小林製薬の紅麹問題の調査になぜ時間がかかるのか?
紅麹問題の調査おいて重要な考え方
品質管理をする人間であれば誰もが知っている言葉があります。
「トレーサビリティ」
要は商品がどのロットで作られたのか原料なのかを、
ロット番号や作られた時期から順追って、
追跡する方法や能力です。
私はJIS(日本産業規格)の品質管理責任者という資格を持っていて、
JISの審査も何度も受けてきました。
どの審査でも必ず聞かれる項目の一つにトレーサビリティがあります。
トレーサビリティが出来ていると
基本的にトレーサビリティが確立していると、
ロットの追跡でそこまで時間が掛かる事がありません。
トレーサビリティに関わる商品は記録があり、
第三者からのチェックも入っている事が一般的だからです。
逆に時間が掛かるという事は
どこかのチェックが抜け落ちている可能性が高いです。
要はチェックが無いので、
不確実性が増しているという事です。
紅麹問題で原因の特定に時間が掛かっている理由
小林製薬ほどの大きい会社だと、
記録がないという事は稀です。
時間が掛かっている一番の理由は、
プベルル酸が検査項目に入っていないという所がポイントです。
要はチェックリストの中にない要因を探す事になったため、
不確実性が増したという事がニュースから伺えます。
しかも、直近のニュースでは外注からの混入が「疑われて」います。
この疑われてという所が一番厄介です。
小林製薬は自分の知り得るチェック項目をすり抜けた事象の検査をしています。
つまり、品質規格を一から作っている状態に近いのです。
一般的に品質規格を一つ作るのに5年以上はかかります。
今、小林製薬の行っている事は、
工程の中でプベルル酸の発生個所の特定、
検出などの許容量の決定、
外注業者の管理、
作業標準の確認
などなど
普通の品質管理規格を作る工程を、
常にメディアに見張られながら行っています。
しかも有識者の監修や既存の規格がほぼ無いので、
手探りで行っている状態です。
品質管理の観点で言うと
この問題の原因究明と解決策の提案には
年単位で時間が掛かると思っています。
規格はそれくらい時間をかけて、
作っていくものなのです。
この事件の成り行き
まずこの紅麹に関わった工程は全て廃版にするのが
妥当になっていくと思われます。
品質管理の規格を作る工程を落ち着いて作る時間が必要です。
社会的にも類似商品が復帰するまで、
10年単位の努力が必要であると思います。
外注管理の難しさ
小林製薬がプベルル酸を特定できた一つの要因は、
恐らく通常業務に関わるトレーサビリティが出来ていたので、
原因の絞り込みはある程度できたのだと思います。
その中で外注への原因の追究まで及んでいるのが直近です。
小林製薬と同等の管理があれば原因までも早いと思いますが、
ここまで時間が掛かっているところを見ると、
外注先でも不確実性の高い要素があって、
断定が難しいのだと考えられます。
続くニュースが待たれます。
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