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一日一頁: 前野ウルド浩太郎 『バッタを倒すぜ アフリカで 』光文社新書、2024年。

将来の夢を「職業」」で選べなければならないっていう「強制=矯正」ってしんどくね?

やりたいことをやりぬける世の中にしていくことが大人の責任だと僕は考えています。しかし研究者あるあるネタ満載の抱腹絶倒の好著、くりかえしになるけど、こういうアプローチって好きだな。

時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。

 進路を選ばなければならない学生時代、夢を抱いていないと、社会不適合者の烙印を押されるため、無理やり夢を捻り出さなくてはならないプレッシャーを感じていた。若者が夢を持たなければ、不健全だから夢を持ちなさい的な、圧迫に近い空気が漂っていた。
 そこまでして夢を持たなければいけないものなのかしら。夢はキラキラ輝く美しいものの象徴だが、その裏には深い闇と胡散臭さが潜んでいるのではと畏れを感じていた。
 正直に白状すると、私は「なんだか楽しそう」という、うっすい理由で、もうこれでいいやと早々に昆虫学者になることを夢に仕立て上げた。他の夢候補を検討することを放棄し、夢探し戦線から離脱した。世の中のことがよくわかっていないというのに、進路を選ぶとか、そんな無茶なと思いつつ、手っ取り早く、それらしい夢を持つことで、プレッシャーとおさらばしたのだ。
 同年代がどうやって夢を見つけているのか知りたかったが、その機会は皆無だった。なぜなら、夢を語ることはこっぱずかしいのだ。みんな隠して教えてくれない。夢へと直結する進路をどうやって選んだのかを友達に聞いても「えっ?なんとなく」とか「親がやっているから」という素っ気ない答えが多かったように思う。

前野ウルド 浩太郎 『バッタを倒すぜ アフリカで 』光文社新書、2024年、575-576頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。