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一日一頁:ディヴィッド・グレーバー、酒井隆史、芳賀達彦、森田和樹訳『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』岩波書店、2020年。
やりがいを感じずに働いたり、無駄で無意味な仕事が増えているのはなぜか。そうした仕事や働き方こそ「クソどうでもいい仕事」である。その消息を人類学者が明らかにするが、松下圭一郎氏のアナキズム研究など、最近、人類学が頗る面白い。
富裕国の三七%から四〇%の労働者が、すでに自分の仕事を無駄だと感じているのだ。経済のおよそ半分がブルシットから構成されているか、あるいは、ブルシットをサポートするために存在しているのである。しかも、それはとくにおもしろくもないブルシットなのだ!もし、あらゆる人びとが、どうすれば最もよいかたちで人類に有用なことをなしうるかを、なんの制約もなしに、みずからの意志で決定できるとすれば、いまあるものよりも労働の配分が非効率になるということがはたしてありうるだろうか?
この議論は人間の自由に強力に寄与するものである。わたしたちには、抽象的に自由を語ることを好む傾向がある。自由は、そのために戦ったり死んだりすることもできるほど重要だと主張することさえもある。ところが、わたしたちは自由であるとはどういうことか、ないし自由を実践するということの本当の意味とはなにかという問いに深く立ち入ることをしない。本書の主要な論点は、具体的な政策提言をおこなうことにはない。本当に自由な社会とは実際にどのようなものなのかの思考や議論に、手をつけはじめることにある。
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