5月11日の授業参観記録
金曜日に、ありがたいことに5名の大学院生の皆さんが、半日間授業を見学に来てくれました。 1時間目に社会科の授業で、治安維持法について。2時間目はふりかえり。4時間目は、道徳での哲学対話、はじめて本質観取にチャレンジしてみました。 大学院生のSさんからいただいたフィードバックから、昨夜いろいろ考えたので、掲載許可をいただいて掲載し、少し思ったことを書き残しておきます。 ——————————
【感想】 今回の授業では、概念を自分の中に落とすという重要性と、そのための哲学の重要性について考えていた。 生徒たちにとって、治安維持法の制定理由を考える際のとっかかりは、当時大正デモクラシー(民主主義)の思想が広まったこと、そして普通選挙法ができたこと、しかし同時期に社会主義や共産主義を警戒し治安維持法ができた(アメとムチ)、という先生の説明であろう。ここでは、「民主主義」「社会主義」「共産主義」という、教科書でも当たり前のように使われているが、そうは言ってもいまいち生徒たち自身の中に落ちていないであろう言葉が並ぶ。このあたりも、今日出た「問いのフィット感」に関わってくるひとつのポイントのように思う。問いに向かう材料がぼんやりとした概念だと、自分の経験や文脈で考えにくく、やはり難しそうというのが印象だ。発表のときに「国の成長が止まっちゃう」といったグループはさらに「資本主義」とも結びつけ、比較していたと考えられる。これらの一言では説明しがたい、自分でもいざ生徒に聞かれたら困ってしまうような概念を前にして生徒たちは歴史を学んでいるのだと思うと目が回るような気分になった。 これらの概念を自分の中に落とすには、やはり哲学が必要だなと感じた。これら全ては人々がより生きやすい社会をつくろうとする哲学から生まれた知恵であり、しかしそれにはメリットとデメリットがあることを歴史は教えてくれた。それを知った(ただ知識として知るだけではなく、自己や他者との対話を通して哲学する経験があってこそだろう)うえで、さらに私たちはより良い社会を目指し、つくっていくことになる。そう考えると、4時間目の哲学対話も、1時間目の授業と繋がっているように感じられた。1時間目に先生が話し合いの途中で投げかけた「平等ってダメなのかな?」という問い、4時間目に「幸せ」について対話し合う中で生徒たちのホワイトボードに書かれた「自由」という言葉、「この「自由」と「平等」を考えることすなわち民主主義を考えることじゃないか!」と最後の方は一人で興奮していた。今日の生徒たちの哲学対話で出した考えは、これからどんなテーマの対話にも派生していけるような、その最初のスタートを見たような、そんなワクワク感を感じた。 【その他】(メモってあったことを箇条書きで書きます) ・朝学活での生徒たちの笑顔が印象的。 ・先生の自作プリント(スライド?)が見やすくてわかりやすい。(絵って強みのひとつ!) ・治安維持法の制定について「先生がわからないのに俺らがわかるわけねぇじゃん」といっていた生徒。教師も学習者として一緒に学ぶという構図は、教師が問いを投げかけている場合は難しいのかもしれない。考える時間、期間が短いとなおさら。 ・ミニWB前に貼るやり方。自分の中のトラウマ。一般解のない問いを扱うときに適しているのかも。 ・問いがハマっていた生徒の班、見たかった。 ・「シャケ」の例がわかりやすく、経験と言葉の意味という関係がストンと落ちてきた。 ・「幸せ=お金」で笑いが起こる。僕も笑ったし、よくある光景。だが、よくよく考えてみると、僕らの中に「お金は必要だし、ほしいけど、求めすぎるといやらしく感じる」というような共通の感覚があるのだなと思った。これも経験から得た言葉の意味のひとつ。 ・対話に参加していない生徒がいない。衝撃。日々の積み重ねの賜物か。 ———————————-
自分では、ここまで分析できないし、気づかないことばかりなので、とても嬉しかったです。今回の治安維持法の授業が、いまいち進まなかったのは、問いの問題でもあるけれども、概念として子どもたちの理解が曖昧なものを、扱っていたということは、なるほどなぁ、と思いました。一緒に子どもたちといろんなことを探究していきたいのもあるのだけれど、子どもたちが日々身につけて来た学習スタイルは、やはり受け身で、、、。だから、先生が分からないなら、無理だ。みたいなことになってしまうのかなぁと。ここは、なんとか一皮むけたいところだと感じています。社会科って、常に、「あなたはどうやって幸せな社会を生きますか?あなたはどうやって幸せな社会を作りますか?」ということを、問う必要がある教科だと思っています。だからこそ、哲学対話を、クラスの道徳だけでなく、社会の他クラスでも授業で哲学できる力をつけることが、子どもたちの公民的資質が身についていくのかなぁと思います。 来ていただいた皆さんに感謝。 対話型授業検討会で、1時間みっちり考えました。
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