SaaS営業道~“イノベーター理論”上のタイプ認識の大切さ(後編)~
こんにちは。WealthParkの浮田です。
前回は「自社サービスがイノベーター理論上のどのタイプに属するのか」を意識して営業活動することが大切である理由、それが出来なかった場合のリスクに関して書いてみました。
前回記事
今回は『“イノベーター理論”上のタイプ認識の大切さ(後編)』ということで、実際の営業現場でイノベーター⇒アーリーアダプター⇒アーリーマジョリティーと顧客タイプが移り変わる中で、どのように商談が変わっていったのか、三つのパートに分けてまとめていきます。
1.事業立ち上げ期の顧客「イノベーター⇒アーリーアダプター」
このフェーズでは、市場に自社プロダクト以外の類似サービスがほぼ存在していない状態になると思います。顧客は、スタートアップのサービスや、解決したいと思っている課題とその解決方法でもあるプロダクトを、初めて目にすることがほとんどです。
その為、商談の進め方においては、プロダクト紹介はもちろんのこと、プロダクトが目指すビジョン・解決したい課題の背景や目的が、顧客にとって予算を取ってでも取り組む価値がある!と感じてもらえることに重点が置かれます。
プロダクトも成長期で、実績・事例もほどんどない状態の商談を支えるものはなんでしょうか。私は、営業の熱量や信念だと思っています(笑)
サービス提供の背景を説明する中で、疑似的な課題整理も実施しますが、今思うと整理というよりも顧客課題への”共感”に近いものでした。
このフェーズでは、如何に意思決定をスピーディーに、自分と顧客の熱量を冷まさないような対応や進め方をするのかを最も大切にしていました。
2.何となく課題が顕在化している顧客「アーリーアダプター」
スタートアップにも少ないながら既にサービス提供の実績があるはずで、顧客も他社事例や動向を強く気にされ始めます。1章の共感にプラスして、より実利(費用対効果)と実現可能性が求められる感覚です。
”費用対効果”や”実現可能性”は定量的に示すことが当然必須となります。ところが、特に弊社のようなVertical SaaSで、運用に深く入り込んで既存のビジネスモデルの変革を目指すサービスの場合、導入後に効果が得られるまでの時間軸も比較的長く、短期の「コスト削減」だけでは提供価値を100%示すことが出来ないこともあります。
商談では、可能な限り課題を広く深く取り、課題解決によって得られる効果を最大化することが強く求められますが、課題整理によって得られた定量的な数字をベースに顧客の事業目標と自社のビジョンを折に触れて紐付けることも、議論を進める上で非常に大切です。
定量的なアプローチと定性的なアプローチとを組み合わせて、サービス導入への合意を感情的でなく論理的に得ることを重要視していました。
3.課題は明確で、解決の為の選択肢もある顧客「アーリーアダプター⇒アーリーマジョリティ」
このフェーズでは顧客側に選択肢(自社からみたら競合他社、その他類似のプロダクトやソリューション)が複数存在しています。
事業経営上の課題解決にも優先順位があることが多く、「自社プロダクトで解決できる課題」が顧客にとって「最優先で解決したい課題」であるとは限りません。
従って、営業が自社サービスに関連した話を深堀する前に、顧客にとってもっと大切なことがあります。「事業全体の中で、解決したい課題とその優先度」を特定することです。それができて初めて顧客は検討する準備が整い、自社サービスを含むその他サービスとを比較検討することができます。
商談が「検討することへの合意」があって初めて前に進むイメージです。「検討することへの合意」を取ることも難易度が高いですが、競合他社が跋扈する中にあって「検討することへの合意」が取れたあとの商談の進め方も工夫が必要です。
今回はフェーズごとの商談の変化を確認することが目的の為、商談の進め方そのものに関してはまたどこかでまとめたいと思います。
4.まとめ
良く言われることですし、フェーズに関わらず常に意識が必要なことではありますが、改めて視点の高さと広さの違いが営業活動に大きく影響を及ぼすことを実感しました。
「自社観点⇒顧客観点」、「プロダクトが提供する価値の提案⇒(顧客がおかれている環境での)プロダクトの役割・価値の合意」というように、文字にすると伝わりにくいですが、顧客との関わり方・言葉の伝え方は自分の今の立ち位置を確認し、振り返り、行動を変えないと商談をブラッシュアップすることはとても難しいです。
ITプロダクトは世に溢れていますし、顧客の状況含めた市場環境は目まぐるしく変わっていきます。だからこそ、営業は商談に自分なりの軸を持って、どうやったら顧客にサービスを利用してもらうもっと手前で価値を感じてもらえるかを考えながら、日々進化しないといけないなと思います。
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