【162】本の話、無患子の話:「シャボン玉」 豊島与志雄さん 宝戒寺でもう一つ見つけたもの 2023.8.15
1 豊島与志雄さんの童話
豊島与志雄さんと言ったら第一番に思うのは「レ・ミゼラブル」1917年(大正6年)の名訳です。この大作を美しい日本語に魔法のように変換して紹介してくださったことは、ほんとうに有難かったと思っています。
でもこの翻訳は、本来作家志望であった豊島さんが生活のためにやむなく引き受けたものだったというのは不思議な巡り合わせだったのですね。
作家としての豊島さんは大人向けの小説のほかに、あの「赤い鳥」にも参画し童話も沢山書いておられます。子供のころ、私の家は本の山だったのですが、その中に豊島さんの童話集も混ざっていて、「エミリアンの旅」「夢の卵」「銀の笛と金の毛皮」など、インドやギリシャ?やフランスなどを舞台にした不思議でエキゾチックなお話が多く、強く印象に残っていました。大好きでした。
2 青空文庫、青空書院
今ネットでちょっと豊島さんの童話について調べてみようとしたら、なんと、青空書院、青空文庫というものがあって、それらの懐かしい童話の全文がフリーで読めるのでした。
驚きました。「レ・ミゼラブル」も全文アップされているのです。
いいのかなあと思って確認したら、
「青空文庫は、一言で言えば著作権の切れた作品(2018年までは作者の死後50年、現在は死後70年が経過した作品)を収集し、それらを電子書籍としてネットで公開するサービス。 校正や編集はすべてボランティアの方によって担われており、それゆえに完全無料で読書を楽しむことができます。」
ということなのだそうです。青空書院も同じなのでしょうね。
何か申し訳ない限りですが、過去の名作の絶版になってしまっているようなものがこうして読めるというのは有難い限りで、これから時々利用させてもらおうと思いました。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/42647_22959.html 夢の卵
https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/45060_50147.html エミリアンの旅
https://aozorashoin.com/title/42632 銀の笛と金の毛皮
今回、これらに何十年ぶりに再会して、読み直してみて、豊島さんの童話は今の人が読んでも十分に面白いのではないかと思いました。
こうした童話に子供の頃に出会ったら、皆、本好きになるのではないかなとおもったりします。
3 豊島さんの童話「シャボン玉」
本題に入ると、豊島さんの童話に「シャボン玉」というものがあります。
昔々、トルコのハボンスという手品師が、ある魔法使いから魔法の無患子の実を沢山もらうのです。
無患子の実の汁はたいへん泡立ちがよいそうで、ハボンスさんがその魔法の汁を付けてシャボン玉を吹くと、雀でも蛇でもなんでも観客の望む形になるのです。この芸は大人気を博し、ハボンスさんは「世界一のシャボン玉吹き」という称号をゆるされるまでになるのです。
しかし沢山あった無患子の実も次第になくなってゆきます。
無患子の汁がすべてなくなったときいったい何が起こるのか?
気になる方は原作を読んでみてくださいね。
https://aozorashoin.com/title/45054 シャボン玉
4 無患子(むくろじ)の実 宝戒寺
かなり以前になりますが、無患子の実に出会ったのは鎌倉の宝戒寺でした。
境内を散策した折に、上を見ると丸い実が房になって実っていたのです。
そしてその木を見ると無患子の木と書いてあったのです。
無患子は実際洗濯にも使われたようですし、この丸い果実の中には硬くて丸い黒い種が1個入っていて、これがお正月の羽根つきの羽の先の黒い玉になるのです。
これが無患子なんだと、出会えて大感激でした。
無患子については下の記事を見つけました。
5 青と赤のお団子の実 宝戒寺でもう一つ見つけたもの
この時宝戒寺ではもう一つ不思議な実を見つけたのです。
青い実と赤い実が二つお団子のようにくっついて、大岩の上ちょこんと乗っていたのです。
綺麗だし可愛いし不思議だし、赤い実は美味しそうだし、
なんだろうと辺りを見回してみると、ありました。
こんな感じで木に生っていたのです。
赤い方が下で木にくっついていて、先端側に青い実が付いているのです。
家に帰ってから調べてみてわかりました。
「槇(まき)」でした。
百人一首の「ムスメフサホセ」の一番目
村雨の 露もまだひぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
の槇でした。
赤い実は花托で、青い実の方が果実でした。
そして、この赤い花托は甘くて食べられるのですが、青い実の方は有毒で二粒食べただけでお腹を下すそうですから注意してくださいね。
もっとも青い実は硬くて不味いそうですから無理して最後まで食べる人はいないでしょうが。
6 「槇」実食
わかってみると、槇は生垣に用いられることが多い木なので、けっこうそこらにあるのでした。
葛西臨海公園の駅前でも見かけましたし、深川の古石場親水公園を歩いていた時にも実が生っているのを見かけました。
そこで、ある時、一粒いただいて味見してみました。
赤い実はぷよぷよと柔らかく、食感はねっとりしていました。
味はうす甘いだけで酸味とかのアクセントはなく、正直、積極的にもっと食べたいというほどのモノではありませんでした。
まあ「話の種」止まりでしょうかね。
どなたか奇特な方が品種改良したら面白いかもしれませんよ。<完>