賃上げは企業にとってよくない、といわれたことについて考えてみた。
先日、スタエフで、今話題の「賃金を上げると主婦のパートが時間調整をして働かなくなってこまる」というNHKのニュースの紹介をした。もちろん、わたしは主婦が時間調整するのには、それなりのわけがあると思っている。
すると、その話の中で、賃上げをすると配当が下がるから、賃上げは会社にとっていいことないんだよ、という会社経営者さんの意見があった。
賃金と配当の関係
そこで、今回は、賃金と配当の関係について考えてみた。
その場で、会社経営者さんに2つの質問をいただいた。
①バブルの頃と比べて、現在の配当は増えていると思いますか?
②賃上げすると配当が減るから企業にはいいことはないんですよ、知っていますか?
というもの。そこで、この2つの問題を宿題として持ち帰り、わたしなりに検証してみることにした。
バブル期より配当は多い?それとも少ない?
まず、配当の増減はわたしにはわからないけれど、東証が変わったことから答えが導きだせそうだ。
バブル期になくて、今あるものといえばコーポレートガバナンスコードだ。これは約10年程まえ、東証が作った新しいルール。
ご存知のように、以前であれば東証1部、2部、マザースだった市場が、今ではプライム、スタンダード、グロースに変わっている。
その中で、プライム市場だけは、このコーポレートガバナンスコードに書かれていることがクリアできないといられなくなるほど厳しくも狭き門だ。
このコーポレートガバナンスコードには、株主を重んじるという内容のほんわりとした文言が書かれている。それを人は株主還元をしてくださいよと解釈するだろう。その株主還元の方法は2つ。
①配当金を増やす
②自社株を買う
どちらも株主にとってはありがたい話で、企業にとっても、株主が離れることを防ぐことが出来るし、株価だって安定する。
まず、①は読んで字の通り、配当を増やすこと。
②は市場に出ている自社株を、会社が一部買い取り、それを消却する。そうすることで、市場にある自社の発行済み株数が減る。だから一株当たりの利益が上がるため株価も上がる。
つまり、①も②も、株主にとってはありがたい。
こうしたコーポレートガバナンスコードが10数年前にできた。ということは、当然、バブル期には株主還元のルールなどなかったのだから、配当は今の方が多いにちがいない。
賃上げで配当が減ると?
もう一つは、賃上げは、企業にとって良いことはないという意見。
🔶賃金を増やすと会社の経費が増える
賃金を増やす ➡ 当期純利益が減る ➡ 配当が減る ➡ 会社の株価が下がる
という話しはもっともだ。けれど、この流れが正しいのなら、どうして、欧米の企業は賃金を上げるのだろう?ここが疑問だ。
ここで、配当金🟰株価という関係を疑ってみる。
配当が減っても、企業の株価が下がらないことがあるのではないか?
それはある。現在の世界の潮流では賃上げは悪いこととは言い切れない。理由は、機関投資家などは、賃金を上げることは、働く人の暮らしを豊かにすることであり、それは人への未来投資であると考える。
賃金が上がると、働く人のやりがいが生まれる。賃金が何年も上がらない主婦のパートのような働き方で、働けるだけありがたいと思わされるのは、おかしな社会の刷り込みで、やはり労働には正当な対価が必要だ。
よって、世界では従業員の賃金は上がる。たとえ、一時的に会社の当期純利益が減り、配当が下がったとしても、それは企業が人に対して未来投資をしたということなのだ。そしてそれを、機関投資家は、人を育てる企業は強いと評価する。だからこそ、たとえ配当が下がっても、株価に影響はない。
🔶当期純利益=配当とは限らない
企業は配当率を配当性向として発表し、HP上などで、当期純利益に対して何パーセントの配当を払うかを明らかにする。
当期純利益の半分を配当として払うのであれば、それは配当性向50%ということになる。この場合、残りの50%は会社側に残ることになる。これは内部留保とか、純資産とよばれる。
ただし、この比率は会社が決めるもの。配当性向50%もあれば、配当性向100%の会社もある。ここが面白いところで、会社法では、純資産内であれば、配当してもいいとある。
中には、配当性向150%の会社だってある。もちろんこの150%の100%は当期純利益だけれど、では、残り50%はどうするのだろう?
実は、これは会社の内部留保や純資産から出すことになる。
たとえば、研究開発に時間がかかるような物作りの会社では、純利益に波がある。(赤字のこともあるけれど、この場合、配当性向とは呼ばない)。そのため、研究開発時には、配当性向150%ととして、内部留保から50%の持ち出しをして、株主離れを防ぐこともある。
というわけで、企業の純利益が配当とイコールとも言えない。
これは、恐らく賃上げにもあてはまる。賃上げで純利益が減った場合、内部留保から持ち出しをして配当性向を上げることで、株主離れを防ぐことが可能だ。
おわりに
賃上げは企業にとってなにもいいことがない、という話しから考えてみた。やはり、企業を守るために賃金を抑えるという考え方は、今の時代には合わなくなっているのではないだろうか。
労働人口が確実に減るこの国で、どれほど時代が進んでも、はやり企業にいて欲しいのは、やりがいを持って活き活きと働く人の姿だ。人のパワーは計り知れない。すべてがDX化されたとて、まだまだ人のアイディアには及ばない。そう、人こそが企業の財産であり、未来であるとわたしは考える。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
※スタエフでもお話ししています。
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