ひとりでトロントに行ったときの話。〈後篇〉
なんだかんだ友人と一緒に過ごしていたトロントだったが、ついに終日ひとりで回るときが来た。
本当のトロントひとり旅
この日は前日までの疲れもありスロースタート。目的は午後に予約したシティクルーズ・トロントとCNタワーだ。それまではユニオン駅周辺を歩いたり、街中のフォトスポットを巡ったり、街中の石碑を見つけては歴史的建造物の成り立ちを知ったりとぶらぶらと歩き回った。
まさかこの日に最大の困難が訪れようとは思ってもみなかった。
シティ・クルーズの乗り場近くにビーバーテイルズを発見!ナイアガラ・フォールズで食べた美味しさが忘れられず、またしても購入。いろんな味があって、どれも美味しい。この日は寒かったので、ホットドリンクとともにいただいた。
シティ・クルーズが半分過ぎたあたりでまさかの大雨。2階席の良い席を陣取っていたのだが、安全のために1階におりてというアナウンスで、やむなく1階でぎゅうぎゅう詰めになりながらクルーズすることに。通り雨だったのか、乗り場に着く頃には雨はあがっていた。
お次はCNタワーで雨が上がってようやく晴れ間がみることができた。
(入り口でコヨーテ撃退スプレーを没収されてしまったが。)
無事にCNタワーも見終わり、宿に戻ろうとしたところ、想定外のトラブルに見舞われた。なんと人身事故のため電車がストップしてしまったのだ。
ピンチ到来
帰宅時にまさか運休に遭遇するとは思わなかった。帰ろうにも乗り換え駅まで電車が動かず、復旧がいつになるかも分からない。すでに日は沈み、歩いて帰るわけにもいかない。どうしようと思っていたときに友人からのアドバイスを思い出した。
「駅の構内にはオレンジのベストを着た職員が立っていて、困ったときには助けてくれるんだよ」と。
幸いにもトロントには地下鉄以外にもストリート・カーと呼ばれる路面電車やバスも多い。だがどれに乗れば良いのか分からない。
意を決して、「ここに帰りたいんです」とGoogle翻訳アプリを使って調べた英語で伝えてみる。スタッフさんは身振り手振りで教えようとしたけど、不安そうな私の顔を見て、一言。
「Follow me.」
乗り場まで案内してくれ、「何番目の○○という駅で降りるのよ」と何度も繰り返し教えてくれた。本当にトロントの人は親身になってくれるやさしい人が多い。案内してもらったストリート・カーに乗り、指折り数えながら教えてもらった通りに降りた。おかげさまで無事に家まで辿り着いたのだった。
クイーンズパークを歩く
この日はロイヤル・オンタリオ博物館とトロント大学をまわることにした。
ロイヤル・オンタリオ博物館
この博物館は北米では5番目に大きな博物館で、とにかく広い。たくさん歩くことを覚悟しておいた方がいい。地下鉄から地上にあがると目の前に博物館が見えた。大きくて分かりやすい。しかし大きすぎてエントランスが見当たらない。駅の出口を間違えてしまったのだろうか。さすがに博物館の周りを1周するのは避けたい。偶然通りかかったマダムに「エントランスはどこですか?」と聞いてみると、笑顔で道案内してくれた。
「ロイヤル・オンタリオ博物館に行きたいの?そこの道を左に行ったら、エントランスよ。エントランスはこんな形をしてて、すぐに分かるわ。あら、あなたツーリスト?どこから来たの?トロントはいいところよ。博物館楽しんで!」
こちらの御礼を言わせないほどの怒涛の説明だった。なぜこんなにも聞き取れるかというと、マダムが分かりやすい英語を使ってくれたから。中学生の授業であった道案内の英語そのままだった。(きちんと授業を聞いておいてよかった)陽気すぎるマダムは「日本からきたよ。ありがとう。」という私の返答を聞いて、後ろ手に手を振りながら去っていった。
無事に辿り着いたロイヤルオンタリオ博物館は、美術品、考古学、自然科学など多岐に渡るテーマで展示している。この日はスチューデントデーだったのか、黄色いスクールバスが何台も止まっていて、中学生にまじって展示を見て過ごした。
気づけば3〜4時間くらい滞在していたと思う。お腹が空いたので、近くのTim Hortons でクッキーとカフェラテを入手。このクッキーは購入すると寄付につながるという商品だった。こういう商品ってステキだなと思う。
ちなみに滞在中はほぼ毎日Tim Hortonsに通っていた。注文がキオスクでできるので、英語が話せない私にはありがたい。
この日はトロント大学の敷地内にあるいくつかの教室棟に入ってみた。古い建造物の中で学べるのはすごく良い。歴史を感じることで、自分もその長い歴史の一員として社会のために未来のためにどう行動するのかが考えられると思うからだ。
トロント大学ショップもあって、スウェットと布バッグを購入した。生地が分厚く裏起毛になっていてあたたかい。観光客が何人も購入していた。学生が使っているテキストも売っていた。
憧れのロケ地へ
ダウンタウンから少し離れた区域にあるのが本日のお目当てカサ・ロマだ。1914年に完成したゴシック様式の美しい外観をもつこの建物は、ナイアガラの滝を使った水力発電で成功をおさめたカナダの大富豪ヘンリー・ミル・ペラット卿が、350万ドル(当時)の巨額を投じて築き上げた豪邸。しかし、事業の業績が悪化と戦後の不景気のために、10年足らずで手放すことに。そんな歴史もロマンを感じさせる。現在はトロント市が所有し、博物館になっている。
なぜここに来たかったのかというと映画のロケ地として有名だから。
『X-MEN』『シカゴ』『美女と野獣』など様々な作品に登場している。
いちばん有名なのは『X-MEN』でプロフェッサーXのミュータント学校としてカサ・ロマが登場する。
アートにふれる
翌日はようやく快晴に。実はトロントは快晴が多いそうだが、わたしが雨女すぎてほとんど曇りか雨だったのだ。(遠足や旅行はたいてい天気が悪い)
ようやく晴れたとあって、地元の方も散歩している人が多かった。
トロントは街中にアートが溢れている。歴史的な建造物とモダンな建造物が融合しているし、ストリートアートやアーティストのモニュメントがそこかしらにある。散歩をしているだけでもすごく楽しい街なのだ。
オンタリオ美術館
そんなアートの街トロントにある現代アートからクラシックなアートの両方が揃っているオンタリオ美術館。ここが思っていた以上に広くて、時間が足りなかった。インスタレーションもあればコンテンポラリーアートもある。
そしてクラシックなアートも。点数が多いのとテーマごとに分かれた部屋の展示方法も面白くて、隅から隅まで見てしまった。
セント・ローレンス・マーケットから映画の聖地へ
最終日はセント・ローレンス・マーケットでランチしつつ、映画の聖地に行くことに。家族から頼まれたメープルシロップは実はスーパーでは見当たらず、ギフトショップで買うしかない。セント・ローレンス・マーケットには観光客用のギフトショップが充実していた。(そのほかにはチャイナタウンのギフトショップも品数多めで比較的安価だった)
自分用に購入したメープルティーとアイスワインティー、メープルバターが本当に美味しかった。ナイアガラの滝でゲットしたアイスワインもおすすめ。
映画の祭典
北米最大の映画祭であるトロント国際映画祭(TIFF)の会場。トロント映画祭はアカデミー賞につながる賞レースのはじまりとなる重要な映画祭。ノン・コンペティションのため、観客賞(ピープルズ・チョイス・アウォード)が最高賞となる。賞レースに自分たちが選んだ作品がノミネートされる可能性があるのは、映画ファンとしてワクワクする。そしてTIFFグッズのショップがある。トロントにきたら絶対に行きたいと思っていた場所だった。
最後の夜は、友人おすすめのパブに連れていってくれた。ナチョスとマッケンチーズをいただいたのだけど、野菜たっぷりのナチョスがすごく美味しかった。
こんな感じで9泊11日の自由気ままにトロントを堪能してきた。
ひとりでもできるんだなという自信がつくと同時に助けてくれた人への感謝が尽きない旅だった。またカナダ行きたいと思う。
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