リハにならないリハ
私が所属していたコーラス部の活動の中で、
1年間の中の最も大きなイベントの一つが、文化祭のステージだった。
普段活動を見てもらうことのない同級生や保護者、一般の方々に演奏を披露することができる機会というのはもちろん、
高3の先輩が引退し、代替わりをするという節目のイベントでもあった。
そんな文化祭の準備の中で、毎年不満に思っていたことがある。
それは、リハーサルが、リハーサルにならないということだ。
どういうことかと言うと、
文化祭の準備期間中、本番の立ち位置やマイクの位置、伴奏などを確認するために
本番を行う体育館で、リハーサルが3回ほど設けられているのだけれど、
リハーサル中、体育館では運動部がいつも通り部活をしているのだ。
バスケットボールのどん、どんという音や、
バレーボール部の掛け声が響く中、
マイクの音量の調整なんて上手くいくはずがなく、
何なら曲の途中の指示も満足に聞こえない。
と言いつつ、運動部に不満があったわけではない。
運動部の皆さんだって、勝手に歌い始められて、たいそう気が散っていたことだろう。
あのリハーサルは、誰にとっても満足がいかないリハーサルだった。
そうは言っても、仕方ないのだ。
運動部に別の場所で練習して下さいと言ったって、場所がないし、
じゃあリハの時間をずらそうかと思っても、下校時刻が決まっているので運動部の活動時間を避けて行うことはできない。
折り合いをつけるしか、ないのだ。
社会には、そういうふうに、
どうしようもないことを受け入れて折り合いをつけて、その中で最大限にできることを考えなければならない時が多々ある。
あの、誰も得をしないリハは、そんな世の中の理を教えてくれた出来事だったと考えることにしている。