liber”(自由)に由来。アメリカの解放奴隷のために建国された国。

 この接尾辞は広く用いられており、ユーラシア(Eurasia)・スロバキア (Slovakia)・スロヴェニア(Slovenia)・ジョージア (Georgia)・カリフォルニア(California) ・トランシルヴァニア (Transylvania)などの地名に見られる。イタリア(Italia)も同様だが、同国は州名においても多くの州がこの接尾辞を用いる。 また、-niaから変化した -gnaという接尾辞も使用する。 さらにイタリア語では他国を呼ぶ名称は-iaを付けることが多い。フランス(Francia)、ドイツ(Germania)、トルコ(Turchia)、スウェーデン(Svezia)、ノルウェー(Norvegia)、フィンランド(Finlandia)、ポーランド(Polonia)など。


2.-land
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-land」は、「国」を表すときに用いる。

・イングランド(England)=「アングル人の国」
 ※ゲルマン語の"Anglii”が語源。おもな一説に「Angul」は古ゲルマン語で「狭い水域」や「湾」を意味する可能性があるとされる。アングル人は現在のデンマークのアンゲルン(Angeln)半島に住んでいたと考えられている。

・アイルランド(Ireland)=「エリウの土地」
 ※ 「エリウ(Ériu)」というケルト神話の女神の名に由来。一説にケルト語の”re”(西側)が語源で、「(イングランドの)西に住む人の国」の意味。

・ネザーランド(Netherland)=「低地の国」
 ※日本では、通称オランダ。

・ニュージーランド(New Zealand)=「新しい海の国」
 ※オランダの地方名「Zeeland(ゼーランド)」に由来。”zee”はオランダ語で海を表す。


3.-berg
 ドイツ語で Berg は山を意味。ドイツ語の地名をあらわす接尾辞「-berg」で、「山」(防衛施設を備えた高地)という意味。

・ハイデルベルク(ドイツ)
 Heidelberg=「コケモモの山」


4.-burg
 ドイツ語で Burg は城砦(要塞としての機能を備えた中世の城)、避難所(保護者)を意味し、-burg は、ドイツ語・オランダ語・アフリカーンス語で城主の管区を意味する接尾辞である。なおドイツ語は「~ブルク」、ゲルマン語は「~ブルグ」、英語は「~バーグ」とおぼえよう。英語の -burgh, -bury ・フランス語の -bourg も同様。

・ヨハネスブルグ(南アフリカ共和国)
 Johannesburg=「ヨハネスの都市」
 ※ 当時のトランスヴァール共和国の官僚Johannes Rissikに由来。

・サンクトペテルブルク(ロシア)
 Sankt-Peterburg=「聖ペテロの都市」

・ザルツブルク(オーストリア)
 Salzburg =「塩の城塞都市」

・ハンブルク(ドイツ)
 Hamburg=「湿地の城塞」

・フライブルク(ドイツ)
 Freiburg=「自由都市」

・ティルブルフ(オランダ)
 Tilburg=「Tilの町」
 ※「Til」の語源ははっきりしないが、一説には「小さな家」や「集落」という意味を持っていたとされる。

・ウィリアムバーグ(イギリス)
 Williamsburg=「ウィリアムの都市」


5.-bourg
 フランス語系の地名をあらわす接尾辞「-bourg」は、「都市」「町」という意味。

・シェルブール(フランス)
 Cherbourg =「高貴な町」

・ストラスブール(フランス)
 Strasbourg =「街道の町」


6.-burgh
 「~バラ、~バーグ」はゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-burg」が英語で「-brough、-burgh」に変化したもので、「城塞都市」「都市」という意味。

・エジンバラ(イギリス)
 Edinburgh=「エドウィン王の城塞都市」

・ピッツバーグ(アメリカ)
 Pitsburgh =「ピットの都市」
 ※18世紀の政治家・初代チャタム伯爵ウィリアム・ピット(William Pitt)に由来。


7.-bury
 都市名の語尾に付く「~バリー、~ベリー」はゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-burg」が「-bury」に変化したもので、「都市」「城塞都市」という意味。

・カンタベリー(イギリス)
 Canterbury=「カンタブリ族の砦」
 ※「Cantware」は、ケルト人部族「カンタブリ族(Cantii)」を指す。

・ウォーターバリー(アメリカ)
 Waterbury=「水の町」


8.-ham
 ケルト語系の地名をあらわす接尾辞「-ham」は、「村」「屋敷」という意味。

・バッキンガム(イギリス)
 Buckingham =「ブッカ人の村」
 ※”Bucca”は、アングロ・サクソン人の族長ブッカに由来するイングランドの最古の町の名前。

・バーミンガム(イギリス)
 Birmingham =「ケルト系ベルム人の村」

・ノッティンガム(イギリス)
 Nottingham =「ケルト系スノート人の村」


9.-dorf
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-dorf」は、「村」という意味。

・デュッセルドルフ(ドイツ)
 Dusseldorf=「デュッセル川の村」


10.-ingen
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-ingen」は、「村」という意味。

・フローニンゲン(オランダ)
 Groningen=「緑の村」

・スケベニンゲン(オランダ)
 Scheveningen=「傾斜の村」

・ゾーリンゲン(ドイツ)
 Solingen=「Solの村」
 ※Solは語義不詳だが、一部の研究者は、地名の最初の部分が川や湿地などの自然地形を指していた可能性を指摘している。


11.-city
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-city」は、「町」という意味。

・ソルトレイクシティ(アメリカ)
 Salt Lake City=「塩水湖の町」

・カンザスシティ(アメリカ)
 Kansas City=「南風の人々の町」
 ※スー族の”Kansa(南風)”に由来


12.-stadt、-statt
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-stadt」「-statt」は、「町」という意味。より正確には中世ドイツの自治都市を指す。

・ノイシュタット(ドイツ)
 Neustadt=「新しい町」

・ハルシュタット(ドイツ、オーストリア)
 Hallstadt=「塩の町」

・ハイリゲンシュタット(オーストリア)
 Heiligenstadt=「聖なる町」

・アイゼンシュタット(オーストリア)
 Eisenstadt=「鉄の都市」


13.-ford、-furt、-fort
 「~フォード」「~フルト」「~フォート」はゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞で、それぞれ「-ford」「-furt」「-fort」であり、「浅瀬」「渡し場」という意味。

・オックスフォード(イギリス)
 Oxford=「牛の渡し場」

・フランクフルト(ドイツ)
 Frankfurt=「フランク族の渡し場」

・フランクフォート(アメリカ)
 Frankfort=「フランク人の浅瀬」


14.-haim
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-heim」は、「郷里」という意味。

・アナハイム(アメリカ)
 Anaheim =「アナ川の郷里」


15.-gart
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-gart」は、「庭」「園」という意味。

・シュツットガルト(ドイツ)
 Stuttgart=「牝馬の園」


16.-shire
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-shire」は、「州」という意味。

・ハンプシャー(イギリス)
 Hampshire =「自作農場の州」


17.-dam
 オランダ語でdamは堤防、堰(ダム)を意味。

・アムステルダム(オランダ)
 Amsterdam=「アムステル川の堤防」

・ロッテルダム(オランダ)
 Rotterdam=「ロッテ川の堤防」

・フォーレンダム(オランダ)
 Volendam=「埋め立てられた堰」
 ※「Vollen」はオランダ語で「満たす」や「埋める」を意味し、ここでは特に水路や湖を埋め立てる行為を指していると考えられる。フォーレンダムは元々Zuiderzee(ズイデル海)という海の一部であり、そこを埋め立ててできた土地である。


18.-ville
 -ville はフランス語で都市の意味。英語の村(village)と同源。英語・フランス語で都市を意味する接尾辞としてしばしば用いられる。

・ブラザヴィル(コンゴ)
 Brazzaville=「ブラザの町」
 ※フランスの探検家ピエール・サヴォルニャン・ド・ブラザ(Pierre Savorgnan de Brazza)に由来。1880年にこの地域を探検し、ヨーロッパの植民地化の一環としてこの都市を設立した。

・アルヴェールヴィル(フランス)
 Albertville=「アルヴェールの町」

・ナッシュヴィル(アメリカ)
 Nashville=「ナッシュの町」

・マーティンズヴィル(アメリカ)
 Martinsville=「マーティンの町」


19.-bad
 ドイツ語で Bad は風呂や温泉を意味し、温泉保養地であったことを意味する。


20.-ton
 ゲルマン語系の地名をあらわす接尾辞「-ton、-town」は「町」、「柵で囲った地」という意味。英語で町(town)を意味する接尾辞としてしばしば用いられる。

・リトルトン(アメリカ)
 Littleton=「小さな町」

・サウサンプトン(イギリス)
 Southampton=「南の開拓地の町」

・アーリントン(アメリカ)
 Arlington =「アーリントン伯の町」

・チャールストン(アメリカ)
 Charleston=「イングランド王チャールズ2世の町」


21.-ington
 -ingtonは、英語圏の地名接尾辞。多くの場合、人の名前に続いて、-ingは「〇〇な一族や人々」を意味し、-tonは村を示唆する。これらの地名の多くは後に苗字に転用された。多くの架空の場所やキャラクターにも、-ingtonで終わる名前が付けられる。


22.-polis
 古代ギリシア語の地名をあらわす接尾辞「-polis」は、「都市国家」という意味。-polis (-πολις)はギリシア語で都市の意味。 都市を意味する接尾辞として命名の際しばしば用いられる。地名ではないが、メトロポリス (metropolis)・メガロポリス (megalopolis) などの語も同様の意味で「ポリス」を含んでいる。

・アナポリス(アメリカ)
 Anapolis =「聖アナの都市」

・ミネアポリス(アメリカ)
 Minneapolis  =「水の都市」
 ※mniは「水」を意味するインディアンの言葉。

・インディアナポリス(アメリカ)
 Indianapolis =「インディアンの都市」

23.-poli
 -polis(都市)はイタリア語では -poliとなり、ギリシャ植民都市であったナポリ(Napoli)が有名。他には旧イタリア領のトリポリ(Tripoli)など。

・ナポリ(イタリア)
 Napoli =「新しい都市」

・トリポリ(リビア)
 Tripoli =「3つの都市」


24.-nesia
 古典ギリシア語で「諸島」を意味するνησιά/nesia(ネーシア、ネシア)に由来。

・ポリネシア(太平洋)
 Polynesia =「多くの島々」
 ※ギリシャ語の"Poly(多くの)"と"nesos(島々)"に由来。

・ミクロネシア(赤道以北)
 Micronesia =「小さな島々」
 ※ギリシア語の”mikro”(極小)と”nesos”(島々)に由来。

②アジア系

25.-stan
 「〜の土地」を意味するペルシア語。ペルシア・トルコ系特有の地名をあらわす接尾辞で、「国」や「土地」など広い地域を表すときに用いる。西南アジアの国名に多くみられる。

・アフガニスタン(Afghanistan)=「アフガン人(山の民)の国」
 ※ パシュトー語で「山の民」を意味する afghan に -stanがついたもの。

・パキスタン(Pakistan)=「清らかな国」
 ※ "Pak(پاک)"は「清浄な」を意味するペルシア語・ウルドゥー語)。

・カザフスタン(Kazakhstan)=「カザフ人(放浪の民)の国」

・トルクメニスタン(Turkmenistan)=「トルクメン人(トルコ人に似た)の国」

・ウズベキスタン (Uzbekistan) =「ウズベク人の国」
 ※"Uzbek(ウズベク)"は民族名だが、起源について最も流布している説は、14世紀から15世紀にかけて中央アジアを統治したウズベク・ハーン(Uzbek Khan)に由来するというもの。なお、Uzbekの語義そのものは、おもな節ではトルコ語の「Uz(自分、自己)」と「Bek(首長、領主、王)」から来たと解釈され、Uzbekは「自己を支配する者」や「自由な領主」「自由な人々」という意味になる。

・キルギスタン (Kirgistan) =「キルギス人の国」
 ※"Kyrgyz(キルギス)"も民族名であるが、語源については諸説ある。まず最も一般的な説は「40」という意味で、キルギスの伝統的な40の部族に由来しているとされ、キルギスの国旗にもこの「40」の象徴が使われている。また、他の説では「不滅」や「独立した者」という意味も考えられている。

・タジキスタン (Tajikistan)=「タジク人の国」
 ※「Tadzhik(タジク)」も民族名であるが、この語の正確な起源は諸説あってはっきりしない。興味がある人は自分で調べてくれ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)ノシ⌒🥄

 その他、インドの別称であるヒンドゥスターン (ヒンドスタン, Hindustan)は、ペルシア語でインダス川を意味する「ヒンドゥー」(Hindū) に、-stanをつけた語で、「インダス川(およびそれ以東)の土地」を意味する、また、主としてクルド人が居住する地理的領域を慣習的にクルディスタンと呼ぶ。


26.-kent
 トルコ語系の地名をあらわす接尾辞「-kent」は、「町」という意味。

・タシケント(ウズベキスタン)
 Tashkent=「石の町」
 ※前二世紀に建設された石造りの城塞都市にちなんでいる。

・シムケント(カザフスタン)
 Shimkent =「草原の町」


27.-abad
 ペルシア語系の地名をあらわす接尾辞「-abad」は、「〜の街・場所」「城塞都市」「集落」という意味。「……に満たされた」ととることもある。

・ハイデラバード(インド)
 Hyderabad=「ハイダル(獅子)の都市」
 ※「Hyder(ハイダル)」は「ライオン」を意味するアラビア語由来の言葉。ハイダルは、イスラム教の第四代正統カリフの尊称の一つ。

・ジャラーラーバード(アフガニスタン)
 Jalalabad=「偉大なる都市」

・イスラマバード(パキスタン)
 Islamabad=「イスラムの都市」

・アシハバード(トルクメニスタン)
 Ashkhabad=「麗しの都市」


28.-kand
 ペルシア語系の接尾辞「-kand」は「町」「村」という意味。

・サマルカンド(ウズベキスタン)
 Samarkand =「石の町」
 ※一説に「Samar(人名)」、また別の説では「Samaria(サマリア)」という地名に由来するという。

29.-war
 ペルシア語系の地名をあらわす接尾辞「-war」は「村」「町」という意味。

・ペシャワール(パキスタン)
 Peshawar=「人々の町」


30.-pur
 サンスクリット起源、ヒンディー語他インド系言語、その影響を受けたマレー語などで砦、街の意。タイ語にも"บุรี" (ブリー)の形で取り入れられている。

・ジャイプール(インド)
 Jaipur=「勝利の町」

・ナーグプール(インド)
 Nagpur=「ナグ川(蛇)の町」
 ※「Nag(ナグ)」はサンスクリット語で「蛇」を意味し、この都市を流れる「ナグ川(Nag River)」が蛇のように曲がりくねっていることに由来。また一説に、ナガ族(Nagavanshi)という古代の部族に由来するという。

・シンガプーラ(シンガポール)
 Singapura=「獅子の町」
 ※Singapuraはマレー語に由来するシンガポール(Singapore)の古名。


31.-burī
 -buri(บุรี)はタイ語における「町」の意味。

・チョンブリー(タイ)
 ※ชลบุรี=「水の町」

・ペッチャブリー(タイ)
 ※เพชรบุรี=「金剛石の町」


33.-dhara
 サンスクリット語系の地名をあらわす接尾辞-dharaは、「土地」という意味。

・ガンダーラ(インド)
 Gandhara=「香り高き土地」


34.-karta
 サンスクリット語系の地名をあらわす接尾辞-kartaは、「都市」という意味。

・ジャカルタ(インドネシア)
 Jakarta=「偉大なる勝利の都市」
 ※梵語の「ジャヤ」と「カルタ」の合成語。

・スラカルタ(インドネシア)
 Surakarta=「ソロの都市」
 ※”Solo”はマタラム王国の都。


35.-hot
 モンゴル語で街、城の意。主に中国の内モンゴル自治区で見られる。呼和浩特 (Hohhot)、烏蘭浩特 (Ulanhot)など。

③スラヴ系

36.-na
 ウクライナ (Ukraina):ウクライナ語で「終わり、縁」を意味する krai に、地名接頭辞の u- と地名接尾辞の-na がついたもの。なお、krainaで「国」という意味。補足として、「Ukraina」は「国境地帯」や「辺境の地」という意味もあり、これはかつてロシアとヨーロッパ諸国の間の境界地域としての役割を反映している。


37.-sk、-tsk
 スラブ語の地名接尾辞「-sk、-tsk」は、「都市」という意味。スラヴ語の形容詞語尾で、英語の -sh などと同源。

・オホーツク(ロシア)
 Okhotsk=「オホート川の都市」
 ※「川」を意味する Okata がOkahota に変化し、それに -sk がついて地名化したもの。元は町の名だったが、現在は海の名にも転用されている。

・ハバロフスク(ロシア)
 Khabarovsk=「ハバロフの都市」
 ※18世紀のロシア人探検家イェロフェイ・ハバロフ(Yerofey Khabarov)に由来。

・ノボシビルスク(ロシア)
 Novosibirsk=「新シベリアの都市」

・イルクーツク(ロシア)
 Irkutsk=「イルクート川の都市」

・グダンスク(ポーランド)
 Gdańsk=「グダニ川(水辺)の町」
 ※最も一般的な説は、「Gdania」や「Gdania River」という古代の地名に由来するというもの。この川は現在のモトワヴァ川(Motława River)に該当する。また、「gdania」という語自体が古いスラヴ語で「湿地帯」や「水辺の土地」を意味していた可能性があると推測されている。

38.-gorsk
 ロシア語で「~山の街」の意。

・マグニトゴルスク(ロシア)
 Magnitogorsk=「磁石の山の街」
 ※「Magnit(магнит)」はロシア語で「磁石」の意味。この地域には鉄鉱石(磁鉄鉱)が豊富に存在しているため。

・エレクトロゴルスク(ロシア)
 Elektrogorsk=「電力の街」
 ※ 「Elektro(электро)」はロシア語で「電気」の意味。電気に関連する産業や発電所がこの地域にあることを反映。


39.-grad,
 -gradは街、城塞都市、城などを意味するスラヴ語。

・ベオグラード(セルビア)
 Beograd=「白い都市」
 ※“beo”はセルビア語で白いという意味。

・レニングラード(ロシア)
 Leningrad=「レーニンの都市」

・ヴォルゴグラード(ロシア)
 Volgograd=「ヴォルガ川の都市」

40.-gorod
 -gorodは街、城塞都市、城などを意味するスラヴ語。ロシアで限定的に使用される。

・ノヴゴロド(ロシア)
 Novgorod=「新しい都市」
 ※接頭辞 Nov-(新しい)と-gorod(都市)で新しい都市の意。

・ニジニーノヴゴロド (Nizhnij Novgorod)
 ※本来の市名はノヴゴロドだが、上記のノヴゴロドと区別するため、「下の」を意味する形容詞 Nizhnijがついた。

・ベルゴロド(ロシア)
 Belgorod =「白い都市」

さいごに

 冒頭で英語・ラテン語・エスペラント語の接頭辞を使えといっておいて、さっそく前言を翻すけども、そのとおりにすれば、まったく同じ地名を発想をする人が何人も出てくるだろう。
 世界一有名な架空の地名に、ナルニア(Narnia)がある。もちろん、C.S.ルイスの『ナルニア国物語』に登場する魔法の国の名だが、作者はその意味や由来を公式に明言していない。ただ、その語源や意味にはいくつかの解釈がある。一般的にいわれている説を挙げると、

◯ラテン語の影響
  「Narnia」という語は、ラテン語的な響きがある。C.S.ルイスは古典文学やラテン語に精通していた。この背景を踏まえて、作者が古典的かつ異世界的な響きを持たせるべく、この名を創作したのではないかと推測されている。が、あくまで推測。

◯イタリアの町名に由来
  イタリア中部に位置する古い町「ナルニ(Narni)」は、かつて「Narnia」と呼ばれていた。ここからインスピレーションを受けたC.S.ルイスが、この名を採用した可能性がある。
 「Narni」の語源は古代ローマ時代に遡る。この地域は古代には別の名で呼ばれていたが、紀元前299年にローマ人によって征服された後、「Narnia」という名に変更された。これは町の近くを流れるナル川(Nera)に由来しているとされ、この地名には「川」に関連する意味が含まれているとされる。しかし、正確な語義は不明だ。

 つまり、Narniaという名は、永遠の謎なのだ。語義自体が曖昧なままだからこそ、Narniaという名は唯一無二であり、読者に幻想的な印象を与えつづけるのかもしれない。ときに創作は、意味に縛られないことも必要なのである。

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