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一日一頁:菅原潤『マルクス・ガブリエルの哲学 ポスト現代思想の射程』人文書院、2023年。
マルクス・ガブリエルについての論書が出始めていることにも驚きを隠せないが、ガブリエルの社会哲学の核に「市井の人々の目線で思索していること」に瞠目したい。
加えて、他者と共同して生き抜く態度として、「恐らくは自己と他者の折り合いを通じて最善とまでは言わないものの、よりましな道筋をつけられる」よう努力したい。
最後に「進歩」の問題に触れておきたい。再三にわたって述べているように、一切の意義の領野を包括する意義の領野のそのまた意義の領野、つまりは「世界」が存在しないというのがカプリエルの立場である。この考え方を歴史的時間に当てはめれば「進歩」で求められている道徳教育によって、本当にわれわれは最終的に道徳的に進歩するのだろうかという疑念が生じてくるだろう。この疑念についてガブリエルは特に答えてはいないが、恐らくは自己と他者の折り合いを通じて最善とまでは言わないものの、よりましな道筋をつけられると考えているのではないだろうか。
その意味でガブリエルの社会哲学は、行き渡りばったりの問題を解決する身の丈に合ったものだと言えるだろう。最後にドイツに発生している雑多な問題を羅列する叙述を示すことで、市井の人々の目線で思索していることを確認しておきたい。
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