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アクセシビリティを考える・・・色使いの工夫で誰もが使いやすいプロダクトへ

医療ヘルスケアに携わる中で、高齢者や疾患を抱えた方々も利用しやすいアプリを作るためには、アクセシビリティの配慮が欠かせません。そのような視点で何か参考になる書籍がないかと探していた際、手に取ったのが『カラー・アクセシビリティ』という一冊です。重厚な書籍もありましたが、まずは読みやすく実践的なこの本から始めることにしました。


1.色盲と高齢者の色覚|多様な見え方への理解

まず最初に色盲についての説明が丁寧にされています。
全く色が識別できない人、つまり白と黒の階調でしか物が見えない人というのはかなり稀で、色を認識したり識別する能力が低い状態を指しているという説明から始まります。女性よりも男性に現れやすく、男性の8%に色盲の一般的な症状が淡割れるようです。

ここは本には書かれていませんでしたが、この色盲はX染色体上で遺伝します。男性はXとYを1つずつ持ち、母親からX染色体を、父親からはY染色体を受け継ぎます。男性はXを1つしか持っていませんので、Xが色盲の遺伝子X’を持つと、X'Yとなり色盲となります。女性の場合は、XとXなので、母親からX'が引き継がれたとしてもX'Xとなり、色盲としての症状はでないということになります。以下のページに図も書かれていてわかりやすかったです。

また高齢者の場合も考える必要があります。高齢者の色の見え方については、このような記載を見つけました。短波長の光、つまり青色の光を透過させなくなるために、青色に認識が弱くなり、青色などの寒色系は見えにくい傾向になるようです。

年齢を重ねると水晶体(目のレンズ)は老化するだけでなく、紫外線により濁り始めます。
水晶体の老化は40代から進み、透明から黄色、褐色へと徐々に変化をします。
80代になると、水晶体は茶色になり、まるで茶色のレンズのサングラスを通して色を見ているようになるのです。
透明から黄色に着色された水晶体は、短波長の光の透過率を減少させます。
その結果、青色の光が到達しにくくなり、色の識別能力が落ちてしまうのです。
そのため、目から見える世界が段々と黄色~褐色、茶色がかって見えてくるようになります。

https://www.einlicht-opt.jp/product/topics/topic55/

つまり、色盲や高齢者の方をいれると、この色によるアクセシビリティの向上は医療ヘルスケア領域ではかなり重要なのではないかと最近強く感じます。

2.色の使い方|アクセシビリティを向上させるアイデア

その対策のとして、色の使い方についてのアイデアが色々と述べられています。
・明暗でコントラストをつける(なお赤と緑は暗い上に、色盲に見えにくい色)
・補色でコントラストをつける(補色=色相環で正反対の色)
・色の寒暖でコントラストつける(赤紫〜黄色が暖色系、黄緑色〜紫が寒色系)
・彩度でコントラストつける
・コントラストのチェックはグレースケール表示で
・できるだけ多くの人が識別できる色を使う(ユニバーサル・カラー)

3.テクニック|色に頼らないデザインの工夫

さらに色に頼りすぎないためのアイデアが色々と述べられています。
・オンラインショップでは、商品名に色をしっかりと記載しておく。
・色の名前には色相の色を使う。(ぶどう色ではなく、紫色)
・棒グラフは色だけでなく、パターンも使う。
・折れ線グラフは色だけでなく、点線などのスタイルを使う。
・円グラフでは色だけなく、ラベル名を表示する。
・URLリンクは色を変えるのでなく、下線を引く。
・フォームの「必須」入力はラベル名を赤にするだけでなく、(必須)を添える。
・写真の上に文字を置く場合は、文字に背景の色をつける。

4.まとめ

これらのアイデアを実務で試しながら感じたのは、アクセシビリティを意識することは単に色の選定に留まらず、すべての人にとって使いやすいプロダクトを目指す第一歩であるということです。
この本はボリュームも薄いので、まずはアクセシビリティへの入門として最適な内容に感じました。日々の業務の中ですぐに試せるようなわかりやすくシンプルな内容が嬉しかったです。

医療ヘルスケアにおけるアクセシビリティの重要性は、今後ますます高まっていくと感じています。小さな工夫の積み重ねが、より多くの人につかってもらうための近道なのかなと感じます。これからも学びを続け、さらに実践を重ねることで、真に誰もが使いやすいプロダクトにブラッシュアップしていきたいと思います。

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