BURN THE WHICHのすさまじい衝撃
「おとぎ話なんかクソでしょ」
美少女が言った、この衝撃の一言から物語は始まります。
おとぎ話というのは、プリンセスや主人公たちが魔法をかけられ、王子様と素敵な出会いをして……そんな物語が多いですよね。多くの女の子はそういったプリンセスたちにあこがれます。
しかし、彼女は続けて言います。なぜ魔法が解けるのか。時間を過ぎたり、約束を破ったりしたから、だからしょうがない。
「しょうがなくない」
当たり前だと思っていた魔法が解ける時間。しょうがないよねそういうものだからね。という僕に、彼女の言った「しょうがなくない」という言葉が突き刺さりました。
でもどうしてしょうがなくないのか? だってそういうものじゃん! そう言い返したくなります。
「あんたたちはみんなバカばっかり」
「誰も魔法が解ける本当の理由なんかわかってない」
魔法が解ける本当の理由……? 一体それはなんなのだろう。
ここで僕の気持ちはわしづかみにされました。
「バカしか魔法にかかんないなら あたしは魔法をかける側がいい」
そうして物語の幕が開きます。
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BLEACH
みなさん、BLEACHという漫画を知っていますか?
ジャンプで連載していた久保帯人先生による大人気漫画です。
ど真ん中世代です(宣言)
僕は当時、小学生。ブームの真ん中にいました。
そんなブリーチも連載が終了して数年。久保先生による読み切りがジャンプ本誌に掲載されます。
それが「BURN THE WHICH」。
僕たちもよく知るロンドンという街。は実は表の世界で、裏のロンドン「リバースロンドン」という世界を舞台にした現代ファンタジーです。
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ストーリー
おおまかな話の内容はこうです。
空想上の生き物とされているドラゴン。ですが、今なおドラゴンは存在しており、その被害を受けている人々がたくさんいます。
それを対処できるのは魔女だけで、魔女たちを属し、ドラゴンの保護、退治を目的とする組織ウイングバインドが日夜仕事にあたっています。
そこに属する2人の少女が個人個人の目標を達成するために仕事に励む(?)そんなお話です。
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時代による新しいジャンル
週刊少年ジャンプは少年向けに作られた雑誌です。
当然、女性ファンもたくさんいますが、あくまで原則的には少年たちへ向けた作品が多いのです。
しかし時代は今。ハリウッドでもそうですが、男女に優位はなく、誰が主人公でもいいじゃない! そんな時代です。
そしてこのジャンプでも少女2人を主人公とした物語が誕生したわけです。
「BURN THE WHICH」
かなりびっくりしました。ありそうでなかったような感じです。
もちろん女性が主人公というのがなかったわけではないと思います。
僕が好きな脳噛探偵ネウロだって、主人公は女性です。
しかし、ここまで女性主人公に徹する作品というのは少年誌においてかなり珍しい例だと言えます。
少しだけネタバレをします。
おとぎ話なんかクソでしょ。
主人公が言った、この言葉から始まった物語。
終盤で再度しっかり口からこの言葉を言います。そして続けて、
「あんな途中で解ける魔法のどこがいいの」
と吐露します。おとぎ話なんかクソでしょ、の言葉から察せるように、かなり腹立たしさが伝わってきます。
そしてどうして魔法が解けるのか、その理由を口にします。
「あんたも誰も 魔法が解ける本当の理由なんかわかってない」
「魔法が途中で解けるのは それが自分の力じゃないからよ」
返す言葉がないですね。
与えられたものは自分の力ではない。だからそれにあこがれる人間が嫌いなのでしょう。自分が魔法をかける側がいい、というのはこの世界において努力の上でしかなり得ないわけです。
僕はこの一連の流れにとても衝撃を受けました。
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少年誌における女性主人公とは
友情、努力、勝利。
ジャンプの三大原則です。
ジャンプ主人公というのは常に前向きで仲間思いで、そして強敵を倒すために努力します。
それをただ女性に置き換えるだけでは、外見以外、なんの違いもありません。
真に女性を主人公にするならば、女性が共感できる事柄が必要であり、思考もそれに沿わなければダメだと思います。
おそらくですが、おとぎ話にあこがれた男性は少ないでしょう。しかし女性だとその比率は逆転するでしょう。
男性向けに多いのは「子供のころヒーローにあこがれてた」みたいなのが多いですよね。
ただ性別を入れ替えて、女性だけどヒーローにあこがれていて~とするのではなく、きちんと共感の得やすい「おとぎ話」を根底にしていたのが僕の中では衝撃でした。あるようでなかった作品の形だと思いました。
しかしそれだけでは少年誌に連載するにはそぐわないのです。
女性に共感を得るだけならば「週刊少年ジャンプ」で掲載する必要がありません。
主人公が言ったこの言葉、
「魔法が途中で解けるのは それが自分の力じゃないからよ」
この台詞で、主人公が努力家なのが伝わるかと思います。
あくまで女性が共感できる「おとぎ話」を中心に置きつつ、ジャンプ主人公のどんなときでも敵に背を向けないというのが成立しているんですね。
努力してるからこそ勝てると思う、努力の裏打ちというやつですね。
女性主体であってもジャンプ主人公をきっちり成立させるのは新しいし、シンプルにすごいです。
正直、この主人公は負けん気が強いだけの可能性もちょっぴりありますが……(笑)
またそこから名付けたメルヒェンズ(童話竜)というおとぎ話の名を冠したドラゴンというのが登場するのですが、それもしゃれてますよね。
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感想
掴みはばっちりでした。
しかし、舞台であるリバースロンドンの設定(説明)が多く、正直なところ前半部分は少し退屈に感じる部分もありました。
アンケート至上主義のジャンプでは、各週、常に面白い物語が求められますが、今作は4話限定連載という形式上、全体を通して面白いと言える作品だったように思います。
しかし色々と衝撃があった作品でした。
現在は一部の映画館、もしくはAmazonプライムでアニメが見られます。
単行本も発売中です。よかったら、ぜひ見てみてください。
女性が共感できるとか偉そうに言っていて、僕は男なので本当にそうかはわかりません。すいません。
でもおすすめはおすすめなので! はい! 本当に! ぜひ見てみてください!