笑いの不思議
昨夜、文学サークルで「笑う」をテーマに話しをしました。心理学からMIまで、幅広い本の紹介と、意見の交換がありました。
この「笑う」は、考えてみるとかなり高度な技だと思うのです。言葉があって、想像力が働いて、一つの現象を認識して、初めてプ~と笑いだしたり、ガハハハッとなります。そして、それが共有された時、瞬発的に笑が起こったりします。
その笑いで印象に残る思い出があります。
20数年前の出来事です。
アジアのリゾートのプールでのこと、娘と同じ年頃の女の子が2人、娘と楽しそうに泳ぎ始めたのです。聞けば北欧から遊びに来ていると言います。
その3人を、わたしはプールに足入れたまま、座って眺めていました。
ところが、その北欧の小さな少女が、わたしに向かって、
「どうしてあなたはわたしを笑うの?」
と、聞いたのです。
驚きました。
確かにわたしは笑っていました。と言うより、子どもたちの様子を眺めて微笑んでいたはずです。わたしは、思いがけないストレートな質問にたじろぎつつ、
「あなたを笑ってはいないわ。楽しいだけよ」
と答えたのです。
それから、月日が流れ、わたしは現在90歳の母と8年程前から暮らしはじめています。
その母に、わたしは何度か言ったことがあるのです。
「どうして、そこで笑うの?」
と。
母は、よく大きな声で笑います。
ところが、時に、それが引っかかるのです。
え?なに?なぜここで笑うの?と嫌な気分になるのです。
一見すると分かりにくいのですが、よくよく考えてみると、わたしが引っかかる母の笑い声は、恐らく母が気まずい時に上げる笑い声なのです。
それが、わたしには癇に障るのです。
そんなやり取りをした時、あの北欧の少女の言葉を思い出したのです。
日本には笑ってごまかすという言葉があります。
恐らく、海外ではそれは逆効果なのではないでしょうか。
そして、わたし自身も、かつて母と同じような感覚を身につけていた時があったのです。なにしろ、母の娘ですから笑。
笑ってごまかす、ここに一度気が付くと、気になります。
「ねえ、どうしてそこで笑ったの?」
と聞きたくなるのです。
と言っても、家族にしか聞きませんけれど笑。
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