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新卒4ヶ月目、休職1週目

休職することになった。

最近、「そろそろ限界かもしれない」と感じることが増えていたが、実際に限界は越えてしまっていた。

先日、普段以上に仕事に行きたくない日があった。
「嘔吐でもすれば休めるのに」などと思いながら、それでも気力を振り絞って出勤した。
仕事がはじまってしまえば、きっと結局はどうにかできるだろう。そう思っていたが、自分でも普段とは様子が明らかにおかしいことに気がついた。

いつも以上に、本当に何のやる気も出ない。
それでも、頼まれた簡単なことはやるし、接客もやらなければならない時はやっていた。

私は普段、緊張すると早口になる癖があるようで、「もっとゆっくり話す意識をしたらいいよ」と何度か言われていた。とはいえ、たまにしか意識できず、結局早口で接客してしまうことがほとんどなのだが、この日は違った。

今までにないくらいゆっくりと言葉を話し、むしろ、ゆっくりしか話せない感じで、接客をしていたのだ。自分でも違和感が大きかった。
お客様は「ご丁寧にありがとう」と喜んでくださったが、普段の自分であればあれほど落ち着いて話すことはできない。
「落ち着いていた」というよりも、どこか自分が自分ではないような感覚に近かったかもしれない。

頭がぼんやりして、何の気力も起きなくて、時々右手が震える。
息が少し浅くなって、ゆっくりと辺りをうろうろしていた。

どうにか人の形を保とうとしているが、少しの刺激で簡単に壊れてしまうだろう。
そんなギリギリの状態であることを自覚はしていて、「早退したいなぁ」と思いつつ、自分の感情のバランスが崩れるのが怖くて、どうにかそっとやりすごそうとしていた。

が、そんな状態で到底乗り切れる訳もなかった。

私の様子を見て心配した先輩に「大丈夫?体調悪い?」と声をかけられたとき、それまで我慢して堪えていたものが抑えきれなくなってしまった。
ギリギリのところを綱渡りしていた状態から、足を踏み外してしまったような。張り詰めていた心の糸が、プツンと切れてしまったような。
自分では制御できないほど、感情が溢れてしまった。

しゃくりあげるほど涙が止まらなくなり、しばらくうずくまったまま動くこともできなかった。
同僚が心配して付き添ってくれ、先輩方も気を遣ってくださっていた。

少し落ち着くまで休ませてもらっている時、一人になったタイミングで突然吐き気がして、少し嘔吐してしまった。
朝イメージしていたことが現実になっている。そう思いつつも、色んな人に迷惑をかけてしまっていることへの申し訳なさや、嗚咽が止まらないほどの苦しさでいっぱいで、どうにかなりそうだった。 

その後、一人で落ちついて歩けるようになってからすぐ早退させてもらった。
帰宅後は体調は回復したものの、精神的にもう無理だと悟ったので、翌日も欠勤させてもらえるよう連絡を入れ、病院の予約をした。

どうやらそれなりによくない状態だったらしい。
まずは休息が必要だと言われ、医師の判断でしばらく休職することになった。

まさかそこまで大事になるとは思っていなかったため、正直少し驚いたが、同時にかなり安心した。

休職中は、仕事のことを考えなくてもいいんだ。毎日プレッシャーを感じることもないし、倒れそうになるほど立ち続けていなくてもいい。ずっとずっと休みたかったから、それを叶えてもらえることが本当に嬉しかった。

しかし、いざ休職してみても、「心穏やかに休む」ということは難しかった。

必要な手続きをする中で上司とやりとりをしながら、迷惑をかけて申し訳ないと思ったり。同僚のことを思い出しながら、支えてくれた感謝と己の不甲斐なさでいっぱいになったり。会社にはどのように思われているのだろうかと心配になったり。この先休職期間が終わっても復職できるだろうかと不安になったり。
仕事のことを考えないようにしたくても、どうしても頭に浮かんでしまうことばかりだ。

何か好きなことや心を落ち着けられることをして気を紛らわせたい。リラックスして、しっかりと心身を休ませたい。
そう思って何かしようとするが、何もやる気になれずに鬱々とした気分のまま布団に転がってばかり。せっかく時間をもらえたのに、ただぼんやりと一日一日が過ぎていくのを感じて虚しくなってしまった。

休職期間の始めの数日は、本当にそんな具合で何も手につかず、気持ちも落ち着かない状態だったと思う。

それでも、仕事をしなくてもいいという事実は本当に大きくて、以前のように昼夜問わず急に泣きたくなることはほとんどなくなった。

そして本当に少しずつではあるが、以前よりも気力が出ることも増えてきたと思う。
こうして落ちついて文章を書けることとか、小説の設定を少し考えることとか、新しくダウンロードしたアプリゲームに夢中になれたこととか。

どうすれば「休む」ことができるのか、とぐるぐる考えていた数日前より、確実に「休む」ことができていると感じる。

「休職」という軽くはない結果になったが、それでも、取り返しがつかなくなる前に休職できて良かった。自分が完全に壊れてしまう前に、修復する時間をもらえて本当に良かった。

まだ色々と頭の中で考えすぎてしまうことも多いが、今はまだ休むことに専念して、それが許されている状況なんだということを自分でも覚えていたい。

まだ休職したばかりではあるが、どうかこのまま、心身共に順調に回復することができますように。