花様年華〜プロローグ
プロローグ
— 花様年華
人生の中で最も美しく輝く瞬間。
他の言葉に言い換えれば青春、ってことになるのかな。
何か夢中になって打ち込んだり、自分の人生すら変えるような運命と思える人と出会ったり。
人それぞれ「いつ」っていうのは違うと思うんだけど、だいたいは若い頃、学生時代とか10代の頃を指すよね。
ジンもそう。
彼の「花様年華」も10代の仲間たちのことだったみたい。
でも、楽しいエピソードも、とても悲しそうに辛そうに話すのがなんだか気になる。
私はと言えば、「花様年華」なんて言える素敵な青春時代は送ってこなかった。
勉強が好きで人のことをあまり気にかけずにいたせいか、周りにいたのは家族だけ。
恋愛に興味を持ったのも、大学院での研究が落ち着いたくらいの頃で、周りのみんなは何もかも知って何もかも一度は終えた後だった。
こんな私でも韓国の研究所に就職する直前に付き合えた、たった1人の人に結婚や子育てを意識せずにはいられない年齢あたりであっさりフラれ。
日本への傷心帰省中に出会ったのがジンだった。
優しくてカッコよくて、でもたまに笑顔に影を落とす彼から目が離せない。
気になる歳の差を返上してくれたのはなんと彼の方だった。
ねぇジン。
もし、こんな私にも「青春」があるとしたら、それは今だよ。
ジンと出会ったあの日から始まった「青春」。
大切なジンの「花様年華」を取り戻したい。
その笑顔が心からのものになるよう、私ができることはしたい。
私の「花様年華」はジン、あなたそのものだから。