マンガ感想文「ここは今から倫理です。」
どこで知ったか、どうして読みはじめたか覚えてないけど、最近の僕の一番のお気に入りのマンガ。
とある高校が舞台で、クールで影のあるイケメン先生が「倫理」を教えるというストーリー。
ヤンチャな学生に対し、主人公の先生がボソボソと授業をするのだが、説得力が半端ない。
偉い人(哲学者)のセリフを織り交ぜながら、冷静に筋の通った説明ができる人間というものに、個人的にはとても憧れる。
不良たちに全力で身体を張ってぶつかる熱血先生の「ルーキーズ」とは180度違う切り口での学園物語。
そもそも僕が学生の頃、「倫理」の授業の記憶なんてほぼない。
中学の社会科の教科書の後ろの方に少しだけページが用意されていて、「受験には直接関係ないけど、教科書に載っているので授業しなければならないのです」っていう前置きで授業したことだけ覚えている。
というか、「倫理」ってそもそもどういう意味かも、いまいちピンとこない。
作中ではこういう風に「倫理」を説明している。
――倫理は――
学ばなくても将来困る事はほぼ無い学問です
地理や歴史の様に生活する上で触れる事は多くないし
数学の様な汎用性も
英語の様な実用性もありません
この授業で得た知識が役に立つ事はほぼ無い
この知識がよく役に立つ場面があるとすれば――
死が近づいた時とか
倫理は主に自分がひとりぼっちの時に使う
”宗教とは何か”
”よりよい生き方を考える”
”幸せとは何か”
”ジェンダーについて”
”いのちとは何か”
どうですか
別に知らなくてもいいけれど
知っておいた方がいい気はしませんか
――「ここは今から倫理です。」1巻
倫理は人の心に触れ
自分の心に触れてもらう授業です
貴方の頭をなでて慰める事はセクハラになってしまいますが…
貴方の言葉を聞き貴方の心に触れ慰める事は出来る…
――「ここは今から倫理です。」1巻
セリフだけを抜き出すと、ちょっと伝わりづらい部分もあるけど、「学ばなくても将来困る事はほぼ無い」けど「知っておいた方がいい」気がする学問だということは、すごく腑に落ちる説明のように感じる。
とにかくこの「知らなくてもいいけど、知っておいたほうがいい」ことを切実に語りかけてくれるマンガである。
また、一部のサイトでは「倫理」は「道徳」と同義であるとも書かれていた。
「道徳」。
稲盛氏曰く、近年の日本人に一番足りない教養ではないか。
というか(少なくとも僕の学生時代は)「社会科」の授業で注力されない分野、もっと端的に言うと受験に関係ない分野ほど、大人になってから意味のある事柄のように感じる。
この「倫理」もそうだが、「政治経済」もそう。
若い人間の多くは政治経済に疎いという理由で選挙に行かないし、そもそもの政治の仕組みも知らないから政治家の言いなりになってしまうし、社会全体の仕組みも良くならない(興味もない)。
その政治家も倫理や道徳に対する思いが弱いから、不正ばかり裏でやっってる。
経営者も同じで、ブラック企業が次々出てくる。
倫理観が無く権力を手にした人間が絶対的な発言力を持っていると勘違いし、一方で何も持たない人間は抵抗する術も知らず、どうしたら改善できるかを考える力も余裕もない。
考えれば考えるほど、今の世の中にもっとも必要なことの一つが「倫理」のように思えてくる。
だからこそ、自分だけでも「倫理」の知識を深めておくことは今もっとも必要な教養のように思う。
どんな主義主張でも、最後に目指されるのは”幸福”のみ
幸福を目指さずに生きている人はこの世にいない
どんなに理不尽な事を言う人がいても…それがその人なりのより”幸福になる選択肢”だったのは変わらない
どうすればより多くの幸福が手に入るのか――
考えましょう、それが倫理です
――「ここは今から倫理です。」3巻