読書|遠い太鼓

遠い太鼓/村上春樹

1986年秋から1989年秋までの旅行記。

1980年代が私はなんとなく好きだ。両親が20代前後の時間。若いけれどもう子供ではなくなっていく時代を書籍なんかを通して知るのが好き。これは祖父母のそういった時代もそうで、どうして好きなのかと聞かれると困るが、何だか好きなのだ。

この本は文庫本のためのあとがき、まで入れると569ページある。それなりのボリュームがあるけれど、もっと読みたくなるぐらいするする読める。

時代のギャップと日本とのギャップをいたるところに感じる。
登場する場所で私が行ったことがあるのはローマぐらいだ。それも本当に数日旅行するのと、少しの間でもそこで生活するのとでは見えるものが違う気がする。
生活するような心持ちで旅するのもいいな。なんてふと思った。まずは日本からでも。

とにかく私にはどれもこれも新鮮なスケッチだった。

ここに収められた文章は、原則的にはただのスケッチの集積だ。

p.23


「そんなに広くはないんだけれど、それはそれはもうビュウウウウウウティフルなお家なわけ」と彼女は感きわまったように、僕の膝をぽんぽんと手で叩きながら言う。

p47


見上げてみると、たしかに映画館の天井の四分の一くらいが、車のサンルーフみたいにぽっかりと開いていて、そこからまぎれもないオリオン座が見える。

p.107

これはギリシャの映画館の話で、これだけ見るととても素敵な雰囲気なのに、実際はちょっと違う。読む分にはとても面白い。
自分がもし同じ経験をしたらたまった物じゃないかもしれないが(1回ぐらいならいい)。
読む分には面白いので、ふふっとなる。

それにだいたい、こんなに深く静まりかえった夜明け前の時刻にどんな音楽を聴けばいいのだろう。

p246


そんなわけで僕はその自転車を肩にかついで最後の五キロを歩く羽目になった。やれやれやれやれ。

p396


実は初めて読んだ村上春樹作品はこの『遠い太鼓』で、その後にまだ『風の歌を聴け』しか読めていない。

たくさんある作品の中で、次はどれを読もうか。


またね


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