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リモートワークでセキュリティ需要拡大!フィルタリングソフトでシェアNo1の「デジタルアーツ」を分析!

今回のテーマは「セキュリティ」!

世の中のデジタル化が進む中、安全にインターネット上のサービスやデジタル技術を安心・安全に利用する上で、セキュリティは欠かせない存在です。
その注目度の高まりと比例して、市場規模も拡大してきており、業界地図の中でも注目業界として取り上げられています。

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「セキュリティ」と言っても、その中身は多岐にわたります。

PC等にインストールして使うセキュリティソフトや、企業のサイトの正当性を保証する認証サービス等色々ありますが、今回はその中でも、Webやメールのフィルタリングソフトで国内シェアNo1の「デジタルアーツ」というという会社を分析し、会計クイズのコミュニティ、ファイナンスラボの業界地図勉強会で分析内容を発表しました!

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業界地図勉強会は、会計クイズのオンラインコミュニティ「ファイナンスラボ」で毎月行っている勉強会です。

今回は、業界地図の元編集長中山さんを中心に、

大手町のランダムウォーカーさん
にしけいさん
いごはち

で発表しました!

今回もたくさんの方にご参加いただきました^^
いつもありがとうございます!

2020年に話題になったPPAP

さて、突然ですが、みなさんは「PPAP」はご存知でしょうか?

「一時期流行った芸人のアレでしょ?ほら、ペン、パイナッポー・・・」

と思われた方、ちょっとお待ちください!!!

今回のテーマは「セキュリティ」です。
セキュリティ業界で「PPAP」と言えば、これです!

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仕事をされている方は、こういったメールを受け取った経験がある方が多いのではないでしょうか?

そう。ZIPで暗号化された添付ファイル付きのメールと、別で暗号化ファイルのパスワードが送られてくるメールのことです。

セキュリティ業界てPPAPと言えば、

Password付きzipファイル送ります
Passwordは別メールで送ります
暗(A)号化プ(P)ロトコル
の略語

を指します。

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下の図は、PPAPの仕組みを図解したものです。
仕事で社外の方とファイルをやり取りする際によく使われる方法ですね。

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最近はクラウドサービスや、自社のファイル共有システムでのファイルのやり取りが一般的になってきましたが、一昔前はファイルのやり取りと言えば、PPAPが一般的でした。
最近でも、まだまだこの方法を使っている方も多いと思いますが、このPPAP、実は「セキュリティ上の問題点」があります。

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PPAPの問題点の一つ目は「誤送信」です。

特定の相手しかファイルの中身が見られないようにパスワードをかけていても、このやり方の場合、ファイル付きのメールを送った後、その返信の形でパスワードを送ってしまうため、送り先を間違った場合、受け取った相手はそのパスワードを使って、ファイルの中身を見ることができてしまいます。

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「じゃあ、パスワードだけ別の方法で送ればいいじゃない」

そうですね。例えば、事前に相手とパスワードを決めておき、メールでパスワードを送らないというのは、一つの対策にはなります。(複数の相手と事前に調整するのが手間ですが。。)
他に電話やショートメッセージで伝えるという手段もありそうです。

ただ、こういった震える事例もあるそうなので、くれぐれも注意が必要です。

PPAPの問題点の一つ目は「標的型攻撃」です。
標的型攻撃とは、機密情報を盗み取ることなどを目的として、特定の個人や組織を狙った攻撃のことです。
PPAPはこの標的型攻撃の被害を受ける可能性を高めてしまいます。

例えば、悪い人が大手町さんの会計クイズに関する情報を盗み取ろうと考えたとします。
普通に大手町さんにメールを送っても、怪しいメールだと思われ、スルーされますが、私(いごはち)の名前(メールアドレス)を偽装して大手町さんにメールを送った場合、大手町さんは偽メールと気づかずにファイルを開いてしまう可能性があります。
ZIPで暗号化されたファイルはセキュリティソフトでチェックできない場合があるため、大手町さんは悪い人の思惑通りにファイルを開いてしまい、ウイルスに感染、機密情報を盗み取られてしまいます。

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このように、PPAPにはセキュリティ上の問題点があります。

2020年にデジタル改革担当大臣に就任した平井大臣が行った「デジタル改革アイデアボックス」でも、この問題が投稿され、なんと投票数が1位だったようです。

これを受け、2020年に平井大臣が「PPAP廃止」発言をしたことから注目が集まり、最近、脱PPAPの動きが広がっています。

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今回のテーマ企業は「デジタルアーツ」

このPPAP問題のソリューションを提供している会社の一つが「デジタルアーツ」という会社です。
PPAP対策など、Webやメールのセキュリティ対策サービスを提供しています。

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業界地図の中では、サイバーセキュリティ業界の「ネットワーク保護」カテゴリーで、フィルタリングソフト大手として掲載されています。

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ところで、「フィルタリングソフトってなに?」と思われた方もいらっしゃると思いますので、簡単に解説します。

みなさんもご存知のとおり、インターネットには便利なサービスや役立つサイトもある一方、不正アクセスやウイルス感染などの危険にも晒されています。

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代表例がフィッシングメールです。
例えば楽天を騙ったこんなメールです。他にAmazonもよく見ます。

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このメール、怪しいポイントが満載です。
まず日本語が変です。この時点でフィッシングメールほぼ確定なんですが、メールドメイン(@の後ろ)が違う時点で確定です。
楽天から送られてくる場合は、楽天のドメインになっているはずですが、よくわからないドメインになっています。

こういった怪しいメールを受け取った場合は、触らない、または削除が基本です。

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先程のメールは明らかに怪しいメールでしたが、中には巧妙に偽装されたフィッシングメールもあります。
私も、仕事で大量のメール処理に追われる中、確認が疎かになり、うっかりメールの中のリンクをクリックしそうになった経験があります。

多くの人が気をつけていると思いますが、それでも様々な組織や個人で被害が発生しており、その中には大手企業も含まれています。

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こうしたインターネット上の脅威から守ってくれるものの一つが、「フィルタリングソフト」です。
ウイルス付きメールや外部からの不正アクセスをブロックしたり、怪しいサイトへの接続を防ぐという機能を持っています。

よく似た機能を持つセキュリティソフト(ウイルスソフト)との比較ですが、セキュリティソフトがウイルスの検出・駆除(機器を守る)ことを目的としているのに対し、フィルタリングソフトは危険に近づけない(人を守る)ことを目的としている点が異なります。

そのため、フィルタリングソフトは社内システムを保有する組織で利用されることが多いです。

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フィルタリングソフトでシェアNo1のデジタルアーツ

先程もお伝えしたとおり、デジタルアーツはWebとメールのフィルタリングソフトで国内シェアNo1の会社です。

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・Webフィルタリングソフト「i-FILTER」
・メールフィルタリングソフト(m-FILTER)

この2つのソフトが主力商品です。
どちらのソフトも国内シェアの約半分を占めています。

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ライセンス販売が主力ですが、2018年にクラウドサービスを開始し、リモートワーク中心のワークスタイルへの変化も追い風に、近年こちらの契約数も大きく伸ばしています。

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「FINALCODE」という安心してファイルのやり取りができるサービスも展開しています。
このサービスにはファイルの暗号化、権限管理、追跡、遠隔削除機能があり、PPAP対策としても使われています。

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このデジタルアーツ、セキュリティ需要の高まりを追い風に業績を拡大させており、売上高は右肩上がりで伸びてきています。

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#会計クイズ 「BS比較問題」

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ここで#会計クイズです!

以下は2010年度と2019年度のBSを並べたものですが、

2019年度のBSはどちらでしょう?

という問題です。

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ヒントはクラウドサービスです。

以下は参加者の方のコメントです!

回答はほぼ半分に割れていました。ちょっと難しかったですかね(汗
クラウドサービスでピンときた方も、思ったよりは変化が小さくて悩まれたかもしれませんね。

では解答です。

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正解は①が2019年度のBSでした!

注目ポイントは売掛金と前受金の大きさの違いでした。
クラウドサービスの割合が増えてきたことが、大きさの違いに表れています。

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デジタルアーツの事業内容

ではここから、改めてデジタルアーツの事業内容を確認していきます。

デジタルアーツはWebやメールのフィルタリングソフトなど、セキュリティ製品を提供している会社です。
Webフィルタリングソフト、メールフィルタリングソフトでは、国内シェアの約半分を占めています。

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国内シェアNo1の理由の1つに、高精度のフィルタリングを実現するデータベースの存在があります。

インターネット上のWebサイトは数え切れない程あるため、フィルタリングソフトでは独自のルールに基づいて、利用者のアクセス制限を行っていますが、その精度に関して、デジタルアーツのWebフィルタリングソフトは最も高い精度を実現しています。

これにより、利用者や組織をセキュリティ被害から守ることができます!

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なぜフィルタリング精度が重要なのか?
もう少し詳しく解説します。

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先程もお伝えしたとおり、インターネット上のWebサイトは無数にあるため、その全てを正しくフィルタリング判定することは非常に困難です。
また逆に、既定のルールに例外を設定しなければならない場合もあります。

そのため、組織で利用する場合は、社内の情報システム部門などの担当者が、手動でフィルタリング設定を行う必要があります。

この時、フィルタリング精度が低いと、追加で設定しなければならない項目が増え、運用負担が大きいものとなります。
また、数が多いとミスの発生確率も上がりますので、本来アクセスさせてはいけないサイトへのアクセスが制限されていない等のすり抜けも起こりやすくなります。

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フィルタリング精度が高いと、こうした運用負担や、すり抜けのリスクを抑えることができるので、安心してインターネットを利用することができます。

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フィルタリングソフトは基本的には組織で使われる製品です。
そのため、デジタルアーツの売上は企業や行政・教育機関向けが9割を占めています。

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デジタルアーツの業績

ここからはデジタルアーツの業績について見ていきます。

まずは国内のセキュリティ製品サービスの市場規模から確認します。
以下の図のとおり、市場規模は右肩上がりで拡大しており、2019年の約2800億円から、2024年には約3800億円に拡大すると予想されています。

オンプレミス型の製品が大半を占めますが、近年はSaaS型の市場規模が拡大してきているのがわかります。

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市場拡大を背景に、デジタルアーツの売上高は右肩上がりで伸びており、2010年度から2019年度までの10年間で約2.5倍に成長しています。

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販売先別の内訳を見てみると、企業・公共向けが大きく伸びているのがわかります。

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特に2016年度に大きく売上を増やしているのが気になります。
その理由は何なのでしょうか?

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きっかけは2015年の個人情報流出事件です。
日本年金機構の職員が冒頭で説明した標的型攻撃に合い、ウイルス付き電子メールを開封してしまったことで、職員のPCがウイルスに感染、約125万件の個人情報が外部に流出してしまうという事件がありました。
新聞やニュースでかなり大きく取り上げられていたので、記憶にある方も多いのではないでしょうか?

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この個人情報流出事件を受け、国、企業がセキュリティ対策の強化に動きます。
原因が標的型攻撃ということもあり、標的型攻撃を防ぐフィルタリングソフトに対する需要が拡大しました。

これが2016年度にデジタルアーツの売上が急拡大した背景です。

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営業利益率も2015年度の25%から2016年度は36%、2018年度は45%と非常に高い数値になっています。
これは売上拡大が理由でしょうか?

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こちらは営業利益率、原価率、販管費率のグラフです。
原価率も2015年度以降下がっていますが、販管費率が2016年度以降に大きく減少していますので、その理由を確認していきます。

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こちらは売上高と販管費の推移を表したグラフです。
2016年度以降、売上高は増加しているのに対し、販管費は減ってきていることがわかります。

デジタルアーツの販管費で上位を占めるのが、

・人件費
・広告宣伝費
・海外費用

の3つですが、特に人件費、海外費用が減少しています。

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その理由を確認すると、海外戦略の見直しを行ったようです。

2014年にアメリカに子会社を設立するなど、ファイルセキュリティシステムを武器に海外市場の攻略を目論見ましたが、思うように攻略することができず、2018年に戦略転換を行っています。
この海外戦略見直しに伴い、人件費と海外費用が大きく減少。その結果、営業利益が増加しているようですね。

今後はファイルセキュリティシステムだけで攻略するのは困難と判断し、国内同様に他のセキュリティ製品と組み合わせ、総合セキュリティ対策メーカーとして攻略を狙っていくようです。
直近は営業利益、営業利益率が伸びて業績好調のように見えますが、この海外再攻略がどのように行われるかによって、今後の業績が影響されそうです。

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次に原価を確認します。

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デジタルアーツは他のセキュリティ製品を展開している会社と同様、

原価率が低い

という特徴があります。

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ちなみにセキュリティソフトの「ウイルスバスター」で有名なトレンドマイクロの2020.2月期の原価率は22%、標的型攻撃ソフトを提供するFFRIセキュリティの原価率は20%です。
(バフェット・コードへのリンクを張っておきます)

トレンドマイクロ
https://www.buffett-code.com/company/4704/

FFRIセキュリティ
https://www.buffett-code.com/company/3692/

デジタルアーツの原価率がなぜ低いのか、その理由を確認します。

こちらはデジタルアーツの原価明細書です。
これを見た時に気になったのが、当期総費用の4割もを他勘定に振り替えている点です。
これがなければ原価率はもう少し高くなるはずですが、その中身を確認していきます。

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他勘定振替高の内訳を確認すると、そのほとんどを固定資産に振り替えています。
どうしてそのようなことが行われているのでしょうか?

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デジタルアーツのように市場販売目的のソフトウェア製品を販売している会社では、製品の基となる製品マスターと、その製品マスターをコピーして制作した製品が存在します。
製品マスターはそこから製品(収益)を生み出すことができるため、無形固定資産としてBSに計上されます。

この製品マスターに対し、市場環境の変化や顧客のニーズに合わせて機能改良等が行われます。
機能改良を行うには、当然費用が発生しますが、その機能改良によって、製品マスターの収益性が向上することになるため、その費用は「固定資産として計上する」というのが会計上のルールになっています。

そのため、デジタルアーツでは、総費用のうち、機能改良にあたる部分について、固定資産への振り替えを行っているのです。

ちなみにソフトウェアにかかる費用には、バグ改修等の保守にかかる費用もありますが、こちらは収益性の向上に結びつくものではないため、原価として扱われます。

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次に総費用の6割を占める経費を確認します。

内訳を確認すると、経費の大半が資産計上したソフトウェア資産の減価償却費となっています。

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ここまでの話をまとめると、以下の図となります。

・BSの無形固定資産(ソフトウェア)として製品マスターが存在
・製品マスターに対する機能改良の費用は、総費用として計上された後、無形固定資産(ソフトウェア)に振り替えられる
・無形固定資産(ソフトウェア)は一定の期間をかけて減価償却される

以上、デジタルアーツの原価率が低い理由として、製品マスターから簡単にコピーして製品をつくれるため、それほど費用がかからないことに加え、機能改良にかかる費用もこのように一旦資産化された後、減価償却される仕組みになっていることが挙げられます。

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販売形態の変化に伴う影響

ここまでデジタルアーツの事業内容がBS/PLにどう結びついているかを見てきました。
最後に、問題として取り上げたBSの変化について見ていきます。

デジタルアーツでは、10年前と比較して、

・前受金の割合が増加
・売掛金の割合が低下

という変化が起きています。

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こちらは前受金のグラフです。
年々増加していることがわかります。

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一方、売掛金は2017年度以降、減少してきています。

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前受金と売掛金の推移をグラフにしてみました。
売上の拡大に合わせ、2016年度まではどちらも右肩上がりで増えていますが、売掛金は2017年度以降減少傾向に転じ、2018年度に前受金が売掛金を逆転しています。

一体、何があったのでしょうか?

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前受金が売掛金を逆転した理由の一つに、2018年にスタートした「クラウドサービス」があります。

それまではライセンス販売(社内システムに製品を導入)が中心でしたが、セキュリティ人材不足やテレワークの増加を背景に、クラウドサービスの利用が増加します。

デジタルアーツではライセンス販売とクラウドサービスで売上計上の仕方が異なっており、それが前受金と売掛金の逆転につながっています。

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まずライセンス販売の場合ですが、ライセンス利用料相当の売上は契約月に計上され、保守料部分のみ月額で按分して売上計上されていきます。

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一方、クラウドサービスの場合は、利用料が契約期間を通じて月額按分で売上計上されていきます。

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まとめると、以下のとおりです。

■ライセンス販売の場合
・ライセンス利用料
契約月に売上計上
→支払い発生までは売掛金に計上

・保守料
契約期間を通じて月額按分で売上計上
→前払いされた保守料のうち、保守提供前の金額相当は前受金に計上

■クラウドサービスの場合
契約期間を通じて月額按分で売上計上
→前払いされた利用料のうち、サービス提供前の金額相当は前受金に計上

このように、クラウドサービスに関しては提供前の利用料が前受金計上されることになるため、クラウドサービスの利用増加に伴い、前受金が売掛金を逆転する結果となりました。

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まとめ

今回は好調なセキュリティ業界から、フィルタリングソフトで業績を伸ばしているデジタルアーツを掘り下げてみました。

数年前までフィルタリングソフトといえば、社内システムへの導入(ライセンス購入)が一般的でしたが、近年はセキュリティ人材の不足やリモートワークの普及を背景に、クラウドサービスへの移行が進んでいます。

その結果、販売と同時に売上高が一括計上されるライセンス販売の売上比率が減り、契約期間で按分されるクラウドサービスの売上比率が増加。
それが、BSの売掛金と前受金の割合の変化として表れている。

以上が今回のまとめです!

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この変化によって、業績を確認する際にチェックするポイントも変わってきます。

以下はデジタルアーツの2020年度3Qの決算説明資料ですが、クラウドサービスの受注残高が大幅に増えています。
この大半が翌期以降の売上として繰り延べられるということになりますので、単に売上高だけをチェックするのではなく、今後は受注残高や前受金の変化もチェックする必要があります。

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さいごに

デジタルアーツの分析、いかがだったでしょうか?

IT業界に15年以上いますが、セキュリティに関する意識は毎年どんどん高まっていると感じています。

日本年金機構の個人情報流出事件など、セキュリティ事件・事故を起こした組織は世間から非常に厳しい目を向けられることになり、特に企業の場合は一発アウトになる可能性もあります。

そうしたこともあり、セキュリティ業界は非常に好調ですが、具体的に企業業績にどのような影響を与えているのかを調べたことがなかったので、デジタルアーツを調べて、とても勉強になりました。

デジタル化の進展に伴い、今後、セキュリティの重要性はますます高まってくると思います。
セキュリティでは機能以外に、そもそもどのようなセキュリティレベルにすればいいのか、そのセキュリティレベルを守り続けるための「運用」も重要な観点です。

今回は触れませんでしたが、デジタルアーツも2016年にセキュリティコンサルティングを行うデジタルアーツコンサルティングという子会社を設立し、コンサルティングと製品販売を連携させる戦略をとっています。

他にも、昨年上場したバリオセキュアという会社は中堅、中小企業向けにセキュリティ製品の導入~運用保守までをワンストップで提供しており、業績を伸ばしています。

セキュリティ業界にはまだまだ面白い企業が存在すると感じているので、引き続き掘り下げていきたいと思います!

「この企業を分析して欲しい」など、もしリクエストがありましたら、ぜひコメントお願いします^^
このnoteの感想などもいただけると、とてもうれしいです!






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いごはち@学びの実践家
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