23.4°
今、僕の目の前で電灯がチカチカしている。
僕はわざわざ椅子をくるりと足で回して、そいつと見つめ合っている。
こんなお嬢さんをあんな部屋に...
だなんてとんでもないです。
チカチカ
これくらいの部屋がたぶんちょうどいいんです。というか、部屋を与えてもらうこと自体有難いので、僕は電灯をただただ見ている。
そういえば前にもチカチカしていた気がする。
それは一つ手前の電灯だろうか。いや、右手のだったかな。そもそもこの部屋のだっけ。
記憶ほどあてにならないものはないと、度々たまげる。自分のも、他人のも。だからこうやって書き記す。のかもしれない。ただ嘘を書こうと思えば書ける。書いてないけど。信じる信じないかは?はい。
でも、僕らはその辿々しい記憶を頼りに生きている。その記憶がひとりの人間そのものを形成し、一つでも欠けたらその人間じゃなくなる。色んな世界線がある話を見るのは好きだが、まあ見るのが好きのとこれの話は別。今の世界線において、もしもあの時、みたいな話は嫌い。
そう考えると、人の存在そのものに疑問を抱き始める。偽情報が入り混じった形成体ってなかなか興味深い。
な、チカチカ。
空調がね、12時何分くらいになったら勝手にオフになるんだけど、どういう設定?まあ僕はこの設定のまま一年ほど過ごして来たわけだけど。
今日の太陽は時々は出てるけど、今は出てない。出てる時もあからさまに遠かった。物理的には低いだけだけど、遠く感じるんだよね。傾斜30度くらいの暖かさは全くここまで届かない。
12月らしい寒さは別にいいけど、急すぎる。って友人に送ったら、庅だって。んだよ。彼女も分からないってさ。んだよ。
つまらないなって、たぶんみんな思ってる。彼女も、斜め後ろで話してた二人も、酒を一緒に飲んだあの人も、空調も、猫も。面白いこともあったりはするよ。たぶんだけど、一応ね。
チカチカも?つまらなくなっちゃった?
色々と調整してみたりしてるけど、常世の理屈と嵌め合わせるのが難しいのよ。いや間違えたな、常世じゃないわ。
常世って、いつもこの世なのかあの世なのか覚えられないんだよね。今こうやって書いから覚えたかも。まあこの世もあの世も、この世の人が勝手に言ってるだけであって、この世があの世の可能性も無きにしも非ず。
チカチカ?
あれ、完全な消滅したな。常世行きか。いや、「この世」にかえったか。さあ?
ま、僕もこの部屋とは、今年は今日で最後なんだ。来年は元気になってるといいね。
それはもうチカチカじゃないって?
そうか。じゃ、ばいばいだね。
ばいばい。
2023.12.19 星期二 曇り時々晴れ