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ゲーム業界のマーケをできるかぎり分かりやすく知る・使いこなす。失敗例も添えて
「いや~、あの案件?なんかウィッシュリスト増えたんで、良かったっすねー」「Xの広告、1週間だけやってみましたけど、だめでしたっす。Xってだめっすね」
とか、なんかアバウトな活動費と結果報告にうんざりしていませんか?
そもそも、計測不能なことに一喜一憂してもしょうがないし、たった1回のアクションで結果がすべてだというのもおかしな話です。
そもそもそれは広告活動やPR活動の話しであり、そもそも何を目的としているのか?の部分を明確にしないままに、個別最適化に取り組むのもこれまた変な話です。
穴の開いたバケツに水を灌ぐほど無駄なことはありません。
今回は、その枝葉末節な話に突っ込むことはなく、マーケって基本を押さえたうえで、PRや広告をやることがいいよっていう話に終始します。
「ゲーム業界のマーケティングって何?」「どこから手をつければいい?」という誰もが抱きがちな疑問を解消しつつ、その考え方や概念を理解して、ご自身のプロジェクトにお役に立てたらと思って書いてます。
このドキュメントを読めばどうなるか?
・マーケティングの全体像が見える
・このアクション、あってるのかな?が少し見える
・何から手を付けようか?の概要が分かる
・マーケって面倒くせえなが分かる
・くそ分かりづらい概念が打ち破れる
と思っています。
残念ながら、この記事だけで何かが解決するわけではない。です。そのため、今後もなるべく、個人レベルでも使えるような記事を、引き続き展開していきます。
マーケティング入門
1. マーケティングとは何か?
まずはこれが本記事でのマーケティングの定義としています。
企業(あなたの提供するゲームやサービス)とユーザー(顧客)が長期的によい関係を築ける状態(仕組み)をつくること。
もう少し言い換えると、
1.市場やユーザーを深く理解し、
2.商品やサービスの開発・販売・運営・サポートを統合し、
3.ビジネス面(収益性やコスト管理)とのバランスを取りつつ、
4.企業のあらゆる部門を巻き込んで価値を最大化する活動
ということ。
結果として、ユーザーの満足度と企業の成長を両立させ、長期的に良い関係を続ける仕組みを築くのがマーケティングの役割です。
2. よくある誤解:「マーケティング=広告や宣伝」だけじゃない
◇ 広告・宣伝・プロモーションは“あくまで一部”
CMやSNS広告、イベントプロモーションなどはマーケティングの一部にすぎません。
いくら広告にお金をかけても、
・人は集めたけど全然買ってもらえない
・ゲーム内容が面白くない
・レビューが大荒れで低評価
・運営体制が不十分でユーザーの声を拾えない
・価格や課金設計がユーザーに合わない
という結果になれば、本末転倒です。
根本的な価値提供にズレがあれば、持続的な成長は難しいでしょう。
そうならないために、マーケティングの概念や考え方をもって、全体最適を行い、最終的になりたい姿を目指そうぜっていう考えでもあります。
◇ 真の目的に紐づける
個々の広告施策やSNS運用は、あくまでマーケティング目的達成の手段であり、必ず計測可能な定性的、定量的指標やゴールと紐づける必要があります。
広告を出した結果、
新規ユーザーがどれだけ増えたか
ゲームの課金率や継続率はどう変化したか
SNSのフォロワー数やエンゲージメントは上がったか
反響、指摘ポイントはどうなのか?
といったデータをもとに次のアクションを考えるわけです。
3. マーケティングの全体像:Goal → Objective → Strategy → Tactics
マーケティングを体系的に理解するうえで役立つのが、下記のフローです。大きな流れを図で示すと、以下のようになります。
─────────────────────────────────
◆経営目標 (Goal)
・企業全体で達成したい大きな成果
・例:「今年度全社売上20%増」
─────────────────────────────────
│
▼
─────────────────────────────────
◆マーケティング目的 (Objective)
・経営目標を実現するための指標・数値
・例:「新規ユーザーを月1万人獲得」
─────────────────────────────────
│
▼
─────────────────────────────────
◆マーケティング戦略 (Strategy)
・目的達成のための大きな方針や方向性
・例:「SNS拡散を重視し若年層にPR」)
─────────────────────────────────
│
▼
─────────────────────────────────
◆部門別戦略・施策 (Tactics)
・各部門・各チームが具体的に実行
・例:広告出稿、イベント運営 etc.
─────────────────────────────────
このように、最上位の経営目標→マーケティング目的→マーケティング戦略→具体的施策という階層構造で考えることで、
「なぜこの施策をやるのか?」
「この広告出稿は本当にGoalにつながっているのか?」
を確認しやすくなります。
4. 具体的なイメージ:ゲーム業界ならどうなる?
たとえば、あなたの会社が新作スマホゲームをリリースするとしましょう。
経営目標 (Goal)
「今年度、ゲーム事業全体の売上を20%増やしたい」
マーケティング目的 (Objective)
月間アクティブユーザー数を50万人まで増やす
リリース後3か月で課金率を5%に引き上げる
マーケティング戦略 (Strategy)
若年層を中心に拡散させる
本格的RPGでコアゲーマーの心をつかむため、ゲーム実況者を巻き込む
部門別戦略・施策 (Tactics)
広告宣伝チーム: TikTokやYouTubeでの広告動画、実況者とのタイアップ企画
開発チーム: ユーザーからのフィードバックを素早く反映する機能改善
運営チーム: ゲーム内イベントの定期開催、SNSコミュニティ管理
人事・採用チーム: 適切なデータアナリストの採用、ユーザー動向分析体制の強化
財務・経理: マーケティング費用対効果(ROI)の算出・管理
5. 用語の定義(本記事内)
ユーザー: あなたのゲームを無料・有料問わずに遊んでくれる人
顧客: お金を支払ってゲーム内アイテムを購入したり、有料版を利用してくれる人
ファン: 長期的に応援してくれ、好意的に利用し続けてくれる人(ロイヤルユーザー)
6. どこから手をつければいい? 4つのポイント
6-1. 「真の目的」を常に意識する
どんな施策でも必ずゴールと結びつける
「SNS運用する」→「なぜ? どのKPIを上げたい?」→「新規ユーザーが月1万人増えるため」という具合に常に目的をセットに考える
イベント出展は何のため? ウィッシュリストが伸びるだけではない、別の計測すべき指標も多くあります。公式とかSNS流入数とか、交換した名刺の中で次につながりそうな施策はないか? そもそも注目された理由、されなかった理由は何か? 仮説と指標を明確にしているか?
6-2. 個別最適化を防ぐ
部門ごとにバラバラのことをやってしまうと、全体のゴールに貢献できない。たとえば検索対策とか、広告も同じ。それがどこに繋がっているのかを必ず線で結びましょう。アクション全体の面で捉えましょう。
マーケティング戦略を共有し、共通の目標(Objective)に向かう仕組みをつくる。漠然と個別アクションをやるのは最初はいいですが、必ず最終的なゴールはどこか? を見据えながら行動しましょう。
6-3. 小さく試して早く検証する
すべてを一度に完璧にはできない。絶対に一気に大きなお金を投じるな。有名配信者にお金を出すなよ。大きな広告にお金を出すなよ。まずはテストからだぞ。
小規模なキャンペーンや施策で効果をテストし、良い結果が出たら拡大するアプローチがオススメ
6-4. データ分析と改善を続ける
広告出稿、SNS投稿、イベントの効果は必ず数値で振り返る
どの施策が効果的だったのかを追跡し、次の施策に反映させる
出来る限り計測不能な状態にはしないことです。定性的、定量的な反応をもらえるように工夫をしましょう。アンケートやコメント、フィードバックなどがその代表例です。仮に計測不能なアクションであったとしても、必ずどこかに影響が出ているはずです。しっかり調べましょう
7. よくある失敗例と注意点
◇ 「とにかく広告費をかければいい」と思い込む
課金設計やゲーム内導線の最適化、ユーザーサポートの充実が欠けていると、ユーザーはすぐ離脱
ゲーム内容・コア体験をまず磨くことが重要
◇ 施策が属人的・独断的に決まる
「プロデューサーがやりたがってるから」「リーダーがSNS詳しいから」だけで決めると、数字で振り返れずに終わりがち
きちんとKPIを設定して検証する仕組みを入れる
◇ ノウハウやデータの共有がされない
新作タイトルと既存タイトルでユーザー傾向や成功施策の情報を共有しないのはもったいない
社内コミュニケーションやデータ集計基盤の整備がカギ
◇ 短絡的に判断をしない
いわゆる過度の一般化をしないということです。たった1回うまくいったこと、たった1回失敗したことで、短絡的にこれは良かった、これはダメだと決めつけないこと。
この世の中にはいろいろなことが複合的に絡み合っています。努力した起業家が上手くいったのは運が良かったおかげだとそろえて口にしますが、その背景にはチャレンジの連続、効果検証の連続があります。
実はみな、なぜうまくいったのかがだいたい因数分解できています。
すべてはトライ&エラーなのです。
8. まとめ:マーケティングは「仕組み作り」
ゲーム業界のマーケティング初心者の方は、まず以下を抑えておけばOKです。
マーケティング=広告だけではない
開発や運営、サポート、人事なども巻き込み、長期的な関係を築く
Goal → Objective → Strategy → Tactics の階層構造
それぞれがつながっていることを意識する
定量的に測定し、小さく始めて改善する
「どの施策が効果的か?」を実験し、数字を見ながらPDCAを回す
個別最適化に陥らず、全体最適を意識
チーム間のコミュニケーションや情報共有が重要
最終的には、ユーザーや顧客、そしてファンとの長期的な良い関係がビジネスの安定と成長を支えるのは皆さんもご存じの通りです。
あとは、ユーザーの声をしっかり拾いつつも、最低限のクオリティを維持しながらしっかりと伝えたいことを伝えられる環境の構築、開発に集中できる環境を構築すること。
そして何より心身的な健康を維持していくこと、も今の時代はすごく大事なことではないかと考えています。はいー。
というわけで、私も今年も引き続き、いろいろなサービスやタイトルのマーケティング活動に注力していきたいと思います。
(付録)イメージしやすい図まとめ
◇ マーケティング全体像:「長期的関係を育む仕組み」
[ユーザー理解] → [商品企画] → [開発/運営/サポート] → [収益管理]
↘ ------------------------------ ↗
長期的に良い関係を築く
◇ マーケティングのフロー図(Goal~Tactics)
Goal(経営目標)
例:今年度ゲーム事業売上20%増
│
▼
Objective(目的)
例:月間新規ユーザー数50万人
or 課金率5%に引き上げ etc.
│
▼
Strategy(戦略)
例:SNS拡散重視/コアゲーマー訴求
実況者とのタイアップ etc.
│
▼
Tactics(施策)
広告出稿/キャンペーン/ゲーム内イベント
アップデート/開発改善/コミュ運営 etc.
上記を実現するための各種戦略
人材、採用戦略
バックエンドの充実
クリエイティブ戦略
PR戦略などなど。
のような図解を活用することで、マーケティングの流れや広告・宣伝が全体のごく一部であることを、直感的に理解できる。はず。
最後に
マーケティングは一見すると難しい概念ですが、要点を押さえて順序立てて考えれば、ゲーム開発や運営にも活かせる効果的なフレームワークです。
あとは個別の部分の深堀りにおいては、本当に多くの個別最適化を導くフレームワーク集がたくさんありますので、それをもって取り組むとよりよいアイディアや気づきが多く見つかります。
スタジオデルタ CEO 池田康隆(@うきょう)
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