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【読了】シュリーマン『古代への情熱』|耳の病気に焦点を当てた読書感想文

はじめに

偉人の伝記はほぼ読まないのだけど、世界遺産の勉強をしていて気になる存在になり、私と同じ病気だったことが分かり、しかも手術の前日!
「あなたのことがもっと知りたい」と思い、読み進めることにした。

▼私の病気のことはこちらにまとめてあります。

シュリーマンがどんな人かというと、遥か昔に、今でいう「FIRE」を達成してしまった人。こう言えば、歴史好きじゃない人も読んでみようかなと思うのですが、どうでしょうか。日本にも来たことあるよ、しかも、八王子!

ざっくりいうと、40歳くらいまでに一生懸命働いて成功して巨万の富を手に入れ、残りの人生を遺跡発掘に捧げていた人。

誰もが知る遺跡(トロイヤ、ミケーネ、ティリンスなど)を発掘するのですが、空想好きなシュリーマンは、昔読んだ伝記を元に、掘ってみたら、大当たり!この方、素人です。

そして、いろんな言語を習得するのに努力をいとわないので、遺跡発掘時に現地の人とのコミュニケーションが抜群にできた。これも遺跡発掘に一役勝っている才能ではないかと思う。

通常ならここまでが感想になりそうなのだが、わたしの本来の目的は、9割ほど読み進めてやっと出てくる。耳の病気のことが。
シュリーマンは、晩年に耳を悪くする。これが直接の「死」に繫がっている。
以下、本書より抜粋する。

シュリーマンはこの親友と連れだって、十年まえと同じく、遠くイダの山頂にまで騎行を試みた。だが、この遠乗りのおりに、彼ははじめて耳の不調を訴えた。そこでフィルヒョウか診察してみたところ、それはもうかなり進行した病気で、両耳の骨の腫脹がひどいため、難手術を必要とするであろうが、とにかく手術をうけるべき状態にあることがわかったのである。それ以後も、シュリーマンはときおり難聴を訴えはしたけれども、彼自身、まさかこれが不吉な兆候だとは気づくはずもなく、また、まわりの人たちにしても、六十八歳にしては旺盛すぎるほど活気のあふれた彼の物腰から、その病苦の深さを推しはかるなどということは、まさに不可能にちかかった。

引用:ハインリヒ・シュリーマン『古代への情熱』
出版社グーテンベルク21(2013年)位置no.2229

病気発覚から死までを時系列で追ってみる

11/17頃 耳の手術を行う
 ↓
12/12 手術を行なった町(ハレ)を出て列車移動
 ↓
途中、ライプツィヒ(ハレから31km)、
ベルリン(ライプツィヒから190km)に寄る
 ↓
12/15 パリ(ベルリンから1050km)へ
※激痛のため一度医者へ。治療を受けずに旅立つ
 ↓
ナポリ(ベルリンから1700km)へ移動
12/26 昏睡状態に
※炎症が耳から脳に及んでいて成す術もない
その数時間後、帰らぬ人に

参考:ハインリヒ・シュリーマン『古代への情熱』
出版社グーテンベルク21(2013年)位置no.2355〜2366
※距離は Googleで調べました

手術をした身としては、そうなの、元気なの、耳以外は、と共感する部分があった。
動きたくなるのも分かる気がした。それにしてもすごい距離を移動している。
そして、術後1ヶ月強で命を落としている。

この方が生きた時代は19世紀。
CTがまだ無かった時代だ。CTが発明されたのは20世紀後半のこと。外耳道から覗いただけでは分からない部分もあり、CTを撮らないと分からない部分もある。
本書には一度も「真珠腫性中耳炎」という言葉は出てくることはなかったけれど、下記文面から、骨を破壊して脳に炎症が起こっているのが分かる。
髄膜炎とか脳腫瘍の合併症だ。

炎症が耳から脳に波及している

引用:ハインリヒ・シュリーマン『古代への情熱』出版社グーテンベルク21(2013年)位置no.2366

「骨を破壊する」病気=真珠腫性中耳炎
と理解している。もしかしたら≒くらいのほうがいいのかもしれないけれど。

また、本書を読むと、旅の途中に、熱病に侵されている記述がある。中耳炎の原因ともなるウイルスによる感染症もあったのではないかと思う。真珠腫性中耳炎は、慢性中耳炎の一種である。医学の専門家さんにこの辺はお任せして。

まとめ

最後の最後に私の知りたい耳の事が記載されていて、たかが耳のこと、されど耳のこと、侮るなと肝に免じた。

私には、シュリーマンほど好奇心に溢れて世界中を飛び回るエネルギッシュさはないけれど、ホント耳以外は元気だから、ついつい後回しにしてしまって、好きなことにまい進してしまう。

昔は「死」に繋がる病だったことが分かったし、医学の進歩には感謝しないといけない。



参考文献:ハインリヒ・シュリーマン
『古代への情熱』出版社グーテンベルク21(2013年)


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