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北海道コンサドーレ札幌 岩政大樹・新監督のサッカー観②【コンサラボpresents】
北海道コンサドーレ札幌の監督に就任した、岩政大樹さんの「コンサラボ」ゲスト出演回プレイバック第2弾です。
第1弾はこちら。
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岩政大樹さん
山口県周防大島町生まれ。鹿島、BEC、岡山、東京Uでプレーし、2018年引退。現在は、サッカー指導者。著書に「PITCH LEVEL」、「FOOTBALL INTELLIGENCE」、「FootBall PRINCIPLES」など。文化学園杉並中学高校アドバイザー。
なお今回も権利の関係上、配信動画ではJリーグの試合映像を使用することができませんが、こちらには公式動画を埋め込んでいますので、試合映像とともにお楽しみください。
■ 気持ちで負けないが大前提
ーー柏戦、オルンガ選手に対するキム・ミンテ選手の守備
河合所長:オルンガ選手(現 アル・ドゥハイルSC╱カタール)は強いんですけど、キム・ミンテ選手(現 湘南ベルマーレ)は自分の一番高い所で勝負している。ポジション取りもよかったですよね。
岩政さん:「気持ちで負けない」と言うとちょっと抽象的になりますけど、どうしても怖さって出てくるんです。オレは負けないディフェンダーだぞ、ということを示し続けられるかということが大前提でしょうね。そこから技術とか体の強さとか競り合いとか出てきますね。
岩政さん:キム・ミンテ選手はJリーグの中でも正面からのボールの競り合いはかなり強いほうだと思いますね。しっかりとボールの落下地点に入ることができていますし。これだけ大きい選手に対してしっかりと体を当てることができています。
ーーこの試合前に河合所長はミンテ選手とやりとりがあったと聞きましたが?
河合所長:そうなんです。「オルンガ選手が怖い。みんなやられているからどうしたらいいですか?」とミンテ選手から連絡が来ました。そこで、オルンガ選手は左足でキープするとボールを自分の内側に持ってくる特徴があったので、そこをイメージして次のトラップ際を狙えと。あとはボール、オルンガ選手、ゴールが一直線にならない、ポイントを外した位置で見ておこうというアドバイスをしました。
■どういう状況でゴール前を迎えるか
ーーG大阪戦、敵陣CKからカウンターを受けた失点シーンを見てみましょう
河合所長:(失点シーン 2:05~)G大阪の選手が前向きにボールを運べる状態になってしまったのが、カウンターを受ける要因になってしまいました。高尾選手に対してルーカス選手は遅らせるのか、ボールを取るのか。ここは取りに行くことを選択した。ここでみんな一回スピードが弱まるんですよね。あとはミンテ選手は内側に絞りつつ、相手の外側の藤春選手も見えるようなポジションを取れれば、背中向きに反転するシーンは生まれなかったのかなと思いました。
岩政さん:このシーンに関しては細かいミスが重なったかなという印象です。例えばルーカス選手の滑る判断がどうなのかとか。最後の局面のところも、細かく見ればひとりひとりが自分のマーカーに対して、全部背中に置いてしまっている。それによってあいだあいだでフリーな選手がいる状況になっています。速く攻められてしまったことがそもそもの原因かなという気がするので、これでもう1秒2秒でも遅らせられれば、相手のほうを見て真正面に立って対応することができましたよね。
ーー岩政さんが現役時代、カウンターの際ポイントにしていたことは?
岩政さん:まず自分がセットプレーで上がっている状況から戻るのであれば、まずは猛ダッシュですね。相手に繋がれるか繋がれないかは関係なく、まずは猛ダッシュで真っ先に戻るのが一番です。最終的に相手はカウンターで早くゴール前に行きたいんですよね。なので、サイドはある程度いかれても仕方がないと捉えて、中央に戻っていくことがすごく大事です。最終的に「何対何の状況でゴール前を迎えますか?」ということが全てなので、そこに一人でもディフェンダーが多くなっていること。
岩政さん:このシーンでも、もう2秒あれば宮澤選手が帰れていますもんね。という状況をチーム全体で作らせるイメージがあれば、1秒2秒遅らせるだけで全然ゴール前の状況は変わる。そこに密度が高まれば相手はバックパスして、守備陣形を整えることができる。カウンターは時間をどのようにマネジメントするかが大事ですね。
河合所長:常勝チームほど、こういう細かいところができていますよね。
■GKとの共同作業
※このシーンはハイライトに含まれていません…すいません!
ーーこちらは仙台戦の高嶺朋樹選手(現 KVコルトレイク╱ベルギー)の守備。相手のカウンター攻撃で、DFは高嶺選手1人、相手が2人という危険な局面です
河合所長:一度ボールホルダーに行きかけたんですが、自分のほうがボールに早くたどり着けないと判断します。自分の背後に選手がいるのも分かっている。なので、相手のほうに戻ると見せかけてしっかりと時間を稼ぎつつ、なおかつしっかり止まるという対応ができているんですよ。どっちに行かれても対応できるように。これがルーキーのプレーだと思うと素晴らしいですよね。
岩政さん:高嶺選手は僕も大学時代から注目して見ていてすごく良い選手です。この対応も素晴らしかったですね。まず行くか行かないかの判断のタイミングも素晴らしかったですし、最後の対応も素晴らしかった。特に最後の(相手のコースを)切りながら寄って行ったところの角度が素晴らしかったですね。
ーーこういった場合、背後のGKとのコミュニケーションは?
岩政さん:相手の西村選手は右利きなので、高嶺選手は寄って行ったタイミングでファーサイドのポスト際を切ろうとしてますよね。そこから西村選手が切り替えしたところで体を寄せていっている。左利きだともしかしたら最初の段階で踏み込まなきゃいけなかったかもしれませんが、GKとの連携の中で「右足を切れ」というような声があったかもしれないです。外から見ると1対1に見えるかもしれないですけど、おそらく高嶺選手とGK菅野選手の間では2対1で守っている感覚です。こうなると余裕を持って対応できます。
ーー大学時代から注目しているという高嶺選手、どこが優れている?
岩政さん:一番の良さはメンタリティだと思います。決してひるまない。経験ある選手だろうが何だろうが、歯向かっていくというあの感じはプロ向きだと思います。
河合選手:一度アカデミーに上がれなかったという劣等感もそこにプラスしてあったのかなと思います。
■論理的思考の原点
ーー今回の研究結果は?
河合所長:「駆け引きの想像力」です。マリーシアですよね。ずる賢さではなく、相手との駆け引き。その駆け引きをするには、この後何が起きるのかちゃんと想像しておかないといけない。リスクを排除しながらどう行動をとるかを考える必要があります。
岩政さん:これで「マリーシア」の言葉の意味が変わってくれればいいですよね。その目線でサッカーを捉えないと海外の選手には太刀打ちできなくなってくる。サッカー少年たちの目が向いてくれればいいですね。
ーー岩政さんの論理的な思考がすごいです。論理的に考えることはずっとされてきたことですか?
岩政さん:さかのぼれば小さい頃からですね。あまりサッカーが上手じゃなかったんです。上手じゃないけど負けず嫌いだから考えるしかなかったんです。考えて、どうやって勝ちますかということを自分の中で整理して挑まないと勝てなかったんですよ。その土壌があったからかなという気がします。
岩政さん:さらに言うと、僕は島(山口県周防大島町・屋代島)の出身なんです。
岩政さん:だから周りに情報がなくて、そうすると自分の中で考えるしかなかったんですよ。技術で解決しようとかそういうことができなかったが故に、マネージメントで解決するみたいなことばっかり考えていたのが大きいかなという気がします。
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