映画『累』には実写映画としてのパワーがある~『累』感想②

感想①で、『累』主演の二人の演技について滔々と語ってしまったわけですが、それというのも、この作品のテーマ的に、実写映画で実際の女優が演じる・演じ分けるというのが非常に効果的なんじゃないかなと感じるわけです。
あ、ちなみに原作漫画は未読です、、

つまり、「顔を奪って演じる・人生を乗っ取る」ということ。
そんなことがテーマの作品に、マンガではない、実写という物質性・身体性・肉体性が加わったら、どうなるのか。

①では土屋太鳳の「七つのヴェールの踊り」に触れましたが、彼女が実際に躍ってみせているということを始め、芳根京子が表情筋を使って顔を作って、喉を使って声を上げているということ、浅野忠信に髪の毛を掴まれて、鏡に押し付けられているということ…そして何より、幾度となく重なる、くちびる。

そういったビジュアルが訴えてくる無言のメッセージが、実写映画にはある。

マンガ実写化で興行的にも成功した『るろうに剣心』(大友啓史監督)シリーズでも、佐藤健が殺陣をするときに、滴る汗や、それにへばりつく髪の毛が、肉体的な迫力を生んでいるというような話を聞いた覚えがあります(監督がインタビューか何かで語っていたかな?うろ覚えです)。
あるいは、『ちはやふる』(小泉徳宏監督)シリーズでも、『上の句』の決勝シーンのスロー撮影で広瀬すずが天才的に流した涙。これを言っていたのは小泉監督だったか、北島プロデューサーだったかは、これまたうろ覚えですが。

そんな風に、意図はしなくても映ってしまったもの、出てしまった演技、そういったものが映り込んでいるのが実写映画の良さの一つだと思います。
この『累』にも、それは存分にあるように思います。例えばパンフに寄せた佐藤監督のコメントでも、芳根京子の反射的・直感的な演技力については触れられていました。また、後半早々に土屋太鳳が涙を流すシーンについても。そういった魅力も、実写化の良いところ。

土屋太鳳の踊りに、芳根京子の叫びに、入れ替わる二人に、私が衝撃を受けるのも、実写というエネルギーがあったからだと思います。生身の二人が、劇中だけでなく、現実においても競い合った結果の産物。
二人が、この時期にこの作品でやりあったことは、かけがえのない財産になるんじゃないか。

だからこんな作品の実写映画に出演して力を発揮した二人を観ることができて、素直に嬉しい。
そんな風に思います。

そしてcdbさんがTwitterでいつもの如く素晴らしいレビューを書かれていますので、きっとそちらをご覧になった方が良いかと思います。笑
(ほんと視点といい文章といい、巧い方ですよね...)

感想③へ続きます。最後は「余韻」の話。

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