映画『累』で驚愕すべきWヒロイン~『累』感想①

映画『累』がすごく良かった。

いくつかの記事で語られているように思いますが、土屋太鳳と芳根京子のWヒロインが、これほどまでに強烈な印象を残すとは思いもしませんでした。いや、こういうストーリーだし、予告編からも予想はしていたし期待もしていたんですが、それを裏切らないどころか超越してしまった。
本編まさに二人に釘付け。

土屋太鳳と芳根京子といえば、どちらも朝ドラヒロイン経験者で、いわゆる「清純派」のイメージがある二人。土屋太鳳に関しては、出演作品を見ても、純朴で真っ直ぐで、そのビジュアルに相応しいキレイな主人公を演じることが多かったように思います。キラキラ青春映画の常連(ともすれば飽きるくらい出演している感じ)。芳根京子についても、大人しい、妹キャラ、マジメな新人、そんな風なイメージのある出演作が多い。
だからこそ、役幅を大きく広げた本作でのブレイクスルーは、重要だと思うのです。

最近、『銀魂』『斉木楠生』の橋本環奈や、『SUNNY』での広瀬すず、ドラマ「探偵が早すぎる」の広瀬アリス、『センセイ君主』の浜辺美波など、若手女優はコメディを中心に「変顔」でイメージを覆し、話題性を作ることが多いように感じます。少し前だと、『ヒロイン失格』の桐谷美玲なんかも印象的ですね。

その一方で、ダークな一面、ヘビーな一面で凄みを出せるかというところは、役幅という意味でもう一つの軸であるように思っています。
「役者の新たな一面」というのは、どんな役者を観ていても楽しいものです。

そういう意味では、広瀬すずは言わずもがな、『怒り』『三度目の殺人』など、アカデミー賞助演女優賞などの実績がある通り、そういった演技には定評があるように思います。彼女に関しては、次はどんな表情を見せてくれるのか、毎回楽しみな女優です。

そういった意味で、土屋太鳳はかなりフラストレーション的なものがありました。キラキラ系への連続出演、テレビで観ないシーズンはないほどの出演数の中で、「違う側面を観たい」と思っていました。
芳根京子に関しても、前述したように大人しい、純粋なイメージがある中です。それに、彼女の持ち味は、「抑え込まれた感情の表現」だと思っていたので、本作の役柄的にもかなり期待をしていました。
(ちなみに、『わさび』という短編の芳根京子は是非観てみて欲しいです!)

そこで、本作『累』です。

土屋太鳳の目と声色に、
芳根京子の叫びに、何度痺れたことでしょうか。

土屋太鳳は、体育系出身の持ち前の身体性を大いに発揮しています。劇中クライマックスとなる「七つのヴェールの踊り」で我々を存分に酔わせてくれます。直近ではチアダンスを披露していましたが、それまでにもSiaの『アライヴ』日本版MV、紅白やFNSなどの音楽番組でダンスを披露してきた経験が、ここに結実しているかのよう。
そして、ニナと累を見事に演じ分ける技術とでもいうのか、憑依の演技で魅せるオーディションや舞台シーンは目を離せません。ここまで演技力あったのかと、正直びっくりしました。さすがに、伊達に起用されてないですね…。

芳根京子は、序盤からかなり迫力をきかせた演技をしています。彼女の叫びは、心の底から響いてくるかのようです。
本作のキャッチコピーにもなっている「教えてあげる。劣等感ってやつを」。
このセリフが出てくる時点では、序盤ということもあり、「待ってました」感に過ぎないのですが、
「この顔になって骨の髄まで分かったはずよ! どうしようもない劣等感ってやつが!!」
というセリフを放つ彼女に至った時、私は痺れ、涙さえも滲んでしまいました。
このセリフ、本予告でも使われていますが、劇場で観た・聞いたその叫びに、私はやられてしまった。
さらにそこで終わらず、ラストの彼女の表情も、忘れられない。

印象として、前半は土屋太鳳に驚くことが多かったように思います。つまり土屋太鳳がスゴイ。しかし後半にかけて、芳根京子の演技がどんどん良くなってきて、クライマックスの最終盤ではまさに演技合戦。激突する二人の迫力に絶句。表情一つ見落とせない。
これを映画館で目撃しないと、勿体ないことこの上ない…!

正直東宝配給作品として興行的にはかなり厳しく、残念な結果になってしまっているようで、封切りから一ヶ月が経った今、観られる時間帯は少ないのですが、…観られるうちに、観て欲しい。

ここまで主演の二人について滔々と好きなように語ってしまいました。

続きは感想②へ持ち越すこととします。

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