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社員100人以下の小規模企業に最適な「360度評価」でブランディング

社長や役員たちが社員を評価する。普通のことかもしれません。でも私個人としては、昔からちょっとだけ疑問がありました。それが100%ダメとも思わないんですが、一方で「上司は、本当に自分のことを理解してくれているのか」という疑問はあったんです。

独立後は自分のことを直接的に評価する人はいなくなりましたが、お客様の会社では「評価」というものは常に悩みのタネのようです。そうだと思います。弊社のお客様はどこかで、人が人を評価するなんておこがましい、という意識が少なからずあるからだと思います。

これらの問題を、完全に解決は難しくとも、比較的フェアな評価方法だと最近強く感じているのが「360度評価」です。

あなたが働いておられる会社では、360度評価は導入されているでしょうか?大きな会社では導入が進んでいるようですが、中小企業、特に従業員数が100人以下の小規模な企業だと、まだまだ進んでいないところが多いように思います。


360度評価(多面評価)とは?

360度評価とは、一人の社員を同僚、部下、上司など様々な立場の人から多面的に評価する方法です。従来は、社長や役員、上司にあたる人たちが「下の人」を評価するのが普通でした。360度評価はそうではなく、上も下もない、つまり部下にあたる人が上司を評価する、といったケースも含まれます。多面評価とも呼ばれます。

この制度のいいところは社員に当事者意識が生まれやすくなること、客観的に自分が周囲にどう見られているかの指標になること、上司からの一方的な評価ではないので「納得いかん」みたいなことが少なくなること、などです。

360度評価とはどういうものか?その標準的な定義についてはSmarkHR様の360度評価に関する記事が非常にわかりやすく発信されています。

正式な定義などは他の記事に委ねるとして、本記事では「実は、従業員100人以下の小規模企業にこそ、360度評価が最適」だと思う理由についてお伝えしたいと思います。

最初に、360度評価のざっくりした進め方

何をやるかが分からないと内容が掴みにくいと思うので、先に進め方をお伝えいたします。

前提となる考え方

  • 360度評価は、上司も部下も、先輩も後輩も関係ありません。上司は部下を評価するし、部下も上司を評価します。先輩と後輩も同じです。同期の人間同士も同じです。みんながみんなを評価します。

  • とはいえ、本当に一人が全社員を評価するのは大変ですし、そもそも部署が違えば「よく知らない」ということになります。ですので、適宜グループ分けをします。

  • 評価項目は、どんな会社にでも使える一般的な評価基準を使うのもいいですが、弊社は「御社オリジナルの評価基準をつくる」ことを、強く、強く、おすすめします。

小規模企業向け 360度評価のざっくりした進め方

  1. 評価項目作成
    最初に評価項目を作ります。ある社員の能力や実績、人間性や精神性など、「その社員を評価する基準」を明確にします。例は後述しますが、10〜15項目くらいにするといいでしょう。
    1項目ごとに、例えば5段階評価、10段階評価、などポイント数を決めておきます。

  2. 評価者のグループ分け
    評価される社員をグループ分けし、誰が誰を評価するかを決めておきます。ほとんどの場合「部署ごと」になるでしょう。同じ部署の人同士は、お互いに全員評価し合います。自己評価も含める方法もあります。

  3. 上司の評価担当範囲を決める
    社長、役員、上司にあたる人たちが誰をどこまで評価するかを決めておきます。例えば社長、役員は「全社員を評価」、上司にあたる人は自分の担当部署の社員を評価、などです。

  4. 部下の評価担当範囲を決める
    一般社員が、自分の部署の社員以外の上層部の人たちをどこまで評価するかを決めておきます。例えば、一般社員が社長も役員も評価するかどうか、です。オススメは、社長も役員も評価される側になることです。そのほうが、社員さんの納得感が増すからですね。(つまり離職者が減ります)

  5. 評価入力の仕組みを用意する
    評価シートや評価の具体的な仕組みを準備し、各社員が評価を入力できる環境を整えます。Excelを使う、Googleフォームを使うなど様々な方法が考えられます。Googleフォームならスマホで入力できます。専用のシステムを使う方法もありますが、年に1回しか使わない可能性もありますので無料でできる方法がいいでしょう。

  6. 説明会を開催する
    特に今から360度評価を導入する企業の場合、そもそも何をするのかが分からない人も多いと思います。このため、360評価というものを導入することと、なぜそれを導入するのかの意味や目的、評価の方法などを共有する会を社内で設けるといいでしょう。

  7. 評価入力日を決めて実行
    評価入力日を決めて、社長も役員も上司も部下も、一斉に評価入力します。もちろん、業務の関係上一斉にできない場合はチームごとに分けてもかまいません。ただ「いついつまでに入力しといて」と社員がバラバラに入力するよりは、一斉にやるほうが意識が高まりますのでおすすめです。

  8. 評価結果を集計する
    入力された評価を集計します。この際、誰が誰をどう評価したか、は分からないようにしておくほうがいいでしょう。匿名性を重視することによって、評価の際にヘンに気を使ったりすることなく、入力してもらえるからです。

  9. 評価結果をフィードバック
    結果は昇給や賞与に反映させるのが一般的です。それに加えて、面談のための資料として利用し、社員の意識を高める材料にもできます。(評価が低い人がいても、責めずに本人の認識を聞いてあげてください。責めると逆効果になります。)

評価項目の設定が自社のブランディングに。

ここで、重要になる評価項目についてもう少し詳しくお伝えします。

評価項目は「項目名+説明文」で作成する

様々な評価項目が考えられますが、10〜15項目くらいにまとめるといいと思います。その際、項目名に加え、その評価項目の意味を端的に表した説明文にまとめておきます。

そして、それぞれの項目に対して、

評価が高い = 自社らしさを理解した上で貢献できている

という方程式になることが大切です。

例を挙げてみます。

  • 企画力…顧客の課題を解決できる具体的な方法を実行可能な形にまとめることができる

  • 傾聴力…顧客のインサイトを汲み取り、相手の気持ちが救われるよう聴くことができる

上記は弊社の例です。企画力、という項目自体は一般的ですが「実行可能である」ことが重要だと考えているので、そのように明記しています。
また傾聴力は、聴くこと自体が目的ではなく、相手の心がスッキリする、救われる、といった現象が大事だと考えています。そして、本人さえ気づいていない想い(インサイト)にたどり着くことが目的です。

このように、仮に項目名は一般的な名称であっても、その定義に自社らしさが反映されていることが大切です。もちろん、自社らしい評価項目そのものをつくることも有効です。

評価項目は「自社らしさ」を重視したものにする

評価項目は、複雑に考え抜かれているほうが「すごそう」に見えますが、大切なのは自社に合っている実際的なものであることです。実際的、という面が重要で、コンサルタントなどが作成すると、実際に沿っていないものになるケースが多いのです。

おすすめとしては、まずは自社内で最も理想的な社員を一人設定し、その社員の能力を分析することです。ここでいう理想的、というのは、実際に業績を上げている、実際に生産性が高い、実際にチームの士気を高めている、といった人物です。もちろん、すべてを兼ね備えた人はいないかもしれませんので、実務能力ならこの人、人間性ならこの人、という風に分けてもかまいません。
これらの人たちの能力や人間性を細分化し、どういう力や魅力を持っているのかを言葉にしてみます。この際「御社ならではの資質」があるかもしれません。

社風によってそれは様々です。「優しさや寄り添い」を重視する会社もあれば、「行動力や実行力」を重視する会社もあります。御社らしさを前提においた上で、考えていただくのが最良です。

評価項目をオリジナルでつくればブランディングになる

人事評価項目は、「自分たちが本当に大切にしていること」が反映された項目になっていることが理想的です。それができれば、会社のブランディングが進みます。

人事評価項目は、どの会社にも共通する普遍的な項目はあると思います。ですが、どこからからその基準をぱっと持ってくるだけでなく、やはり自社内でよく考えて設定するほうが運用する上で効果があります。

オリジナルでない評価項目は、深く考える必要がないため、まさに「評価をすること自体が目的」になってしまうためです。また、実際に評価を入力する際に社員から「この項目の意味を教えてください」と言われるかもしれません。その時に、ふんわりとした回答をしてしまうと、部下から上司への評価は下がることになります。

自分たちが大切にしていることを評価項目にする。
それはつまり、評価が高かった人=自社らしさを理解して貢献している人 ということになります。
この感覚が深まれば深まるほど、社員同士に共通認識が生まれ、社員全員が同じ方向を向いて経営できるということです。つまり、インナーブランディングです。

全員を主体的な社員として育てるために

どの会社でも、社員同士の温度差は様々だと思います。やる気のある人は、やる気のない人を見てモチベーションを下げます。

そういった意識ある人たちが、自分が感じている通りに評価入力をすることは、一定の気が晴れる面もあるでしょう。一番怖いのは、意識の高い人たちが上司の判断に納得できずに辞めてしまうことです。

同時に、今この瞬間はやる気のない人でも、一生そのままか?というと、それは出会いと経験によります。ある時から目覚めて、活躍する人に変わることも珍しくありません。

そういった人たちは多くの場合、自分を客観的に見る力が育っていないことが多いのです。メタ認識と言いますが、自分はこれでいいのか、良くないのか、その観点そのものが育っていないということです。これだと成長は難しいでしょう。360度評価は、その人を客観的に見るための材料としても有効に使えます。

一人ひとりが主体的に動ける社員に育っていく。さらに、社長や役員、上司たちも、生涯成長することで、よりよい社員が育つようになる。

360度評価をうまく活用し、よりよい会社にしていっていただければと思います。


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