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2023.7 アナグマ
ちょっと冒険をしてみようと、普段は国道沿いから見ているクマタカを追いかけて山に入った。
「山」と言っても登山道はなく登山客も一人もいない、名前も付いていないようなところ。
峠道は何度か使われた形跡があり、朽ちた看板があった。
沢沿いの比較的歩けそうな斜面を登って山に入っていく。
迷わないように目印や方向を確認しつつ、進路を探って進んでいく。
30分程歩くとイカル、アオバト、ジュウイチ、ツミの声。
鳥の生息環境としては良い感じ。
良かった、このフィールドを選んだのは間違ってなかった。
こうやって誰もいない来たことがないようなフィールドを1人で開拓していく時、
人間が踏み込めない自然のギリギリを攻めていくような実感が優越感と高揚感をくれる。
もっと簡単にクマタカを見れる場所は色々あるけど、自分だけが観察しているペアという優越感が観察に集中力をくれる気がして、私はこっちが向いているかも。
人の生み出す音が一切聞こえないのも心地が良くて安心する。
こういうことを考え出すと、
私は鳥そのものが好きというより、環境の中で生きてる鳥の姿やシーンが風景として好きなのかもしれないな、という結論に落ち着く。
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直上からツミ♂・ジュウイチ、向かいの山からアオバトの鳴き声。
思考が迷走しつつも、とりあえずの目的地であった1番手前のピークに到達。
ここからであれば普段の国道よりもかなり近くで、かつ見晴らし良くクマタカを観察できる。
クマタカの飛翔ルートから見にくい場所を慎重に選定してブラインドを設置する。
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時折ジュウイチが鳴きながら飛んでいくのが見える。
大体、クマタカが大きく飛翔する時間帯は経験則から11時~13時頃。
ここの子達は年季の入った成鳥のペアで、大抵11時半に旋回飛翔した後に手前の谷の中へ消えていくか、さらに奥の山へと進路をとる。
この日も変わらず同じルートを飛び、谷へと降りていく姿を観察できた。
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場所取りで警戒させるのではという懸念は少なからずあったものの、特にそのような様子もなくひとまずは安心。
降りていく谷がどの辺りなのか、谷に入るまでの飛翔コースから狩場の候補地がおおよそ推定出来るかもしれない。
ここからは育雛が終わってからの秋冬の宿題にしよう。
きっとその谷のどこかにあの子の狩場となる水場か獣道があり、枝に身を隠してじっと何時間も獲物を狙っている。
あわよくばそんな姿も見てみたいし、撮ってみたい。
ここで観察を続けていれば、きっとさらに時間帯や場所を絞っていける。
そしたらどうやってそこに行くか、沢の下流から遡上するのが安全かな?
どうしたら圧をかけずに観察できるか、傾斜にブラインドをかける??ギリースーツで待機する?
そんなことを考えつつも日暮れが近いのでお片付け。
さて帰ろうかなというところで、斜面下、自分が登ってきたルートあたりから獣の音。
のっそりとした気配から一瞬熊を警戒したが、歩き方の振れが大きくあまり軸が定まらない感じ。
一言で言うと緊張感と迫力がない。
アナグマだ。
距離は50mちょっと。
地面ばかりを気にしながら、ちょうど真っ直ぐこちらに進路をとっている。
私には気づいていない、ように見える。
もしかしたら臭いとかで気づいているのかもしれないけれど、少なくとも警戒はされていなそうだ。
この子は待っていればこちらに来てくれるかもしれない。
それにしても
呑気に地面で餌を探しながら、周囲を見回すことも無くのっそり歩く姿が無防備すぎる。
あれアナグマって割と緩い子達なの…?
丹沢の山小屋付近で1度見かけた時は、40m位の距離感で逃げられた記憶があったのでギャップを感じつつ、音を立てないように木陰に移動する。
できるだけ隠れてこっそり撮りたいね。
アナグマはというと
地面の匂いを嗅ぐような仕草で、時折モグラのような前足で土を掻き分けたりしながら、ゆっくりこちらへ向かってくる。
いつもは人がいないこの山で、こうやってゆったり餌をとって歩き回っているんだろうな。
そんなこんなで
距離はもう20mを切りそうな感じ、
私もカメラを準備をする。
私のカメラは一眼レフなのでどうしてもメカシャッター音が響いてしまう。
恐らくその音でこの子はこちらに気づき、数秒硬直した後に逃げていくだろう。
この子の自然な表情・仕草を撮れるのは最初の数連射だけ。
そう思いつつ距離はもう15m近い、
ここら辺が限界だと思いシャッターを切る。
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こちらに気づいたか気づいていないかくらいの表情。
私のシャッター音にアナグマの動きがゆっくり止まり顔を上げる。
数秒の後
そのままゆっくり、こちらに顔を向けて近づいてくる。
思っていたリアクションとズレる。
どうにもこちらに興味を持っているように見える。
カメラの音を意識しながらも積極的に近づいてくる。
6m位で再びシャッターを切る。
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3m。
匂いや息遣い、重心の変化で落ち葉が立てる音、全てが感じられる距離感。
数秒こちらをうかがうような仕草を見せた後、私を通り過ぎて谷下に向かって降りていった。
今多分捕まえられる距離感だったな。
ちょっと警戒心が低すぎて心配になる。
君下ばっかり見ててクマタカに食べられない?大丈夫?
一応そっち狩場だよ、、と思いつつ、
深追いする装備もないので見送った。
人間なら降りれない急な斜面をのっそりのっそりそのままの歩調と歩き方で降りていく。
やっぱりどん臭く見えても野生なんだな。と思った矢先、ズルっとコケて転がった。
ガサガサと音を立てて転がり落ち、また何事もなかったかのようにのっそり歩き始める。
大丈夫かこの子。
きっとこの子はいつもこんな感じで山を歩いているんだろうね。
その後も何度かこの子と出会うことが出来、すっかり親しみをもっていたが2024.5以降姿が見え無くなった。
アナグマ撮影にハマるきっかけになった子。