Voy.1【これイチ】世界を変えるぞ!北極海航路
【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **処女航海**
北極海航路って知っていますか?
「北極海航路」が最近注目されてきている!
アジアとヨーロッパを結ぶ海上物流網が短縮される!?
スエズ運河の代替ルート!
温暖化で北極海の氷が無くなる!?
フランスのワインやチーズが安く買えるようになる!?
上記のようなキャッチ―な言葉に見覚え、聞き覚えはありませんか?
これらはみんな「北極海航路」の未来を読み解くヒントになるかもしれません。そもそも、なぜ北極海航路について語られるようになったのでしょうか?
ここ10年ほどの間に、北極海航路の認知度が海運業界のみならず、政治やビジネス業界など、広く一般の世界にまで浸透しつつあるのではないかと感じています。
この、【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズでは、新しい国際物流網として期待されている「北極海航路」について、楽しく・わかりやすく説明していきたいと思います。
北極海航路はアジアとヨーロッパの最短ルート!
地球温暖化が叫ばれるようになって久しい。2021年8月9日に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書では、このままでは2030年までに地球の平均表面温度は、1900年と比較して1.5℃上昇すると発表されました。
基本的に現在の世界秩序のスタンスとしては、この温暖化は、地球環境にとってはマイナスであると捉え、温暖化を食い止めよう、もしくは進行速度を緩めようとしている。
しかし、世の中には常に裏と表(利点と欠点、Pros&Cons)があり、実は、この温暖化によって少なからず恩恵を受けている産業界があることも事実なのである。
それは、「海運」の世界だ。
特に日本を含む極東アジアとヨーロッパを結ぶ海運ルートにとっては、現在の主要なルートに変わって、北極海航路を利活用できるという可能性が出てきたからである。
下の図のように、日本(ここでは横浜港を想定)とヨーロッパの主要港であるロッテルダム港を結ぶ海運ルートのうち、赤色の線で示しているルートが、現在もっとも一般的*なスエズ運河を経由するルートである。
*一般的と書いたのは、この他にも南アフリカの喜望峰を周るルートや、太平洋を横断した後にパナマ運河を経由し大西洋へ抜けてからヨーロッパに向かう航路も存在するからである。
一方で、青色で示すルートが北極海航路である。日本を離れたのちにベーリング海峡を目指して北上し、北極海を経由して大西洋側へ通り抜けることができる。
この図はメルカトル図法で描かれてるため、高緯度エリアにおける線の長さは実際にはもっと短い。前述の横浜港とロッテルダム港を結ぶ両ルートの航送距離の比較をすると、
青色の北極海航路ルート: 13,000km
赤色のスエズ運河ルート: 21,000km
約6割の距離で両地点を行き来することが出来る。
しかしながら、北極海航路は北極海にあり、1年の大半の時期は氷で覆われている。これまで、北極海航路が利用されてこなかったのも、海氷が融解するすることがなく(もしくは融解するエリア、時期が非常に限定的であった)商業ベースでの船舶の運航に不向きであったためである。
ところが、最近の温暖化により北極海の氷が融解する期間が以前と比較して長くなってきている。このため、新たな海運ルートとして注目されている訳である。
日本はアジア圏の中でも、北極海航路の東の玄関口であるベーリング海峡にもっとも近い地理的な優位性を持ち合わせている。
このため、国土交通省などの各省庁も早くから北極海航路への関心を寄せており、産官学が連携して、北極海航路の利活用推進のための協議を行っているところである。
フランス産のワインやチーズが、日本のスーパーでこれまでよりも安く買える将来も、あり得ない話ではない。海上輸送の距離が短くなって、輸送期間も短くなれば、その分新鮮な食料品がさらに安く輸入できる可能性があることは、別に突飛な想像ではないのである。
このように「北極海航路」は、決して私たちの暮らしと無関係ではない。この【これイチ】では、北極海航路に係わるあらゆるテーマを、実例なども交えながら解説していくこととしたい。
それでは、次の航海へ出発だ~!
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参考URL集
北極海航路の利活用推進について 国土交通省
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