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アイデア工場に潜入&図解 寄藤文平『絵と言葉の一研究』

友人とミナペルホネンの展覧会に行ったときのこと。「こういうアイデアどうやって思いつくんだろうねえ」って、ふたりでぶつぶつため息をついた。

あたまのいい人の、あたまのなかって見てみたいじゃないですか。
とくに、どうやってアイデアが生まれてくるのか、その過程を見てみたいじゃないですか。
しかも、概念的な言葉じゃなくて、ビジュアルで見せてもらえたら最高じゃないですか。

ということで、あったわ、そういう本が。寄藤文平さんのアタマのなかを輪切りにしたような本!たぶん、21_21 DESGIN SIGHTとか好きな人、大好きだと思う。

この本は、2012年、寄藤文平さんがご自身の仕事をふりかえる展覧会を開催するにあたってまとめた自己マニュアルのようなもの。
どうしてこの寄藤タッチの絵と言葉のイラストに至ったのか、人生クロニクルをひもといて考えたり、実際の制作ではどんなふうにプロトタイプをつくるのか再現したり。
あれですね、スポーツ選手が自分の試合映像を見ながら、自分で解説しているような贅沢さですね。


圧巻なのは、第4章「本と装丁」
もうすでに出版されている『千利休―無言の前衛』(赤瀬川原平著、岩波新書)を例に、30もの表紙案が考え方とともに陳列されている。30ですよ、30。

あたりまえだけど、表紙の発想方法も多様なんですよね。
ここに挙がっているのだと…

1)タイトルから絵を考える
・「無言の千利休が、前衛=崖のキワにいる」とか
・「『無言の前衛』の反対語、『有言の後衛』を想像してみる」とか

2)茶の世界から絵を考える
・千利休〜お茶〜お茶道具〜茶碗、茶筅、釜と連想して、茶道具のイラストを配してみる、
・千利休〜切腹と連想して、日本刀のイラストとあわせてみるとか
・本の表紙に「にじり口」風のイラストをあしらうとか、二畳の茶室のレイアウトをイラスト化してみるとか

3)絵のエピソードから考える
・切腹のきっかけとなった木像を配する
・小さいことを喜ぶ日本的感性を象徴するため、マイクロチップのうえにミニチュア利休を載せてみる

4)「前衛」を形にする
・丸でもなく四角でもなく、角丸の新しい形をつくるとか
・タイトル文字をバラバラに配置して、何が書いてあるのかわからなくするとか
・タイトル文字を見切れされて、デザインで前衛を表現するとか

5)本の原義に立ち返る
・あえてタイトルと著者名を中心におくだけ
・むしろ表紙を白紙にして、各自で書き込む式にする

ちょっと抜き書きしすぎたけど、多様でしょう。まだまだあるんですよ。これを実際にビジュアルとして見せられると、いいモノってポッと出ではなくて、広い裾野があって初めて頂上に押し出されてくるものなんだなあと感じる。あのデザイン30連打を見るだけでも一読の価値あり。

うめざわ
*この本、21_21でいまやってる「マル秘展」に近い気がする。行きたいなあ。http://www.2121designsight.jp/program/inspiration/index.html

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