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コミック感想『イイナ-Feel For Love』
『イイナ』原作:S-nery Angel、作画:成瀬かおりの漫画です。1998年発行。コンシューマーゲームのプロジェクトの一環として描かれたようですけど、内容はゲームとは独立したオリジナルになっています。
「S-nery Angel」は大塚英志さんと白倉由美さんご夫婦の、共同ペンネームのようです。
アイドルの自殺を扱った内容から、私は「岡田有希子さん事件を長年のテーマにしてきた白倉さんがメインの執筆者では」と思ったのですが、ネットでは大塚英志さんがメインだったという情報もありました。
巻末エッセイ漫画で出てくる原作者が髪の長い女性だったので、白倉由美さんだと思ったんですけどね(汗
白倉由美さんと大塚英志さんの共同作品で、どちらがメイン執筆者か分からない他の作品には『贖いの聖者』があります。「原作・大塚英志 作画・白倉由美」とありますが、実際は白倉由美さんの単独作に近かったとか。
共同ペンネーム作品は判断がむずかしいですね。
★ ★ ★
作品の大きなテーマは「アイドルとは何か?」
ベースになっているのは、岡田有希子さんの自殺事件だと思います。
でも、現実世界で亡くなった方についてのレポートではなく、「アイドルの虚像を押し付けられた少女が自殺する」「彼女にそっくりの人工生命体がニューアイドルとしてデビューする」という流れで、ドキュメンタリーの要素はゼロです。
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アイドル・生紙あや可の親友だった主人公・柴田光は、彼女の自殺と「私は千の私になって還ってくる」という言葉に翻弄される。
傷ついた光の前に「硝子坂イイナ」という、あや可にそっくりの少女が現れる。光は素人プロデューサーとしてイイナを新たなアイドルに成長させていくことになる。
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あらすじを書けと言われたらこうなるんですけど、この文章じゃ単なるSF要素のあるラブコメみたい…もっと精神的に病んだものを感じるストーリーなのに。
普通の美少女アイドルに見えて、遠い昔のハリウッドスターのクローンのような存在だったあや可。その化身である人工生命体・イイナを主演にした映画を撮って、自殺した親友あや可への想いを昇華させたい光。
光の兄の遥哉は、「イイナ」とは別の「あやかRE-BIRTH」というCGアイドルをデビューさせ、「アイドルは生きた人間でなくていい。人々を死(タナトス)に導く魅力があっていい」という理念で光と対立する。
しかし作画の成瀬さん、大変そうでした。ヒロインのイイナの他に「生紙あや可」「あや可RE-BIRTH」「イイナの原型になったハリウッドスター」を同じ髪型・顔で書き分けなきゃいけなくて。
「遠い昔に死んだ銀幕スター」「現代日本で悩んで死んだ少女」「そのクローン」「彼女をモデルにした立体CG」真にアイドルとなるのはどんな存在であるべきなのか…
普通の厚さのコミックス2巻なのに内容がとても濃いです。次回に続けますね。