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『花束は毒』織守きょうや レビュー

秘密というものは不思議な魅力を纏っています。何を隠しているのか。なぜ隠しているのか。私も他人の秘密を見つけてしまった時、ついつい調べてしまった経験があります。

しかし、秘密を知ったところで幸せになれるかどうかは別の問題です。秘密は秘密のままだからこそいいのかもしれません。なぜなら秘密は時として残酷な真実を突き付けてくるのですから。

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あらすじ

『花束は毒』は、「知らぬが仏」を物語にしたようなミステリです。

先輩が嫌がらせを受けていると知った正義感が強い主人公。このままじゃいけないと思った主人公は嫌がらせをしている犯人を捜そうとするのですが、嫌がらせを受けている本人は犯人探しを躊躇します。

不思議に思う主人公でしたが、構わず犯人を調べていきます。しかし、調べるうちに段々と先輩の本当の顔が暴かれていきます。そう、彼には人に言えないような秘密があったのです。

真壁さんが大学を中退した理由も、家族で引っ越した理由も、これでわかった。彼が、探偵に調査を依頼することを躊躇していた理由も。

誰がまともで誰がまともじゃないのか。読んでいくうちに、途中から誰を信じればいいのか分からなくなりました。人間不信に陥ってしまいそうになる一冊です。

「珍しくないよ、仲良しだと思ってたお隣さんが嫌がらせの犯人だったとか、誠実だと思ってた彼氏が既婚者だったとか」


 「探偵」

なるほどね、と北見先輩はまたペンを手の上で一回転させる。癖らしい。

『花束は毒』は背筋が凍るようなミステリであることが一番の魅力ですが、探偵である北見が捜査する様子も見応えがあります。北見がものすごい質と量の下調べをしている場面を見ていると、読んでいるだけの私まで探偵気分になりました。

自然に店員に声をかけるコミュ力。歳や性格を予想する観察力。職場の雰囲気を感じとりつつ、店長の人柄を予想する。猫をかぶった声を出す。

きっと、コナン君も感心するほどの名探偵なのです、彼女は。立ち振る舞いがスマートに見えたかと思えば、時には泥臭く情報収集することもあります。

プリペイドで一ヶ月しか使えない携帯電話で偽名を使い、知り合いのフリをして情報を聞き出す。ある弁護士事務所に偽名を使ってアルバイトとして潜入して情報を盗み出す。

手段を選ばないプロ精神は私の心を掴みました。もしも私が子どもの頃に読んでいたら将来の夢は探偵だと言い張っていたはずです。北見の捜査は、単純にかっこよかったです。


 「法律」

そして『花束は毒』の作者である織守きょうやは弁護士の一面もあるらしく、本作にもその知識が盛り込まれており、犯罪や法律の知識も学べるのも見どころの一つです。

☑︎前歴の意味がわかる。
☑︎脅迫罪の成立の要件がわかる。
☑︎示談のペナルティ。 などなど。

自分が知らない知識を得られるのは小説の大きな魅力です。物語を楽しみながら法律の勉強ができている気がして有意義な時間でした。


「花束は毒」

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何かが引っかかっている。
不穏な気配、嫌な予感、何と呼べばいいのか、それがどこからくるものなのかも、わからない。

毒は毒と知らなければ幸せなのか。最後の最後に究極の選択を迫られる。何が正解で何が幸せなのか。読み終わった後でも、自分の中での答えは出ませんでした。

誰が悪者なのか考えながら読むのが楽しい本作。もしかすると、自分の身近な人も毒を持っているかも。と恐怖を覚えてしまうようなミステリでした。

世の中には知ってしまうと不幸になることがあるのかもしれません。人が隠しておきたい秘密には、安易に近づこうとするべきではないのです。

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