見出し画像

【ゲーム感想文】『ARMORED CORE Ⅵ』~シリーズほぼ未経験者がルビコンの火になるまで~


評価:★★★★★

『ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON』(AC6)の1周目をクリアーしました。
初代プレイステーションの頃から続くロボットアクションゲームの代名詞であり、何故かネットミームとして定着し、そして10年ぶりの新作と言う事で今もなお未曾有の盛り上がりを見せる本作ですが、シリーズほぼ未経験者の自分でも『アーマード・コア最高!』と叫びたくなるくらい、熱くて面白いロボットアクションゲームでした。

ちなみに「ほぼ」未経験者と言うのは、初代AC、AC2、AC3はプレイ済みで、AC5は友人が遊んでいるのを見ていたので、自分は全くの新人ではありません。
とは言え、実際に遊んだシリーズは序盤のミッションの時点で「難しすぎる」と諦めてしまい、AC5に至っては「こんなんゲームが下手な奴が手を出して良い作品やないで……」と思いながら見ていたので、知識だけあるド素人と言ったほうが適切かもしれませんね。

しかし――本作AC6は、そんな自分の黒歴史や苦手意識をあっさり捨てさせて、ロボットアクションゲームの醍醐味を、最高の映像と最高のロールプレイで提供してくれる傑作に仕上がっていました。
もちろん難易度はかなり高いので、一つ一つのミッションやボスに何度も挑んではブッ殺されると言う、トライアル&エラーの積み重ねでしたが、それすら楽しめたという事で、本作を5点満点の「文句なしの傑作・名作」と評価しました。



アーマード・コアはガンダムである


……などと書くと各方面からお叱りを受けそうな気がしますが、ここで言う「ガンダム」とは「物語中の既存の技術体系で造られた、存在自体がスペシャルな機体」とでも思ってください。
AC6では様々な人型兵器が登場しますが、その中でもアーマード・コア(AC)は特別な人型兵器です。
凄まじい機動性と汎用性を誇り、圧倒的な火力と豊富な武装で、無数の人型兵器群や、戦術級の大型(トンデモ)兵器に宇宙戦艦まで単騎でバカスカ墜としていく様は、正になんとかの白い悪魔。

更に機体だけでなく、主人公(プレイヤー)も攻略を進めていく内に「凄腕の独立傭兵」として扱われるようになり、様々なキャラクターや敵対組織のエースパイロットがこれでもかと持ち上げてくれるので、気分は完全にニュータイプなガンダムパイロットですよ。まぁ厳密には強化人間なんですけど。

しかし実際にゲームをしていると、油断するとザコ敵の集中砲火であっさり沈むわ、ボス級の敵には何十回と敗北するわと、全然パッとしません。
「どこが凄腕の独立傭兵やねん」と自己嫌悪に陥る事も、一度や二度ではありませんでしたね。
ただ、それはパイロットがヘボいだけで、ACそれ自体はとんでもなく強い人型兵器です。それをプレイヤーは実際に操作することで思い知らされます。両手両肩に装備した武装を自在に使用できること。
凄まじい推進力で大地も空も自在に移動できること。
ミサイルの弾幕や高火力の砲撃をかいくぐりながら、敵に肉薄して攻撃を叩き込める性能を持っていることetc……
何よりAC6の難易度が高いのは「敵が強い」と言うより、この化け物みたいな人型兵器=ACを乗りこなすのが一筋縄ではいかない為だと気付かされるのではないでしょうか。



そんなガンダムみたいな人型兵器を駆り、何度も苦境や強敵に挑むうちに、自分がACを思うように操縦できたと感じる瞬間は必ず、そして何度も訪れる筈です。
その結果として鬼のように強い敵を倒したり、バカみたいな戦力差を単騎で覆す戦果がもたらされた時の快感たるや、筆舌に尽くしがたいものがありますね。
端的に言うと勃起が(以下略


私の彼(女or犬?)はパイロット


次にAC6のストーリーについてですが、フロムソフトウェアの世界観や各種トレーラー、そして序盤のミッションの内容から、自分も含めて『ハードでドライで難解なSFドラマ』を想定した人がほとんどだと思いますが、実際に遊んでみると……あれ? 何か違くない?

トレーラーでは強化人間を番号で呼び、その名の通りに主人公(プレイヤー)を走狗として使い捨てにするような冷酷な雇い主――と思われたハンドラー・ウォルターは、主人公のパパもしくは最高のご主人様で。

プレイヤーだけに語りかけてくる謎の少女(の声)エアは、フロムの事だから実態は非人間の上位存在かと思いきや、愛が重い……もとい主人公と一緒に傭兵ライフを満喫する美少女ヒロイン(概念)だったし。

傭兵だからと情も倫理観も捨てた、死んでも心が痛まない様なクソ野郎ばかりかと思われた各組織の人間や敵パイロットは、強敵と書いて「とも」と呼び、誰よりも互いを認め合いながら共闘し、激突するクソ熱い連中ばかり。
まぁドン引きする様な変態や、愛すべきクソ三下野郎とかもいたけれど。

そんな個性的かつ魅力にあふれたキャラクターたちが、主人公=プレイヤーへをリスペクトしながら繰り広げられる物語は、とても分かりやすくて展開も熱い、ロボットアニメ節全開のストーリーかつロールプレイを堪能できました。

2023年9月現在、ネットではAC6の二次創作が大盛り上がりですが、ビジュアルがほぼ存在しないにも関わらず、ある程度の共通認識やそれを踏まえた妄想が広まるのも、前述したキャラクターとロールプレイの魅力が成せる技なのかもしれませんね。
だからと言って企業のマスコットキャラまで集団幻覚で生み出す奴がいるか! バカ!(誉め言葉)

でもやっぱりメカ(ロボ)が良い。


これまでゲームの内容と、キャラクターとロールプレイの魅力を語ってきましたが、そもそもの大前提として、AC6はメカが最高に格好良い!

マクロスでお馴染みの河森正治氏のデザインを踏襲したパーツだけでなく、AC4・5のハイディテールかつ複雑なシルエットのパーツや、武骨でミリタリーテイストのパーツ、更に近年のロボアニメのようなソリッドでスタイリッシュなパーツなど、デザインラインも様々です。

それらを趣味と用途と性能を秤にかけながら組み合わせ、自分に合った武器や戦法を探っていく過程はロボットアクションゲームの醍醐味であり、その点に関してAC6は他の追随を許さない、ジャンル内でも最高峰の出来だと思います。

また映像的には各種パーツや武器の細かい動きや、メニュー画面がハンガーで、機体を組み替える度にアニメーションでさりげなく表現されるなど、にくい演出盛り沢山なのも嬉しかったですね。
将来的にはメカの全身だけでなく、武器やコアの細かい動きもビューワーで堪能できるようにしてほしいところ。アプデ待ってます!

1周目の愛機『HYDRA SHREDDER』の初期アセン
バルテウス撃破時
後半の基本アセン
ラスボス撃破時点のアセン

私情で愛機の変遷を載せてみましたが、基本は軽脚でピョンピョン跳ねながらミサイルをばらまき、右手武器で敵の姿勢制御を崩しつつ、スタッガーしたら近接武器を叩き込むと言うスタイルですね。
強いと噂のショットガンや、両手に射撃武器のスタイルはどうにも合わなかったので、それらに挑戦するのは2周目からにしようと思っています。

ゲーム中ではパーツや装備の組み合わせ(アセン)だけでなく、カラーリングやデカール製作も楽しめて、自分もエンブレムを自作しましたが……まぁ下手なのと著作権的に危うい点もあるので、ここでは詳細は伏せます。


最高で最新のゲームを送り出してくれた人たちに感謝を


実を言うとAC6を実際にプレイするまでは、過去のシリーズであっさりと挫折した経験から、期待よりも「自分でも投げ出さずに遊べるだろうか…?」という不安の方が大きかったのも確かです。
ソウルシリーズなどの「死にゲー」を何本もクリアーとしたとは言っても、それらはレベル上げなどで、足りない技量を補える仕様になっていたので、レベルが存在しないAC6では、再び挫折する可能性は高いように思えました。

事実、チュートリアルのボスである通称「ルビコプター」には5回も挑み、序盤の壁であるバルテウス戦は、突破にトータル3時間くらい挑戦し続ける羽目に陥りました。
他のミッションも初見突破は数えるほどで、何度もやられてはアセンを変えて挑み続けると言う体たらくで、つくづく自分の下手さを思い知らされましたね。

それでも投げ出すどころか「次こそはいける! ……かもしれない!」と心が折れなかったのは、それだけこのAC6が遊びやすくて、多様な心地良さを持つゲームだったからに他なりません。
特に過去作で最も苦手だった、照準と視点操作がロックオン機能の導入で不要になったり、チェックポイント制の導入でトライアル&エラーのストレスが軽減し、報酬も大幅に減る事がなくなるなど、配慮が行き届いていたのはただただ感謝するばかり。

AC6は確かに高難易度のゲームであり、操作に慣れるまでは個人差はありますが、一筋縄ではいかない点もあると思います。
ゲームバランスや敵の挙動などでも不満を感じましたが、それも含めて楽しめたと言う点で、アクションや操作の巧拙に自信のない人でも、ぜひ本作を遊んでほしい。
何よりAC6は「人型ロボのパイロットになって、カッコ良く爽快に戦うゲームがしたい!」という、今となっては性別を問わない夢を、最高の映像と最高のロールプレイと最新の仕様で叶えてくれる傑作だと思います。

さぁ迷うくらいなら、覚悟を決めてルビコンに飛び込んでこい。
そして「火をつけろ、燃え残った全てに」



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?