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脱ヒキニート体験記2 初ボランティア

 若者サポートステーションに通い始めて半月くらい経った頃、ボランティアの参加を薦められた。
内容は視覚障害者のかたのガイドボランティア。
視覚障害のある方と関わった経験はまったくなかったし、「失敗したらどうしよう」「失敗して怒られたらどうしよう」という気持ちで頭がいっぱいになった。
けれど、今までこういうときに「できません」とか「いや、ちょっと」とか言って断ってき続けた人生だったから、今までと同じ回答をしていたらこのままヒキニートのままだと思った。
私はヒキニートでなくなりたいと思ったからサポステに来たのだから、今までは違う回答をするしかなかった。
以来、私は〝二つ返事〟を心がけるようになる。どんなに失敗して傷ついてみじめな思いをしようとも、いつか働いて人並みの暮らしをしたい。その一念で安請け合いをすることにした。

 とは言え最初に取り組む内容としてハードルは高い。
視覚障害者の方向けの製品発表会のようなイベントのためのガイドボランティア。
最寄り駅までやってきた視覚障害の方にこちらから声をかけて、腕につかまってもらって会場まで一緒に歩く。
知らない人に話しかけることも、腕に触れられることも、歩調を合わせて歩くことも、すべてが私には難しいと思えた。
ガイドボランティアの心構えのようなパンフレットを入念に読んで、当日は朝早くから最寄り駅と会場の間の道を何度も往復して、道の段差や曲がり角の見通しを確認した。
駅から会場の道さえ歩ければ何とかなる。そう考えていた。

 実際に主催者側から割り当てられた担当場所は、駅のホームで電車から降りてきた視覚障害のかたを改札まで誘導する係だった。
事前に聞いていた話と違う。一瞬パニックになりかけたが〝二つ返事〟で引き受けた。
電車から降りてきた白杖をついているかたに片っ端から声をかけた。
たまに間違えて杖を持っているだけの晴眼者にも声をかけてしまった。
間違えるたびに心に傷がつく感覚があったが、その傷を大事に舐めて味わってる時間はない。
次から次へとやってくる電車から降りる人を確認しなければならない。出る改札を間違えてガイドのいないほうに一人でも行かせてはいけないという使命感が芽生えていた。
ボランティアの腕章をつけていたから、知らない人に声をかけるという普段の自分ならできない大胆なことができたのだと思う。立場や役割は人を変える。

 ボランティア終了後、展示会に出展されている商品を見せてもらうことができた。
ディクテーションアプリと連動して点字を出す技術にも感心したが、点字の電子辞書のデモンストレーションが面白かった。
「孫引きもできるんです!」と意気揚々と実演してくれて感銘を受けた。
気がつけば「この点字辞書のこと、いろんな人に話します」と私は口走っていた。
咄嗟に言ってしまった言葉だけど、いまだに機会さえあればこのときの話をしているし、こうしてnoteに書くことで〝孫引きのできる電子点字辞書〟の存在を少しでも知ってもらえるなら、あながち口から出まかせってことにもならないだろう。

 このときの経験もあり、最近同行援護従業者養成研修を受けた。
ボランティアに緊張してビビってた頃の私に話してもきっと信じないだろうけれど。

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