あんときのフィルムカメラ 原武史『最終列車』講談社 + MINOX35GT
最終列車
コロナ禍は鉄道という交通手段の本質をあぶり出した!=帯。2022年、最初に手にする一冊は、鉄学者・原武史さんの『最終列車』講談社。原さんの著作は常に親しんでいますが、最新作に今から楽しみです。
1月3日から読み始めた、原武史先生の『最終列車』(講談社、2021年)ですが、鉄道を切り口としながら、日本社会の来し方と今後をあぶり出す非常に秀逸な快著です。
2022年1月28日付書評紙『週刊読書人』に原先生のこの著作の書評を僕が寄せていますので、ぜひ、お読みいただければと思いますが、鉄道という視座から、近代日本の来し方、そしてそれを精査したうえで未来を展望する優れた一冊で、目からウロコの続く驚愕の読書体験となりました。
ぜひ、手にとってほしいと思いますが、鉄道に注目するなかで、例えば「江戸時代は分権的な体制で『日本』という観念は一般にまだなく、明治になって中央集権化が達成されることで初めて国民国家が誕生する」と私たちは、理解しがちですが、実際はそうではなく「十七世紀には日本橋を中心とする全国的な街道網」が整備され、地方と中央の関係は、明治以前から実在していたなんて指摘されますと、本当に目からウロコの連続です。
スピードから楽しみへ
新型コロナウイルス感染症の拡大は、「見知らぬ人々どうしが接近すること自体が忌避されるようになった」現在をもたらしましたが、それは公共をどのように組み立てていくのかという問題を提案することになったと原先生は指摘しますが、鉄道とてそれは例外ではありません。なぜなら見知らぬ人同士がそこで社会を学ぶ場が鉄道であったからです。
さて、鉄道の歴史を振り返れば、それは高速化への猪突猛進がその歩みでしたが、それが無効化された現在、何に固有の価値を見い出せばよいのかと問えば、それは、例えば、鉄道に乗ること自体の楽しみ、線を歩む楽しみをもう一度復権させる必要があるのではないかとの指摘です。
このこと自体はひょっとすると鉄道に限られた問題ではなく、私たちの暮らしにおける様々な局面に関しても当てはまるのではないかと僕は考えています。
撮影する楽しみを教えてくれるMINOX35GT
さて、カメラです。
今回、使用しましたフィルムカメラは、1981年7月発売のミノックス35GTです。
1981年といえば、僕自身小学生でして、鉄道好きの友人がい、よくわからないまま連れて行かれては、写真を撮ったり、録音したりした記憶があります。鉄ちゃんにはなりませんでしたが、思えば、当時は、キャノンのレンジファインダーカメラで撮影したように思います。
今回は、鉄道を撮影はしてはいませんが、近所をミノックス35GTでスケッチしてみました。ミノックスを使うのは20年ぶりぐらいで、かつてはフィルム2-3本で撮影したあと、処分したように記憶していますが、20年ぶりぐらいに撮影してみると、目測ですが、非常に使いやすいカメラという使用感を強くいだきました。
機能としましては、絞り優先の電子制御のシャッターのコンパクトカメラで、シャッタースピードは1/30-1/500、距離は目測してレンズ先端の距離リングを手動で合わせる仕組みです。
使い方としては、前蓋を明けるとレンズが出てきますのでこれで撮影可能となります。続いて被写体との距離を目測、距離リングを合わせてシャッターを切るという流れで、いちいち面倒くさい手続きを経て撮影するのですが、僕はそんな手続きが結構好きですね。ギミックとしても優れています。
原先生の『最終列車』では、点と点を結ぶだけにとどまらない「線」の価値を鉄道に見出すことで、ふたたび、新しい公共を鍛え直すことが可能ではないかと示唆されていますが、インスタントなデジタルカメラにはない、こうした「線」のような「手続き」、すなわち撮影するという手続きを楽しむことも、ひょっとしたら新しい公共を鍛え直すことになるのではないかなどと想像すると楽しいかも知れませんね。
完全マニュアルですと撮影にちょっとヨイショが必要ですが、全部設定する必要のないAEカメラって意外と使いやすく、オートフォーカスのように丸投げではなく、露出制御はこちらでできるのが絵作りにはアドヴァンテージになるのがいいですね。
レンズは3群4枚Color-Minotar 35mm/F2.8で、なかなかよく写ります。
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撮影は2021年9月6日から10月10日にかけて。フィルムはKodakのネガフィルム「Pro Image 100(プロイメージ100)」を使用。香川県仲多度郡多度津町、三豊市、善通寺市、丸亀市高松市で撮影しました。瀬戸内の秋の始まりをスケッチしましたがいかがでしょうか。ちょっと光線漏れしてますね(汗