見出し画像

一泊二日でウトロ・斜里・網走に行ってみた。知床の『大自然に圧倒される』だけじゃない旅。【前編】(廣岡俊光)

■ プロローグ

 眼下に見えるのは北海道が誇る名峰・雌阿寒岳(1,499m)と、阿寒冨士(1,476m)。その美しい稜線とフォルムに、早起きした眠たい目も輝きを取り戻し、これから始まる旅への期待で胸が躍ります。

 少しすると、屈斜路湖の湖面もチラッと見えました。

 実は新千歳-女満別は初搭乗。羽田-女満別は乗ったことがあったんですけどね。所要時間は約40分。本当にあっというまに着いちゃいます。

■ 旅の目的は2つ

 今回の旅は、北こぶしリゾート知床ホテル&リゾートの広報、村上晴花さんから『クマ活』の案内をもらったことがきっかけでした。

いま、ヒトとクマの関係が危うくなっています。互いのテリトリーを侵さず、知床の地でいかに共存できるか。その道を探す責任が、⼈間にはあるのではないでしょうか。私たち北こぶしリゾートは、2020年から知床のクマを守るための活動「クマ活」を始めています。例えば、草刈り。⽣い茂ったヤブを減らせば⾒晴らしが良くなり、クマが誤ってヒトの⽣活圏に⼊ってくることを防げます。他にも、クマ⾒物による渋滞を解消するべく交通整理をしたり、クマへの理解を深めるための啓発活動を⾏ったり。この最果ての地を、ヒトとクマが⼼地よく過ごせる場所にするため、さまざまな活動を計画中。「知床を、つづけていく」ために、私たちは真剣に動こうと思います。

北こぶしリゾート CSR活動より

 村上さんとは、Clubhouse(最近アプリ起動させてないな)で知床のみなさんとおしゃべりしたことからご縁ができました。ことしの夏には、酪農学園大学でクマの研究をされていて、番組でもたびたびお世話になっている佐藤喜和教授らのチーム(村上さんは佐藤ゼミの出身)が、札幌でおこなった草刈り活動にも個人的に参加させてもらいました。

その時のことは以前noteで書かせていただきました。こちらもぜひご覧下さい。

 で、今回の『クマ活』では佐藤教授を知床にお招きしての講座と、ワークショップが行われると聞いて、ぜひ参加したい旨を伝えたのでした。

 あとは北こぶしリゾートといえば、サウナ!全国的にも有名になりましたよね。窓が大きくとられ、世界遺産の海を眺めながら入れる、世界中見てもなかなかない環境。そしてこのデザイン。

 うねうね・・・UNEUNA

 カクカク・・・KAKUUNA

 『サウナシュラン2021』でも全国の名だたるサウナの中で見事2位に輝いたそうです。おめでとうございます。

世界遺産を望む流氷サウナが劇的リニューアル。流氷をイメージして直線的なデザインを力強く表現したKAKUUNAと、木の洞窟をイメージして緩やかな曲線でうねりを描いたUNEUNAの2種類が誕生。特に、世界でも珍しい3D加工で木材を削り出すことで”うねり”を生み出した驚きの三次元デザインサウナ「UNEUNA」は一見の価値あり。

SAUNACHELIN2021 より

 わたし自身はいわゆる『サウナー』ではありませんが、全国の人たちが憧れたり目指す場所がそこにあるのならば、それはぜひ体験してみたい!

というわけで、行く前に決めていたのは・・・
★ クマについて学ぶ
★ 絶景サウナでととのい体験

この2つだけ。

 あとはいつものように、皆さんにすべて委ねて楽しむフリースタイル旅です。いざ始まりはじまり~!!

■ 『クマ活』とてもいい。

 女満別空港からはレンタカー。12月なのにオホーツク海側も雪はなく、快適至極なドライブです。

 オホーツク海の雄大な景色を左手に見ながら1時間半。あっという間にウトロに到着です。

 あさ10時半開始、ちょっと遅れての参加かなぁ・・・と心配していたのですが完全に杞憂に終わりました。当日あさ札幌を出発して、10時すぎには知床にいるってすごくないですか?(例年のように積雪があったらもう少し時間がかかったと思います)

 さっそく佐藤先生の講座が始まります。

 佐藤教授からはヒグマの生態に加え、市街地出没が問題となっている札幌市について、常に人や車がそばにある環境でクマが育っていること、さらに『みどりのネットワーク』の都市計画によって、市街地を囲むような緑地整備や、河川敷の緑化が行われていることによって、クマが市街地に侵入するルートとなっていることなどを、ていねいにご説明いただきました。

 先生の考えについては、ことし7月に出版された佐藤教授の著書『アーバンベア となりのヒグマと向き合う』に詳しいので、興味のある方にはぜひお読みいただきたいです。

 ランチは『波飛沫(なみしぶき)さんでラーメン!

えっ、知床でラーメン?!とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、ここはあのミシュランのビブグルマン掲載店。最近、道東エリアの宿題店を次々とクリアできています。大きな窓の外にはオホーツク海。嬉しい!!

  さて。お腹もいっぱいになったところで、午後からはワークショップの時間です。


  参加者は5つのチームに分かれて、ファシリテーターの村上さんからの様々なお題に対して、めいっぱい頭と手を動かしながら、実際にこの場所からそう離れていないところに生きているクマたちと、わたしたちの頭の中に住んでいるクマたちと精いっぱい向き合います。

班の成果を発表させてもらいました。
撮影:伊藤かおりさん

知床に暮らしている人のなかでも、クマに対する温度感や距離感はそれぞれ異なるでしょうし、それでいいんだと思います。

 その上で『クマ活』を通して感じたのは、クマの生態を知ることや、いまクマと人との間に横たわる問題について考えることは、『クマとの安全な邂逅』を楽しみに知床の地を訪れる多くの観光客に対して、それを受け入れる側としてどんなアプローチができるのかを考える第一歩なのではないか、ということ。非常に有益な講座でした。佐藤先生ありがとうございました。

 またワークショップの場では、ずっとお会いしたかった中山よしこさんともつながることができました。ありがとうございます。中山さんはシリエトクノートや流氷文庫などをつうじて、知床・斜里の人々の営みを発信し続けている方です。

 そしていま、中山さんも制作に深く関わった映画『Shari』が公開されています。監督は米津玄師『Lemon』のMVで踊るあのダンサー、と言えば一発で伝わる吉開菜央さん。撮影は写真家の石川直樹さん。この座組を聞くだけでかなり前のめりになる作品です。

 札幌では1/21(金)シアターキノにて1日だけ公開の予定。石川直樹さん、吉開菜央監督のゲストトークも開催されるとのこと。時間が合えばぜひ見に行きたいと思います(平日なので19時半以降の開演だと嬉しい・・・)

 そして高橋海斗くん。高校卒業後、道外から知床に移住し、北こぶしのスタッフとして働きながら、オホーツクの自然を写真におさめ続けています。

  彼の写真の世界。そして野生動物たちの世界。見るものを引き込むチカラがそこにはあります。ホテル内のギャラリーにも海斗くんの写真が展示されていました。

 ようやく会えました~!!今度はゆっくりと動物たちのこと、写真のこと、話を聞かせてね~!!

■ 自然とクマのあいだに

 とても勉強になった『クマ活』のあとは、ワークショップにもアドバイザーとして参加されていた、伊藤彰浩さん&かおりさんご夫妻が営むカフェ『coffee albireo』へ。

 おふたりの本業は動物写真家。日本全国で様々な動物を撮影し、北海道・知床に足を運ぶなかで、2年前に移住しカフェを始めました。そんなおふたりが、去年一冊の本を出版。写真絵本『世界遺産知床の自然と人とヒグマの暮らし』です。

 写真を彰浩さん、文をかおりさんが担当されています。知床の雄大な自然のなかでふるまうヒグマ。一方で、この本のタイトルは『知床の自然とヒグマの暮らし』ではありません。自然とクマのあいだに『人』がおかれています。

  人とは、この地にくらす人のことであり、観光で訪れる人のことであり、自然を愛する人のことでもあり。

 人とクマの距離感がいま問われています。かおりさんは「こどもたちにも伝わるように」という思いで書かれたそうです。シンプルかつ強いメッセージを受け取りました。

 地元の人たちと観光客が交流する場になればという思いでつくられた、とても素敵なカフェにはギャラリーも併設されています。(現在冬季休業中)

 そしてコーヒーのブレンドは『ひぐま』『ももんが』『ケイマフリ』の三種類。ん、ケイマフリってなんですか・・・?

空を飛び、海に潜る。海中ではまさに飛ぶように翼を動かして泳ぎます。潜水能力はとても高く潜水深度は時に70mを超えるとも言われています。例えばペンギンは海を泳ぐ事は出来ますが空を飛ぶことが出来ません。しかしケイマフリは空を飛ぶ事も出来るし、海を泳ぐ事も出来る鳥なのです。

知床世界自然遺産地域 ケイマフリプロジェクト
ケイマフリはどんな鳥?より

 知らなかった~。水陸両用のケイマフリ、すごい。そして赤い足がとてもカワイイ!本物に会ってみたいなぁ。彰浩さん、かおりさん、ありがとうございました。また美味しい一杯をいただきにお邪魔します。

■ 爆速コワーキングスペース

 さて、無事に撤収作業を終えた村上さんが合流。おつかれっした~!案内してくれたのは、coffee albireoから歩いてすぐの・・・魚の加工場?

 「爆速です!」と笑いながら話してくれたのは、ワーケーションコンシェルジュで知床のリアル『なんでも屋』(勝手に名付けてすいません!)の惣田好法さん。ここは新しい魚の加工場と、その奥にあるスペースを利用したコワーキングスペース、知床ベースキャンプウトロラボでした。

 集まっていたメンバーがまた本当に魅力的で。

  ウトロの若者たちのチャレンジをめちゃくちゃ後押ししている、熟練漁師の赤木秀樹さん。とっても優しくて北海道愛にあふれた絵を描いている絵本作家の北山ゆうきさんと、おにぎり屋さん開店準備中のゆきのさんのステキなご夫妻。

 同じ斜里町のなかでの斜里地区とウトロ地区の話、斜里高校の取り組みの話、移住希望者に対するまち側の姿勢の話、ビジターと地元のひとびとをどうやって交じわらせるかの話など、短い時間だったにもかかわらず超濃厚な時間を過ごすことができました。みなさん本当にありがとうございました!

 ちなみにこの加工場で撮影されたTikitokがめちゃくちゃ人気になってるって、皆さん知ってますか?知床のイケメン鮭漁師・圓子瑞樹くんです。

 圓子くんが華麗に魚をさばく配信が面白くて、ちらちら見させてもらってました。残念ながら今回はお会いできなかったけど、今度はぜひ会って話聞いてみたいな~。

 というわけで、前編終了!ここまでまだ知床らしい風景の画像が一枚もなくてすいません。後編にはたぶんある・・・かな?(笑)しばしお待ち下さい。

<過去の行ってみたnoteまとめ>