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【ゲーム感想文】『アストロボット』~”ゲームのたのしさ”を尽くした傑作アクションゲーム~


評価:★★★★★


年が明けましたが、本年も遊んだゲームについて好き勝手に感想を書き残しておこうと思います。どうぞよろしくお願いします。

さて今年のゲーム初めは、昨年GOTYに輝いたPS5『アストロボット』。
昨年の発売当初から評判も高く、いつかは遊ぼうと考えていたら結局年を跨いでしまい、他に遊んでいたゲームが色々あってやる気が失せてしまった事から、軽い口直しでつもりで遊んでみる事にしました。

……そのつもりが、終始ゴキゲンでコントローラーが手放せなくなるほどハマるとは思ってなかったよ!

本作はPS5本体に同梱されているゲーム『ASTRO's PLAYROOM』の続編なのですが、自分は全く遊んだ事がなく何なら存在すら忘れていたほどで、今更ベタ褒めの記事を書くのも引け目を感じてしまうのですが、それでも面白すぎたんだから気持ちを吐き出しておかないと気がすまないんだよ!
個人的な評価は文句なしの星5(傑作)にしましたが、単に「面白かった」だけでなく、「ゲームはなぜ楽しいのか」という問いにひとつの答えを提示してくれた、自分にとって教師ないし恩人のような作品になりました。

”ゲームはたのしい” 何故なら ”たのしいがゲーム” だからだよ!




ゲームのたのしさって、なんだったけ?


本題に入る前に少し個人的な話をしますが、自分はいわゆるクリア後のランク評価があまり好きではありません。
だって個人的には試行錯誤したり苦労して何とかステージをクリアーしたのに、その後に「お前は中の下だよ」みたいな感じでBランクとか付けられたら、折角の達成感も冷めてしまうじゃないですか。

もちろん、そうした評価付けはゲームを繰り返しプレイする為のモチベーションにもなるし、腕前に応じた報酬が欲しいと言う気持ちも分かります。
かつてのハイスコア争いといい、本来それはゲームをより楽しんでもらうための仕組みの一つだったのでしょう。
他にも収集や育成などの膨大なやり込み要素も、プレイヤーに多様な遊び方を提供し、長く隅々までゲームを楽しんでほしいと言う善意から生まれたものであると分かっているのに、取り残しがあると損をした様な気になるし、それらを可視化されると「めんどくさい…」と感じもしまうわけで。

ゲームがデジタルなエンターテイメントとして広く、多様に、遊び尽くすのに膨大な時間がかかるほど大きな存在になればなるほど、「ゲームのたのしさ」は細分化し、複雑化し、楽しむために生み出されたものが何時しか楽しくないと感じる原因にすらなってしまう……
子供の頃からゲームで遊んできた一人として、何時しかゲームはそれだけで楽しいものではなくなり、そもそもゲームのたのしさって、なんだっけ? みたいな哲学じみた問いを抱えているのは、きっと自分だけではない筈です。

本作『アストロボット』はそんな厄介な問いに対し、あるひとつの単純明快な回答を提示しました。いやその答えを形にしたと言うべきか。
それは「ボタンを押すと楽しい事が起きるよ!」と言う、超シンプルな答えだったのです。


コントローラーで繋がるぼくらとアストロ

いつも賑やかなベースキャンプ

さてここから本題に入ります。
本作『アストロボット』は極めてシンプルな、3Dアクションゲームです。
各ステージ毎に固有のアクションは存在しますが、基本はパンチと溜め攻撃(スピンアタック)、ジャンプと足下に攻撃判定が生じるホバリング、そして一部のオブジェを掴むことだけ。
最近のゲームならこれを基本として、様々な派生アクションを習得していくのが普通ですが、アストロボットに関してはそうした育成要素は一切なし。
各ステージに散らばっている仲間やアイテムを収集する要素はありますが、それらを集めると特別なアクションができるとか、ゲームが有利になると言う事もない。

ゲーム自体には難易度設定もなく、前述したランク評価もなし。それどころか体力ゲージも残機もなく、一部のボスを除いて攻撃を一度でも食らえば死亡、即チェックポイントからリスタートという、今の時代からすれば潔いくらいのシンプルさです。
クリアーするだけなら難易度は低めで、うっかり死んだり難所に遭遇したとしても、ひらめきと発想でロジカルに突破できる作りになっているので、幅広い層が遊べるアクションゲームになっていると思います。

しかし、そんな単純な作りならすぐに飽きてしまうのではないかと思うかもしれませんが、それがこのゲームの優れた点の一つで、固有アクションも含めて各ステージは手を変え品を変え、優れた発想と絶妙な配置で、最初から最後まで飽きの来ない多彩で爽快なアクションが楽しめます。
やり込み要素として、昔のアクションゲームを思わせる高難易度のステージもあり、シンプルだからこそプレイヤーの判断と操作がダイレクトに反映され、決して雰囲気だけのぬるま湯ゲームではないのですよ。

とは言え、それだけでは他のアクションゲームの誉め言葉と大差ないので、ここからは『アストロボット』が持つ独特の魅力について語っていきます。

幾つかのステージに何故か存在する撮影スポット

『アストロボット』はとにかく操作が楽しい&気持ち良いんです!
それは前述したシンプルな操作や内容、そしてステージの作りも関係していますが、それ以前にコントローラーを使ってアストロを動かす事、それ自体がとてつもない楽しさに満ちています。
ただ移動するだけでも、映像や音だけでなくコントローラーの振動などで個性的な反応が返ってくる。敵を倒したりステージをクリアーするのに何の関係もないオブジェも沢山あって、パンチで叩いたり上に乗ると個性的に反応してくれる。
物理演算されたオブジェがアクション一つで派手に飛び散り、コントローラーを通して微細な反動が伝わるのは地味に感動ものですし、ビジュアルやSEにBGMはそれ以上に豊かで派手で、まるでおもちゃ箱をひっくり返したり、ボールプールに頭から飛び込むような、思わずニッコニコになる楽しさが凝縮されているんです。

捜査中はゲームらしいUIの表示もなく、反応が多彩で細かく、こちらのアクションにダイレクトに反応してくれるものだから、ゲーム内のキャラクターとプレイヤーである自分がコントローラーを通じて繋がっているかのような、そんな楽しい錯覚に陥る事もなんどかありましたね。


PSのお祭りゲーム? いいやこれは全てのゲームに対するラブコールですよ。

懐かしさに泣きそうになった。

『アストロボット』のもう一つの魅力は、どこかで見た様なキャラクターがゲーム内に多数登場し、彼らを集めたり個性的なリアクションを眺めるのも大きな楽しみです。
プラットホームやら何やらの関係上、基本的にはSONYのゲームのキャラクターとPSでゲームを出している幾つかのメーカーのキャラクターに限られますが、ゲームを遊んでいると「本当はマ〇オやソ〇ック、他にもあれやこれに出てほしかったんだろうな……」と思うほど、既存のゲームに対する愛とリスペクトが詰まっている事が分かります。

各ステージのギミックや演出も過去の名作や大作を再現しようとしていたり、SONY限定ですがアストロボットのフォーマットで他のゲームを再現した特殊ステージも幾つか存在し、それがまたよく再現されているのですよ。
つかサルゲッチュ! 事実上の新作じゃんこんなの!

ソリッドなほうの伝説の傭兵さん。スネークをイーターする方もいます
ヤーナムの観光客。観光気分でいたのお前?

ゲーム中に発見(保護)したキャラクターはベースキャンプに集まり、アタックするとこれまたコミカルかつ個性的なリアクションが見られるので、それだけでも収集の良いモチベーションになりましたね。
もちろん集めなくても攻略には一切関係ないので、その緩さもまた本作らし
いなと。


”ゲームのたのしさ”とは、ボタンを押すと楽しい事が起きると言う約束である。

このゲームで一番好きなスポンジ化の固有アクション


ようやく結論になりますが、『アストロボット』が優れていたのはシンプルながらも爽快感に溢れたアクションや、細かく楽しいリアクション、快適なレスポンスといった、アクションゲームの本質をとことん追求した事でした。
ゲームを語る上でよく「インタラクティブ(双方向的)」という言葉が使われますが、それは何も横文字を並べて小難しく論じる事ではなく、ボタンを押すとマリオがぴょーんと跳んでブロックを壊した時の気持ち良さだとか、ライフルの照準を当てて見事に敵を打ち倒すとか、映画やアニメのようなアクションを自分の手で再現することとか、自分の考えや判断がゲーム内の箱庭世界に反映されることとか、きっとそうした楽しみが幾重にも積み重なり、目的に応じてより複雑化していったものではないでしょうか。

PS5という高性能なプラットフォームで、多機能なコントローラーとも連動させながら、しかし求めたのは映画や現実に寄せたリアルでハイディテールなエンターテイメントではなく、昔ながらのアクションゲームであったこと。
そしてそのゲームは、ただ動かすだけでこんなにも多彩で笑顔になれる楽しさを提供してくれたこと。
自分はそこにこのゲームを制作したチームASOBIの哲学と言うか、”ゲームのたのしさ”に対する一つの回答を見たような気がしました。

最初のステージで感じたドキドキやワクワクがそれきりで終わりではなく、次から次に手を変えて出てくる度に夢中になり、最後まで新鮮な驚きやシンプルな楽しさが途切れなく提供される夢のような時間。
それを成していたのは、「ボタンを押すと楽しい事が起きる」と言う約束が最初から最後まで、極めて巧みかつ丁寧に守られていたからではないか。
それが『アストロボット』を最後まで遊び、仕掛けいっぱいのスタッフロールを見届けた時に思い浮かんだフレーズでしたね。

こんなにも胸に来る「THANK YOU FOR PLAYING」は初めてだったよ……


ところで気になって調べてみたら、チームASOBIってかつてのSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)だったんですね。そりゃここまで面白いの作れるわけだ!


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