IT業界の下請け構造
大企業でも発生するシステムトラブル。
大規模な社会インフラに関わるシステムだと一般の社会生活にも大きな影響が出てきます。
その時に度々問題となるのが責任の所在です。
そこで「下請けに任せているので分からない」というコメントを聞くこともあるのではと思います。
そこで、150名規模の独立系IT企業に在籍し、中小企業診断士として営業とコンサルする立場で実情をお伝えします。
「IT企業」とは
「IT企業」といっても様々で抽象的な表現になりつつあります。
「IT関係の仕事しています」と言われても、「で?」となるくらい伝わらないことも多いと感じます。
・HPなどのweb制作
・クラウドやサーバー構築などのインフラ
・自社製品を開発して提供するパッケージベンダー
・IT製品をサブスク提供するITベンチャー
・企業の基幹システムを構築する
・AIやデータ分析
などなど。思い浮かぶものは多々あります。
今回は、いずにも該当しないのですが、最も多くの人材が携わっていると思われる、「ITエンジニアを抱えて下請け仕事をするソフトハウス」
の立場でお伝えします。
主には企業の業務システムを構築する業界。
例えば、生産・販売・在庫・受発注・売上などの管理システムを構築します。人材のスキルは、言語系の知識を持ちプログラミングができることです。Java、windows系のC#などがよく使われます。
業界構造
多重下請け構造になるのですが、問題は「深さ」と「枝分かれ」です。
ユーザー企業(システムを導入する企業)と契約する元請けIT企業。
そこから、下請けに流れていくことで2次、3次と階層が生まれます。
3次、4次になると中小企業になります。
この階層の企業も外部企業を活用してチームを作ります。
そのため、階層が打ち止めではありません。
更に枝分かれして、そして下請けを使います。
自社社員のみでは採算性低いため、外部企業の人材を活用します。
階層の下なので当然受注単価は安くなります。
どの企業も同じ考えなので、枝になり深くなっていくスパイラルです。
3次で請けた案件を更に2次下、3次下まで活用してチームを作って対応することは頻繁にあります。
問題発生時の責任所在は明確にしにくくなりますね。
下請け企業間のコミュニティは結構ある
IT業界は下請け構造が完全に定着し、そこに徹する企業は多数あります。
関西でも2千社~3千社はあると言われています。
その企業間の連携は結構強く、様々なコミュニティがあります。
経営層、営業担当同士の集まりは非常に多いです。
これが横の繋がりになり、案件の情報共有を行い3次、4次、5次レベルの仕事を融通し合っています。
※この下の階層には、自社で社員を抱えず、他社の人材を他社案件に導入
し、中間マージン(数万程度)取るブローカー企業も多数あります。
ユーザーに直接対応する必要なく、引き合いから契約に繋がります。
課題見つけて提案する必要もありません。
楽な仕事の取り方です。
最後に
IT業界では、常識的なことですが異業界から転職された方など、最初はかなり戸惑います。
長い歴史で培われたきた文化であり、完全に定着もしているため、多重下請け構造は継続していくでしょう。
ただ、ITエンジニアの価値低下を生み出してもいます。
様々な企業へIT化提案をすることで、中小企業含めIT化が進む可能性もあります。下の階層に埋もれ、細分化された業務をこなすことに多くの人材が使われていることは機会損失になっている可能性もあります。
IT企業自体も変革の時かもしれません。
最後までありがとうございました。
IT業界については、色々お伝えしたいと思います。