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精神科入院4ヶ月目(日記④)

曖昧な気持ちのまま、適当に飛び降りた日から、私の適当な気持ちとは反して、日常生活が大きく変わってしまった。

集中治療室から全てがスタートし、そのあとはずっと精神科。骨折なのに精神科?と思うだろうが、病院自体が整形外科専門の病院なので、整形外科(精神科部門)的な感じだった。

最初は目が開かないし動くことができないので、ほぼ眠っている状態で軽く身体を触れてもらう程度のリハビリからスタートしたのだが、だんだんと足を動かせるようになり、今では階段の登り降りなど余裕でできるようになった。

ただ膝立てはまだ痛いし、普通に歩くだけでも膝が痛む。

顔はおでこの傷と全体的なくぼみと、それから涙袋のヒアルロン酸部分に入ってしまい、分解されていない血液以外はほとんど元の通りになり、
飛び降りて顔面から落ちた人間であるということをわざわざ言わなければ気づかれないようになった。

ただ、ご飯を食べている最中に顎の痛みを感じることもまだあり、あの日の出来事は悪夢ではなく現実だったんだなと再確認させられる。

おでこから顔の骨らに外力が伝播していき、
骨が満遍なく綺麗に砕け散ったおかげで、今の私は過去の私と同じ私でいられる。

もしおでこだけに全ての外力が集中していたら、
私の脳は確実に大きな損傷を受けていたと思う。

前頭葉は、思考、性格、感情などを司る部分であり、そこに障害が生じていたら、私なのに私ではない誰かに成り果ててしまうらしい。

死ぬことができていればオッケーだが、"生きているのに別人"は耐えられない。

甘えたことばかり言っていると思う。

私は運が良かった。だから失ったものは味覚と感覚だけで。

ただ、味覚があまりないのはやはりとても辛くて、好きな食べ物の味をもう2度とちゃんと感じられないのが残念だが、自業自得だし、最近はもう"そういうの"も受け入れられつつある。

入院で何もせず何も考えなかったおかげなのかもしれない。


それとは別の話になるのだが、4ヶ月も入院しているせいで家を失った。

実家は存在するけれど帰れないし、でもアパートは引き払わないといけなかったので、退去した。帰る場所がない。
孤独だし怖い。near homeless だ。

実際、もう病院が家のようになってきている。

他の病院の診察を受けに行く前に、「必ず帰るんだよ。辛いことがあったら帰る日じゃなくてもいいから、すぐに病院に戻ってくるんだよ。」と先生に言われた。

自分の世界の中心が病院に推移しているのを感じた。



閉鎖病棟なので外に出られない。
少しだけ開く窓に顔をはめて外の匂いを嗅ぐと、知らない間に秋の匂いがするようになっていた。

院内は気温の変化がないので気が付かなかったのだが、季節はちゃんと進んでいるのだな、と感じた。

4ヶ月分の季節。梅雨入り前に入院をしたので、梅雨と夏を飛ばした。
夏に着ようと思って買った服はきっと埃をかぶっている。
夏に会おうと思っていた友達との約束は果たされないまま。

みんな私のことを忘れていたらどうしよう。

秋服も買っていたけれど、出番はなさそうだ。

退院の話もいまだに出ていないし、今のまま退院できないのは自分が1番わかっている。

パニック発作、フラッシュバック、解離、抑うつ、それらがまだまだ私の中で盛んに騒ぎたてている。

この間は寝ている間に暴れていたみたいで、ベッドの柵で頭を打った痛みで目が覚めた。

いつになったら私の症状は治るのだろうか。
この地獄のトンネルを抜けられる日はくるのか。

不安だ。出口のないトンネルだってこの世にはきっとあるだろうし、止まない雨もある、底がない沼もある。

私の地獄がそれらに該当していたら嫌だなぁ、私の地獄には出口があって、雨が止んで、沼には底があって欲しい。

そう願うことしかできない。


もうすぐ誕生日がやってくる。
その日、私はどこにいるのだろう。
病院だったら嫌だな。病院で迎える誕生日。
ケーキなんて食べられないからきっと楽しくないだろう。
でもその日までに元気になる未来も見えない。
その日までに住む家が見つかる未来も見えない。
うんざりする。
入院して4ヶ月目の感情はとにかく"うんざり"。

早く、出口をみつけたい。


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