多羽(オオバ)くんへの手紙 ─1─
初夏の陽射しに少し汗が滲む。
「夏服・冬服どっちを着てもいいよ」という衣替え猶予期間の今は
冬のセーラー服、学ラン、夏の白ブラウスが交じり合う。
私 –– 羽田水澄 ––
はサッサと夏服に衣替え済みだ。
だが中学生男子はカッコつけたい、イキリたい生き物のようだ。
暑さを我慢しギリギリまで、冬服の学ランを着る。
見ている方は暑苦しいが当人たちにしか分からないポリシーがあるのだろう。
グラウンドで遊んでいる他の生徒を眺めながら、休憩時間をぼんやりと過ごしていた。目で追うほど好意