夫の誕生日を、いい時も、いい時じゃない時も祝ってきて
数日前、夫の誕生日だった。その日の朝、
「今夜なに食べたい?」
と尋ねると、
「中華丼が食べたい!」
と即答だった。肉でも魚でもなく中華丼、ふむふむ、ならばと美味しい中華丼を作った。
そして、今日は朝から、夫が欲しがっていた小さなポーチを探しにデパートへ向かった。夫の欲しいものは、わたしには探せない。彼はこだわりが強い。どこが違うんだろう?と思うのだけれど、夫にとってのベストがいずれの物にも絶対にある。
そのデパートで一旦夫と別れ、1時間後、待ち合わせ場所へいってみると夫がダウンしている。エレベーター乗り場のソファで熟睡している。こんなことは初めてだ。
今年の夏は恐ろしく暑かった。夏バテなのだろうか。
しかも、わたしは朝早くから彼を引っ張り回してしまった。デパートに着くまでに、すでに大汗をかいてクタクタだった。小さな用でも、場所が異なるだけで、東京ってところは階段も含めてやたらと歩く。まあ、だからこそ、運動もかねて歩いているのだけれど。それでも暑すぎる。
あまりに深く眠っているので起こせなくなった。仕方がないので、わたしは隣に座ってスマホでメールの返信などをして夫を待った。運よく人も来ない。それから一時間ちょっと待っただろうか、夫がふと目を覚ました。
こんなふうに、人は急激に老いていくのだろうかと思っていたら、なんのことはない、昼間の蕎麦屋のビールが効いたのだという。確かに、いくら暑いとはいえ、お昼から夫はビールをグビグビ飲んでいた。
目が覚めると、夫はスッキリとした顔で動き出した。心配していたというのに、呑気な人だ。
それから夫のこだわりのポーチを誕生日プレゼントに購入して、和食の店へ向かった。
この店は我が家は普段はランチだ。夜はとてもじゃないけれど手が出ない。だからスペシャルの誕生日祝いに選ぶ。
まずは、軽く乾杯して、お刺身を。
すべてプリップリの絶品だった。
続いて海老真丈。
これはもう、文句なしの味わい。
この店は京料理の店だ。
それにしてもこの味わい。日本人に生まれてよかったと思う。
と、美味しくいただいていると、人が入ってきた。店内には既にわたしたちを入れて3組の客が入っている。
そこへ、4組目の客登場。海老真丈をすすりながら、チラリとみると、むむむ、どこかでお見掛けした方だ、と思った途端、あ!と小さく声が出た。
最近、政治の話をするようになったからだろうか、政界を引退された有名な元政治家ご夫婦だった。しかもお隣に座られた。すると、店員が手馴れた感じで対応されていて、メニューにない品をどんどん注文されている。どうやらその店には頻繁にこられている模様。
夫の誕生日に大奮発して訪れたこの店に、頻繁に来られるご夫婦。人の人生ってやっぱりいろいろで興味深いなあと思う。
それでも、誰も騒がずそれぞれ楽しく食事をした。ちょっと驚くようなお酒の名前が聞こえた時には、さすがに凄いな~と思ったけれど。夫はお昼にビールを飲み過ぎでダウンしているため、もう飲まないだろうと思っていたら、そんなことはない。
まあ、誕生日だしね。
そして、お食事も美味しいしね。
そういえば、今朝、起業のご相談をしたことがある方に、以前たのんでいた書類をいただきにあがった。そこで、問われた。
「どうですか?」
と。上手く行っているのかということだろう。そこでわたしは、
「良かったり良くなかったりの繰り返しです。でも、なんとか前に向かって進んでいます。」
と正直にお答えした。すると、
「それならいい。上手く行っているばかりだと、危ないですよ」
と言われた。こんな時に人って面白いと感動してしまう。思ってもいなかった言葉をこうして頂けるのだから。
本当に、この一月半、良いことも悪いこともあった嵐のような日々だった。もう辞めちゃおうかなと思ったことが何度もあった。そして、わたしたち夫婦も、良かったり悪かったりを繰り返し、34年も一緒に居る。それが悪くないってことなのか、と思った。
それから、
「人にはどんどん会いに行って下さいよ。待ってちゃ駄目です。どんどん会いに行くのがいいんですよ。進んで会った人とはいいご縁だってできますからね」
とも言われた。
これも面白い。
わたしにとって、起業だけは全くの初めてだ。けれど、外に立っている企業人の話はいつだって面白い。きっと相当にご苦労もされてきたのだろう。
そうそう、わたしたちは、どんなに嫌になった時にも、こうして互いの誕生日を祝ってきた。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
※スタエフでもお話ししています。
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