読書|キッチン

キッチン/吉本ばなな

10代の頃にも読んでみたかったと思った。

その頃に読んでいたら自分の何かが変わっていたかもしれない。とかではなく、10代の頃に読んだら、どんな感想を抱いたのか単純に気になった。

同じぐらい心が震えたかもしれないし、今ほどではなかったかもしれない。もっと豊かに何かを感じとったのかもしれない。

もうそれを知ることは出来ないけど、何だか10代の多感な時期に読んでみたかったと思ったのだ。

柔らかい小説だと思う。
美味しそうな食べ物や幸福なエピソードがたくさん出てきてハッピーハッピーとかの柔らかさではなく、切なさも含めて柔らかい。

この『キッチン』に限ったことではないけれど、私って会話しているのかな?と思うことがある。

テンポがよかったりして会話が心地よい物語で、特にそう思うことが多いのかもしれない。『キッチン』の会話は面白い表現もありながら、自然に脳内再生できるくらい砕けていると思う。

会話してるな、いいな。と思った。
私は会話しているのだろうか?

そんなこと言ったら私の会話相手に失礼だと思うけど、『キッチン』を読んだ時も私は確かに「いいな。」と羨んだ。

大好きな人たちと毎回お喋りに夢中になってるくせに、「私は会話しているのだろうか?」なんて思ってしまうのは、矛盾なのかな。それか強欲なのかもしれないし、嫉妬してしまうぐらい吉本ばなな さんの世界観に引き込まれているのかも。

焦燥も希望もすべてが柔らかい。読むことができてよかった。

光、降りそそぐ朝の光の中で、木の匂いがする、このほこりっぽい部屋の床にクッションを敷き、寝ころんでTVを観ている彼女がすごく、なつかしかった。

p27


またね

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