見出し画像

体験型コンテンツにおける顧客満足度の作り方


はじめに

筆者は、観光事業会社を立ち上げ、6年目になる。
その間に20本以上の体験型コンテンツを企画、制作した。
また、国内外でも機会があるごとに体験型コンテンツは、参加して勉強するようにきているので、100個近い体験型コンテンツの顧客にもなってきた。

そんな中で、顧客満足度はどうすれば上がるのか、という命題を常に考え続けてきた。
自身の経験や、諸先輩方の知見を借りて、既に一つの重要な方程式を導き出したので、ここで紹介したい。
にわかに注目される観光業、その中でも日本の地方観光で一番弱いとされる体験型コンテンツをこれから始めたい、既に事業化している方の一助になれば幸いである。
また今回の理論はあらゆるビジネスにも応用することが出来るので、他業界の方にも興味本位でも是非覗いてもらいたい。

まず、結論から入る。

体験コンテンツの満足度の方程式

体験コンテンツの満足度の方程式は

「満足度 = 期待値 ―(マイナス) 実際の感情の高まり」

である

体験コンテンツの満足度を定量的に捉える方法の一つとして、「期待値―(マイナス)実際の感情の高まり」という方程式があり、コンテンツを作る際、これを念頭に置いておく必要がある。

これは、顧客が体験前に抱く期待値から、体験中および体験後の感情の高まりを引くことで、満足度を算出する考え方である。
つまり、期待値が高く、感情の高まりがそれを下回れば満足度は低くなり、逆に期待値が低い状態から感情が大きく高まれば満足度は向上する。
この方程式を理解することで、より効果的な体験コンテンツの設計が可能となる。

期待値とは何か

期待値とは、体験前に顧客が抱く「どの程度の楽しさや価値を得られるか」という予測のことである。
例えば、有名なテーマパークの新アトラクションに対する期待値は高くなりがちである。
一方、知名度の低い地方のレジャー施設に対しては、期待値は低くなることが多い。

期待値の形成には、広告、口コミ、過去の体験、価格などが影響する。
高額な体験コンテンツほど「これだけの料金を支払うのだから、それに見合った満足感が得られるはずだ」という期待が生まれやすい。
また、有名なインフルエンサーが絶賛した体験コンテンツは、それを見た顧客の期待値を押し上げる要因となる。

感情の高まりとは何か

感情の高まりとは、体験中および体験後にどれだけ心が動かされたかを指す。
驚き、感動、喜び、興奮などが含まれる。
これは、実際に体験したときに感じる「想像を超えた楽しさ」や「期待していなかった感動」によって引き起こされる。

例えば、あまり期待せずに訪れた小さなカフェで、店主の温かいおもてなしや驚くほど美味しいスイーツに出会ったとする。
この場合、期待値は低かったが、実際の体験がそれを大きく上回り、感情の高まりが大きくなるため、満足度は非常に高くなる。
逆に、広告で大々的に「人生最高の体験」と宣伝されていたイベントに参加したものの、実際はありきたりな内容だった場合、期待値は高かったが感情の高まりは低いため、満足度は下がる。

具体例①:高級レストラン vs. 地元の食堂

高級レストランでの食事と、地元の食堂での食事を比較すると、この方程式の理解が深まる。高級レストランは、価格も高く、事前の情報も豪華なものが多いため、期待値が高くなる。
しかし、提供される料理やサービスが期待を超えない場合、満足度は低下する。
例えば、「味は美味しいけれど、特別感はなかった」となれば、感情の高まりは小さいため、満足度は期待以下となることがある。

一方、地元の食堂では、「普通の定食屋だろう」と期待値が低く設定されることが多い。
しかし、実際に食べてみると、驚くほど美味しかったり、店主の人柄が温かく心地よかったりすると、感情の高まりが大きくなり、結果として満足度は非常に高くなる。

具体例②:観光地の体験プログラム

例えば、人気のある温泉地での「豪華な露天風呂付き旅館」と「地元住民が案内する温泉街ツアー」を比較する。
前者は、期待値が非常に高いため、実際の体験が少しでも期待を下回ると「こんなものか」と感じてしまう可能性がある。
一方、後者は「地元の人が案内するだけ」と期待されていなかった場合でも、実際に温泉の歴史や隠れた名所を知ることで「思っていた以上に面白かった」と感情が高まり、満足度が上がる。

期待値をコントロールする重要性

この方程式が示す通り、体験コンテンツの満足度を最大化するには、期待値を適切にコントロールしつつ、感情の高まりを意図的に設計することが重要である。
過剰な宣伝は、期待値を不必要に上げてしまい、結果として満足度を下げるリスクを伴う。
一方で、期待値を低く設定しすぎると、そもそも顧客が体験しようと思わなくなる。

理想的なのは、適度な期待値を持たせつつ、想定外の驚きや感動を仕込むことである。
例えば、シンプルな体験コンテンツでも、最後にサプライズを用意することで、感情の高まりを大きくできる。
また、ストーリー性を持たせ、段階的に感情を高める演出をすることも有効である。

一旦まとめ

体験コンテンツの満足度は、「期待値マイナス感情の高まり」という方程式で説明できる。
期待値が高く、感情の高まりがそれに追いつかない場合、満足度は低くなる。
一方、期待値が低い状態から感情が大きく高まると、満足度は非常に高くなる。
この理論を活用することで、体験コンテンツの設計において、より多くの人に満足してもらえる仕組みを作ることができる。
期待値を適切にコントロールしながら、感情の高まりを意図的に演出することが、成功する体験コンテンツの鍵となる。

この理論を実践するにはどうすれば良いのかを詳細かつ具体的に記述した。
現場で悩める人は是非読んでみてもらいたい。

体験コンテンツの満足度を最大化する実践テクニック

今回紹介した「満足度=期待値−感情の高まり」という方程式を活用し、実際の体験コンテンツでどのように満足度を高めるかを解説する。
理論を理解するだけでなく、具体的な施策を実践することで、顧客の満足度を大きく向上させ、リピート率や口コミの拡散を促すことが可能になる。

本記事では、体験設計において重要な「期待値のコントロール」「感情の高まりを設計する方法」「事後フォローによる満足度の強化」の3つのポイントを、実践的なアプローチとともに解説する。

1. 期待値のコントロール

繰り返しにはなるが、期待値が過剰に高まると、実際の体験が少しでも期待を下回った際に「思ったより普通だった」と感じられてしまい、満足度が下がる。
逆に、期待値を極端に下げすぎると、そもそも体験を購入してもらえない。
このバランスを適切に調整することが、満足度向上の第一歩である。
では具体的にどうすれば良いか。

期待値を適切に設定する方法

リアルな情報を提供する

過度な誇張表現を避け、リアルな顧客の声や、実際の体験の流れを伝えることで、期待値を適正にコントロールする。
たとえば、体験プログラムの説明に「一生忘れられない感動」と書くのではなく、「都会の喧騒を離れ、静かな自然の中で、鳥のさえずりとともに、のんびりリフレッシュ」といった現実に即した控えめだか、なぜか惹かれるようなフレーズをつけるべきである。

ターゲット層を明確にする

「誰に向けた体験なのか」を明確にし、適切な期待値を設定することが重要だ。
例えば、上級者向けの登山ツアーなら「初心者歓迎」と誤解されないよう、事前にレベルを明確にしておく。
事前に顧客に自分の属性を自覚させることで、「これは私に向いた体験だ」と思わせ期待値をある程度想定してもらう、そこからさらに、あえて初心者なら行きづらいような難所(難所に見える、がポイントだったりする)に少しだけ挑戦させ、「想像した以上の体験だった!」と体験後に思わせる、こうしたちょっとした逸脱(挑戦)を加えることで感動を生みやすくなる。

洞窟探検では、初心者に
あえて難所に見える所を挑戦させる

適度にハードルを設ける

予約時に「事前に簡単な準備が必要」「参加条件がある」といったハードルを設定すると、参加者の期待値が現実的になり、実際の体験が想像以上に楽しいと感じられやすい。

2. 感情の高まりを設計する

期待値を適切に設定した上で、実際の体験中に「感情の高まり」を作ることで、満足度を最大化できる。

感情を高める3つの方法

サプライズを用意する

体験の途中や最後に「予想外の驚き」を用意すると、感情の高まりを大きくすることができる。
例えば、ガイドツアーで「ここで終わりか」と思わせておいて、最後に特別な景色が見られる場所へ案内する、といった演出を加えると、印象に残りやすい。

体験のストーリー性を強化する

人は「物語」によって感情を揺さぶられるため、単なるアクティビティではなく、ストーリーを持たせることが重要である。
例えば、「地元の伝説を体験しながら進むミステリーツアー」や、「昔ながらの職人技を学び、最後に自分だけの作品を完成させる」といった流れを作ることで、没入感が増し、感情が高まりやすくなる。

顧客自身の成長を感じさせる

体験を通じて「自分が何かを成し遂げた」と実感できると、感情の高まりが大きくなる。
例えば、料理教室では単にレシピを教えるのではなく、「初めて包丁を握る人でも美味しく作れる」という達成感を味わえるようにすることで、満足度を高められる。

例えば楽器を使う三線体験では、
初回で簡単な曲を弾き切れるよう設計する等

3. 事後フォローによる満足度の強化

体験後の余韻をうまく活用すると、顧客の満足度をさらに引き上げることができる。

事後フォローの具体策

体験の振り返りコンテンツを提供する

体験後に写真や動画を送る、参加者限定のオンラインコミュニティを作るなどして、「体験を思い出す機会」を提供することで、満足度を長期間維持できる。
例えば、ツアー後に「撮影した写真をまとめたスライドショー」を送ると、参加者がSNSで共有しやすくなり、口コミの拡散にもつながる。

特別なアフターサービスを用意する

体験後に「次回使える割引クーポン」や「リピーター限定イベントへの招待」などを提供すると、リピーターの獲得につながる。
特に、「あなた限定」という特別感を演出すると、顧客のロイヤリティが高まりやすい。

参加者の感想を集めて公開する

体験直後に簡単なアンケートを実施し、「実際に参加した人のリアルな声」を公式サイトやSNSで公開することで、新規顧客の期待値を適切にコントロールしながら、信頼度を高めることができる。

まとめ

体験コンテンツの満足度を高めるためには、「期待値のコントロール」「感情の高まりを設計する」「事後フォローによる満足度の強化」の3つのポイントを意識することが重要である。

1. 期待値を適切に設定する

誇張表現を避け、リアルな情報を伝えるターゲットを明確にし、適度なハードルを設ける

2. 感情の高まりを演出する

サプライズ要素を加える
物語性を持たせる
顧客自身の成長を感じさせる

3. 事後フォローを徹底する

体験後の振り返りコンテンツを提供する
特別なアフターサービスを用意する
参加者の感想を活用する

これらの施策を組み合わせることで、顧客の満足度を飛躍的に向上させ、リピート率や口コミの拡散を最大化できる。
ぜひ、あなたの提供する体験コンテンツに取り入れてみてほしい!
筆者もまだまだ修行の身である。
一緒に頑張ろう!ピピース✌

いいなと思ったら応援しよう!