さび付いていたやる気スイッチを押してくれた感動のサービス
独身貴族の時間が長かったうえに極上フリーミール3食付きのGoogle勤めで甘やかされてきたことの副作用で「お料理作るのはだめなくせに、舌だけは肥えてる困った女」こと、わたしです!
話題のレストランを食べ歩いていたアラサーの頃、記憶に残る食卓には「驚き」がある、なんて思っていた。
いいレストランというのはお料理の美味しさだけでなく、粋な盛り付け、お店の雰囲気、人のおもてなし、全部が揃っているものなのだが、
気の合う友達とオシャレして行っておしゃべりを楽しむことがもうひとつのアジェンダだったりすると、会話がはずみすぎて折角の料理はあまり記憶に残らなかったりする。
しかし、そこに「驚き」がひとつあると、目と舌と胃が感動にふるえ、本来の「食べる人」に引き戻され、またこのお店に来なくちゃ、と思う…
当時はしかし、こんな贅沢は心の中で思うだけで人に言ったりはしなかった。池波正太郎が語るのはよくても、自腹でグルメする独身女の薀蓄ほど可愛げがないものはないからね。それくらいの自覚はあった。
バリキャリアラサー女というのは、すこし前に某媒体の炎上?マーケティングで話題になった「港区女子」ともまた種類が違うマイノリティなのだ。マイノリティだから、ストーリーとしてもあまり受けないことは分かってる。
そんなわたしも、10年経って、母ちゃんになった。
我が娘あーちゃんには、あの手の説明しがたいダークサイドに堕ちる前に、愛を見つけて落ち着いて欲しいものだよ、と、母ちゃんになったわたしは願う。
というのは、さておき。
0歳児と3歳児とむきあう産後の生活。スカしたレストランどころか近所のラーメン屋にも行けない。
モリモリ食べるようになったヨーヨーのためにご飯を作らなければならず、かといって急にできるようになるわけでもなく、試行錯誤のヨシケイのお料理ブートキャンプの反動で自分を甘やかしたくなった。
そこで、お料理のプロが家に来て、常備菜をたっぷりつくってくれるというサービスを試してみることにした。
シェアダイン、それはいわゆる「家事代行」ではない、料理のつくりおき専門家の集団。友達がその事業の立ち上げに関わっている縁で、正式リリース前のパイロットプログラムを利用させてもらえることになったのだ。
事前のヒアリングで、料理家さんには「産後のからだに優しくて、3歳の子供と一緒に食べられる和食」をリクエストした。素材の買物代行もあわせてしてもらえるのが、新生児のいるワンオペ母ちゃんには嬉しい。
最初は、「とにかく手間をかけずに食いつなげるもの」という結果だけを期待していたので、当日、料理家さんにキッチンを使っていただいている3時間、わたしは別室であーちゃんやヨーヨーの相手をしていた。
帰り際に料理家さんに「いつも知らないキッチンで作るのって大変じゃないですか」と聞いたら「いろんな家のやり方が学べて楽しいです」とのお答え。その発想が、プロだよねえ。
そしてできあがったのは、3~4日(酢の物などは1週間くらい)は飽きずに食べつなげる、色とりどりのおかず。栄養バランスもよく、子供に安心して食べさせられるだけでなく、ワンプレートにとりわけたらお洒落カフェのように素敵な感じにもなる。アレンジのアドバイスももらえるので、3日目以降はチャーハンに展開して、味付けいらず。
そしてそこには、いつも自分が使ってる道具と普通のスーパーの食材で、こんなに美味しいものができるんだ!という...「驚き」があった。
価格は、料理家さんによって時間あたり2,000~3,000円。
それを安いというか高いというかは人によると思うが、一品作るのに人並み以上にストレスを感じ、味付けが上手でもなければ、片付けも苦手なわたしにはとてもありがたかった。
そして、いつもなら緑のものは全部よけるヨーヨーが、わたしのお皿にも手を伸ばす勢いでなんでも食べてくれたので、あとになってから、作っているところを隣で見てたら良かったと後悔した。
全部は無理でも、いくつかは自分でも作れるといいなあ、と。
そこで聞いてみたら、今回はわたしが丸投げしたから勝手にやってくれたが、料理家さんの横で作り方を見ていたい、または一緒に作業をして作りかたを教えてほしいという希望であれば、柔軟に応じてくれるものらしい。
「それだと仕上がる品数が減りませんか?」と聞いたら、「動かす手が増える分、むしろ多くできることもあります」とのこと。
それって、1:1の出張お料理教室みたいだね?!
レシピを見ながらの作業だと募るストレスも、口伝なら身につくかも。わたしが思考停止する「揚油を160度と180度で使い分ける」なんていうのも、その場で聞けば自分でできるようになるかも。
我が家の食卓、もう一段、上のステージに上がれるかもしれない?!
というわけで、その後も何度かお世話になったのだが、そのシェアダインが先日めでたく正式ローンチしたらしい。
わたしは料理については長年「できない、苦手、しない!」と決めつけていた。料理についてのやる気スイッチは長年押されることのないままガチガチにさび付いていて、一人目のヨーヨーの登場では入りきらず(だって外食とかあるし)、二人目のあーちゃんが産まれて本当にやらざるをえなくなって、逃げ場を探しながらもじわじわ追い込まる感じでやるようになったのであるが、
今、あーちゃんも保育園に通うようになって精神的な平常運転を取り戻し、改めて産後をふりかえってみると、シェアダインの利用は「もしかして...料理って...実は、楽しいものなのか?」と思わせてくれた経験だった。もう動かないとあきらめていた頑固なスイッチがぶるっと震えて錆が落ちるような、ちょっとした驚きと感動があった。だから、シフォンケーキとか自分の好きなものを作る気になったんだ。下手なりに、なんとか日々、お料理を作るれるようになってきたよ。
予約が取りにくなってしまったけれど、その時、感動の品々を作ってくださった素晴らしい料理家さんにまた依頼して、今度は隣にべた付きで2~3品、作り方を教えてもらおうと思っている。
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