三江線の旅(1)
春だ!
青春18きっぷだ!
どっか行くぞ!!
……と意気込んでいた矢先、ある人と知り合います。
Kさんという男性なのですが、この方はEさん(坂本ケーブルに一緒に行ってくれたお姉さん)の職場の上司にあたる方です。
とはいえ、いかにも上司的な堅苦しさもなく、普通の気のいいおっちゃん。そしてこのKさんは子どもの頃からガチガチのテツであり、私とKさんを組み合わせると鉄道トークが止まらなくなります。
この年は2018年。3月いっぱいで三江線の廃止が決まっています。
こりゃもう生きているうちに乗りに行かなあかん。
しかし、極限に本数も少ないし、廃止間際のお祭り騒ぎで激込みかもしれません。
素人の私にはちょっと不安が残ります。
で、Kさんに同伴してもらうことになったのでした。
Kさんはプランニングの魔術師であり、段取りファンタジスタであり、気遣いの鬼でもあります。
出発日が決まるや否や、電光石火のスピードで三江線計画を練ってくれました。
とても心強いです。Kさんについてきてもらえばなんとかなるでしょう。
三江線といえば、牛山さんの著書に登場した秘境駅・長谷があります。
ここには絶対に降りたい! のですが、長谷に停まる列車は三好方向行きが2本、江津方向行きが3本。上りと下りを合わせて、一日たったの5本です。
しかしプランニングの魔術師であるKさんは、三次駅から歩くことによって粟屋、長谷の2駅制覇を可能にしたのでした。
というわけで、三次駅を出たらせっせと歩きます。
歩いて、歩いて、どんどん人の気配が消えてゆきます。
「お店ないね」
「自販機すらなくなってきましたね」
コンビニぐらいあってもよさそうなものなのに、と二人で話しながら歩きますが、そもそも人家が極端に少ないので、コンビニを作っても採算をとるのは難しそうです。
通り沿いに古びた小さなアパートがあります。
「Kさん、あのアパートは家賃どのぐらいでしょうね」
「うーん……タダでもちょっとなぁ」
あまりにもなにもないので、この不便さを埋め合わせるには家賃をどれだけ下げればいいのだろうか? などと、考えても仕方のないことを考えてしまいます。
3月の上旬でしたが、よく晴れており、歩いていると汗が出てくるぐらいの心地よい陽気です。
やはり同伴者がいると気も紛れてあっという間に歩けてしまいました。
粟屋駅です!
待合には「さよなら三江線 63年間ありがとう」
の横断幕が。ベンチには座布団が用意され、花が飾られています。
地元の方が大事に駅を守ってくださっているのでしょう。
ああ。本当になくなっちゃうんだなぁ。
1駅2駅の廃止ではなく、三江線という長大な路線がまるっと消えるのですから、これは一大事です。
写真を撮って駅ノートをすこし手繰って、気がすんだらまた出発。
今度は長谷に向かって進みます!
(つづく)