地山謙
『易経』の六十四卦のなかの
は、「地山謙」と呼ばれる。高い山なのに、低い地面にいるようにみせる謙虚さを表すという。
この卦の解釈は、
➖➖謙は享る、君子有終、吉。
となっている。謙虚、謙遜、謙譲は美徳であって、それでもって世の中をスイスイとまかり通ることができ、「有終」つまり終わりを全うしうるというのだ。これが「吉」であるのはいうまでもない。
ものごとは立派にしめくくるのが大切てある。もちろんスタートも重要であるが、ゴールに入らなければ何にもならない。
見事なゴール・インであることを「有終の美」という。
『詩経』の大雅に、
➖➖靡不有初、鮮勝有終。
という句がある。
➖➖初、有らざることなし、克(よ)く終有ること鮮(すくな)し。
と読む。スタートはたいてい見事なものだが、見事なゴール・インはまれである。➖➖これがこの句の意味なのだ。
詩経のこの句は、殷を滅ぼした紂王の事をうたったものだが、未曾有の暴君といわれた彼でも、はじめはそんなにひどくなかった、というものである。
権力の座に坐ると、なにか見えなくなるものがあるのではなかろうか。
権力に馴れて傲慢になり、それが当たり前と思うようになってしまう。『易経』の卦はじつに深い意味をもっている。
有終の美を飾る秘訣は「謙」にありと教えているのだ。
地位が高くなっても、驕り高ぶらず、低い姿勢でおれば、物事が良く見えて、ゴール・インは間違いないのである。
むかしから、易の六十四卦のなかで、この「地山謙」が最も吉づあり、かつ利である、と説く学者が多い。
(『弥縫録』陳舜臣・著。最終章より部分引用。一部、漢字に変換)
なんだか、今のR国や華の国のトップに聞かせてやりたいような話である(笑😁)。
🐻