つまらない男がイクメンシゴデキだった場合
8月15日は私の誕生日であり、ウェディングパーティーをした日でもあった。2年前はウェディング、1年前は出産直前、そして今年は家族3人。いろいろと思うところあり、弊夫について考えてみることにした。
「付き合えたら嬉しいかなー、と」言われた時、私は少し考えさせてくれと言った。私にとってこの人は上京したときに美味しいご飯食べさせてくれる先輩で、好きとか嫌いとかそういうポジションではなかった。先輩にご飯連れて行ってもらうときは、仕事の話を聞いたり、私の大学院の話をしたりした。話はそれなりに盛り上がるし、何より全おごりしてもらってる身なので文句は言えない。ただ、人間としておもしろいとは思わなかった。
「人生はdrama!」と学部時代の指導教官から薫陶を受け、私も激しく同意している。dramaがないとおもしろくない。私は常にdramaを探しているし、自分の人生をいかにdramaチックにするかに懸けているし、共感力がすこぶる高く他人のdramaにも感情移入し泣いたり胸を痛めたり同情したりで忙しい。
しかし先輩はdramaを追い求める系の人ではなく、堅実にやることをやって飄々と生きているように見えた。キャリアを見ると今はスタートアップの役員だったりするので大企業でぬくぬくというタイプではないが、見た目も会話もdramaからは遠い存在だ。それは今も変わらない。
だから「付き合えたら嬉しいかなー、と」言われた時私は迷った。この人といるときっとdramaから縁遠くなってしまう。
しばらく迷って、まぁ合わなかったら別れればいいや、と高を括って付き合い始めることにした。
付き合い始めてまず気付いたのは、危機対応能力の高さだった。ある週末に旅行の予定を立てた。遠距離だったので、それぞれの家から目的地に向かった時、私の乗っていた電車が雪で止まった。2人で落ち合う場所に着いた時、すでに予定より3時間遅れ。目的地には、雪の影響で行けなくなってしまった。
私一人だったら途方に暮れていただろう。でも私が電車内で立ち往生している間に、元のホテルの予約をキャンセルし、行ける場所のホテルを取り直し、ランチに美味しいお寿司屋さんを探しておいてくれた。
次に家事能力の高さに気づいた。一緒に住み始めたら私より家事スキルが高かった。料理や掃除のクオリティは大差なかったが、単位時間あたりの家事能力が私より高かった。要するにテキパキしてた。
そしてホスピタリティの高さに気付いた。レディファーストが身についているし、どこに行っても(ちょっとしたところでも)お土産を欠かさない。私以外の人に会う時も、手土産を持って行ったり気配りを忘れない。マメな人だ。
高身長、高学歴、高収入の三高より、高い危機対応能力、家事能力、ホスピタリティの方が一緒に暮らすには断然重要。
人間としておもしろい人とは思わないが、堅実にやることをやって飄々としていられることは、すごいと思う。私は興味ある仕事だけ120%の力でやり、興味ない仕事は手を抜く人間なので、まんべんなくこなせるのは私にない強みだ。
しばらく一緒に暮らしていると私がバランスを崩すこともあり、そんな時は常に救ってくれた。だからもしこの人がバランスを崩すことがあれば、私が助けないと、と思うようになった(なおこの人がバランスを崩したことは、未だない)。なので結婚することにした。
結婚したとて何も変わらなかったが、子どもが生まれると全てが変わった。人間としておもしろいかなんてマジでどうでもよくて、無限に増える家事育児タスクを淡々と素早くこなして協力プレーできるかどうかが全て。母親と父親が同じように、料理し、掃除し、赤ちゃんを抱っこし、ミルクをあげ、おむつを替え、遊べると互いのフラストレーションはほぼない。
私の育休中は、夫=家事、私=育児で役割分担していたが、復職した今は家事育児とも二人ともせざるを得ない。家事はまだしも、育児は弊家でもキツいと感じることがあるほどハードだが、日々の会話と週次家族会議で目線を合わせることを意識するようになって、フラストレーションはほぼ解消した(といっても今後また出てくるのかもしれないが)。
夫氏の最大の貢献は毎週の作り置きです。このおかげで私は産後離乳食以外ほぼ料理していません。
あの選択をしたから、今の幸せな暮らしがある。ぽてぽての甘えん坊大将・エン様(赤ちゃんのあだ名)と夫と私の3人で笑い、泣き、楽しく生きている。dramaは夫ではなく、エン様がもたらしてくれる。
私の誕生日の3日後が夫の誕生日で、夫は毎年誕生日プレゼントに悩んでいる。無欲な人なので欲しいものがないという。こういうところが私にとってはほんとおもしろくない。つまんない男だなぁ。
でもイクメンシゴデキで私とエン様のことが大好きな夫に、改めて感謝を伝えようと思います。そういえば最近、日々に追われて感謝を伝えるのを忘れていたわ。
≪終わり≫
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